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不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。  作者: ちょすニキ


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亜人

 はぁ⋯⋯やっぱ人混みが凄いとやる気がなくなっちまうよ。


 'マスター、観光とはそういうものではないのですか?'


 "正論をぬかすな"


 トボトボカルデアの中央通りを歩いている俺。あれから二時間ほど観光を満喫したのはいいんだが⋯⋯いかんせんこの人の量と臭いにやられている。


 まぁ清潔ではないのは明らかで、俺達みたいに毎日風呂に入れるのは上級貴族と王族のみ。要はガキ共を含めた俺に関わる人間は全員──もれなく貴族同様の扱いをしているということになる。


 '彼らの反応が良かったですよね'


 "あぁ。まぁ夢⋯⋯よりも女性陣たちは美を価値とする世界観だ、仕方ないだろう"


 普通に生きていて叶うか叶わないかの夢。それを叶えた俺に全員忠誠心剥き出しで接待が始まるのは当たり前になってしまうのだが、異世界だとそれも異世界クオリティなのだ。


 毎日王族みたいな生活をさせられている。⋯⋯そんなことはどうでもいいか。


 「はぁ⋯⋯とりあえず帰ったらダンジョン攻略とカルデアの商店と飲食の出店を見守って、様子見ってところかな」


 ⋯⋯ん?


 思わず足が止まった。ちょっと先の方で、急に人々が両側へ避け始め、真ん中を通る某天○人みたいな状況な光景が目の前に見えたからだ。

 かと言ってざわざわっとしているのは違うところだが。


 『ッチ、今日は家に帰ろう』

 『はぁ。ったくよ、ああやってやるくらいしか用途がねぇってのも可哀想なもんだな』

 『オイオイ可哀想ってなんだよおい、あいつらは家畜だろ?』


 随分な言いようじゃないか。一体、あの先には何があるんだ?


 聞き耳を立てていた俺は、列の最前列へと挨拶をしながら前へ出る。


 「⋯⋯っ」


 驚いた。あれは⋯⋯人間でないな。亜人⋯⋯だっけか?人型ではあるが人ならざる者。


 ていうかラノベなんかではよく出てくる展開ではあるが、なんであんな奴隷みたいな待遇を?

 思わず周りの反応にむしろ俺はドン引きなのだが。


 理由を尋ねようとした俺だったが、すぐにその気は失せた。全員の亜人に向ける視線が、もはや異様と言わざるを得ないくらいとんでもない殺気と軽蔑がこもっているものがそこら中から向いていたからだ。


 こんな中で尋ねたら、俺も殺されるなこりゃ。


 殺気の渦巻く中ガゼルは一人内心クスッと笑い、その光景を眺めていた。


 ────だが、眺めていたガゼルと、鎖に繋がれ、人車と化した亜人の数人と目があったのだ。


 ドクン、と⋯⋯眺めていたガゼルの脳内に、声が聞こえてきた。思考が止まる。



 ──「助けてください!!」

 ──「誰も助けになんかこねぇよ馬鹿みてぇに叫びやがってよっ!!!」


 ──「うっ⋯⋯」

 ──「どうだ?お前の母ちゃん⋯⋯あぁ、クソみてぇな顔面しやがってよ、産まれてきたことが悔やまれるよなぁっ!!」


 ──「助けてぇ!!!!!」



 「⋯⋯⋯⋯」



 ──「助けて、助けて⋯⋯」



 トラウマのように蘇る、脳内に埋め尽くされた絶叫。



 助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて。



 「⋯⋯おい、なんだお前?」


 「失礼します、貴族様」


 深くお辞儀をしては、ガゼルは作り笑いで尋ねた。


 「こちらの奴隷⋯⋯はどこに売っていたかご存知でしょうか?気に入ってしまって」


 「がははは!何だ早くそう言いたまえよ!確かゴルゴン商会の裏だ」


 「そうでしたか。ありがとうございます」

 

 豪快に笑う典型的な貴族に、ガゼルは一礼をして、白金貨を数枚渡す。


 「分かってるじゃないか、若者。なーに、何かあればまたこの私の家まできたらこの札を下民に見せろ、助けになってやる」


 「ありがとうございます!」


 豪華な家紋の刺繍が施された札を頭を下げて貰い、そのまま去っていくのを待つガゼル。


 「⋯⋯⋯⋯」


 

