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不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。  作者: ちょすニキ


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22/102

22話 怪物

作者たろうです。こんばんは。

遅くなってすみません、許してください。

 いやー、今の自分でもこのレベルで非常に申し訳ない限りですが、違うなーと直しまくってたら遅れた次第です。


一度この小説を読んだ方からすれば新しく追加された話です。

ぜひ楽しんで頂ければ幸いです。それでは、とうっ!

千日をもっと初日とし、万日をもって極みとする。

──極真空手。


礼儀、廉恥、忍耐、克己、百折不屈。

──テコンドー。


動功 ⋯⋯<操体の原理>制御⋯⋯ <相剋の原理>

体気 ⋯⋯<呼吸の原理>法形⋯⋯ <体・制・玄>

経穴⋯⋯ <陰陽の調整> 創造進化・調和。

「躰道とは、体軸の変化によって攻防を展開する創造進化の武道である」


──躰道。


「合氣とは愛なり。天地の心を以って我が心とし、 万有愛護の大精神を以って自己の使命を完遂することこそ武の道であらねばならぬ。

合氣とは 自己に打ち克ち 敵をして戦う心無からしむ、否、敵そのものを無くする絶対的自己完成の道なり、而して 武技は天の理法を体に移し霊肉一体の至上境に至るの業であり道程である」


──合気道。


「無法を以って有法と為し、無限を以って有限と為す」


──ジークンドー。

───

──


「かかれぇぇぇ!!」


頭上から、とんでもない速度で降りてくる魔物の数々。それにガゼルが嗤う。


「さぁ〜て────俺は案外ファンタジーの魔物が好きなんだよな」


降りてくる魔物を見上げながら嬉しそうにそう呟くガゼル。


「キキッ!!」

「ガルッッ!」

「ほう?ウルフとゴブリンか⋯⋯面白い構成だが、レベルとスキルがある程度高いからこの組み合わせでも十分強いというわけか」


普通のモノとは違って鋭いとハッキリ分かるような短剣を慣れた手つきで構え、ウルフはその身に風を纏って疾走する。2方向からガゼルへと駆け、目の前で交差しながらガゼル目掛けて攻撃を仕掛ける。


ギンッッ!!


間違いなく当たった。

ゴブリンとウルフの二連撃。


「決まった!」

「当たった!人族如きやっぱり──」


カタカタカタ。


ウルフとゴブリンがガゼルを見た瞬間、瞳が氷ったように微動だにしなくなった。

 制服には斬撃の傷跡が付いているが、その先の肉体には入ってはいかずにカタカタ音を鳴らして止まっていた。それに気付いたゴブリンが焦りと明らかな異常性に全身に鳥肌が立った。


'ひ、人族はこんなに硬くない!'


このゴブリンを含め、この場にいる魔物達は全員強化個体。全員が自我を持ち、スキルや武器の使い方を個体別であるがそれは人間と同じような物。今までこのゴブリンとウルフは何百人という人間という人間を殺してきた。


そんな個体のゴブリンだからこそ理解できる。


"人族はこんなに硬いワケがなく、即死するハズ"


「ん〜」


納得していないだろう不満な溜息とピィ〜ンという金属の嫌な音がこの場に聞こえる。


「⋯⋯ふぅ、この間遭遇した魔物なんかと比べる事すら申し訳ない」


""極真空手──""


 その時、ゴブリンは無意識に身体にある心臓の代わりとなる魔核(コア)を無意識に触っていた。

 言わずもながらではあるが、目の前から発する異様な圧が身体の自由を奪