***



 「こちらの奴隷⋯⋯いえ家畜を全員分購入されるのですか!?」


 「ええ、すぐに入り用でして」


 「そうでしたか!処分に困っていた者ばかりなので非常に助かります!」


 「それで会計はこちらに。お釣りの方は取引初回ということでいりません」


 ガゼルはニヤリと笑って巾着袋を手渡す。店員は受け取って中身を確認した直後、思わず冷や汗をかいた。


 「こっ、こんなに⋯⋯ですか!?」


 「ええ、私としましても、今回の取引は有意義なものとなりましたので」


 「あっ、ありがとうございます!!何かあれば、ゴルゴン商会に是非またいらしてください。特別待遇でお待ちしております!」


 「おぉ、こんなものまで用意されているんですね」


 店員から受け取ったのは綺麗に型どられた四角形の花の模様が入った物。

 

 「⋯⋯どうも」


 ニヤリと笑ってガゼルはそのまま全員を裏口の方から地下道を潜り、カルデアの外へと向かった。


 「はぁぁっー。上手いやり口だな」


 奴隷たちに掘らせた穴を地下を通って外に出れば、目立たずにお客が持っていけるようにという配慮。流石やり手の商会だな。


 歩いているガゼルは、突然止まり、髪をポリポリかいて後ろを向いた。


 『この人族、一体何なんだよ!』

 『⋯⋯余計に騒いだらまた傷が増えるでしょ!』

 『なんか見てるぞ、うぇーい人族!死んじまえ!』

 『俺達が一体人族に何をしたっていうんだよ!今度は何やらされるんだか』


 なんだ?なんか当たり前に喋っているが、聞こえないと思っているのか?


 『この人族、見た目はいいようだが、何考えてるんだか』


 「おーい」


 『期待するな。どうせ玩具にされるに決まってる』


 「聞いてんのかー?」


 『くそっ、どいつもこいつも⋯⋯』


 「なぁ。そこのお前は、名前を何と言う?」


 『⋯⋯っ!?えっ!?はっ!?えっ!?』


 「何ビビってんだ。名前は?」


 『お、俺達の言葉がわかるのか?』


 「当たり前だろ。何言ってんだ」


 『や、やべぇっ!』

 『も、申し訳ありませんでした!!』

 『ど、どうか!!』


 別人のように土下座を始め、突然全員が謝罪をする様子は、まるで合唱のようだ。


 「いや別にいいんだけどよ。それで?名前は?」


 『い、イレボ』


 「イレボな?そっちは」


 『イダル』


 「イレボとイダルだな?それで?さっきから喚いている意味がわからないんだが、一体何を言っていたんだ?」


 『ならば人族!貴様に問おう!目的は一体なんだ!』


 「目的?」


 『そうだ!人族がなんの目的もなくこうしてなんの制限もせずに歩かせるわけがない!今度はなんだ!?余興で足でも食べられるのか!?ええ!?』


 ⋯⋯さっきの光景を見たらなんとなくわかるが、家畜みたいな扱われ方だな。


 「同情だ」


 『⋯⋯同情だと?人族が?笑わせるなぁっ!!』

 

 「⋯⋯っ」


 体を貫く激しい突風。

 構えを取ることをしなかったガゼルだが、煙草を吸ったまま冷静に目の前の亜人を眺めていた。


 なるほど。丹田付近に何かが動いている。魔力ではないようだ。


 もしかして闘気か?

 こいつら⋯⋯闘気が使えるのか!

 この世界にも、内功に似たモノがあるのか!


 興奮したガゼルは無意識に口を歪めており、一瞬で闘気を吹き出した亜人の一人が異変感じ取ってその場で固まった。


 (な、なんだ!?この人族!!!)


 一人の亜人に映るのは、背後にいる三匹の隠れた赤、青、黒、黄色のナニカ。

 

 そしてそのさらに後ろには────玉座に足を組んで座る謎の真っ黒なシルエットの影ともう一人が浅く座って背もたれに寄りかかる影が。


 直後。一人の亜人は謎の重力に支配され、一瞬で両膝をつかされる。


 『ぐうっ⋯⋯!!!!』


 「⋯⋯ん?落ち着け、お前ら」


 俺の中のアレが久しぶりに動いたのか、殺気で。


 呟いたほんの数秒でその重圧は解け、今にも倒れそうなほど荒い呼吸をする一人の亜人。


 『⋯⋯殺してくれ』


 「いいや?せっかく買ったのになぜ殺す必要がある?」


 『⋯⋯まさか』


 亜人の表情からお前本気かよと、ガゼルにそのドン引きの表情が向く。


 「本当だ。嘘じゃない」


 『本当に同情して俺達を買ったってのか?冗談だろ?』


 こいつらの返答に、怒りも沸かない。

 俺は今、なんて声を掛ければいいんだろうか。


 「ただ同情した、それだけの事だ。あまり気にする必要はない」


 俺は立ち止まった足を進める。

 色々な話はそれからだ。


 地下道を歩いて外に出たところで、俺は魔法を使って自分の家まで転移した。

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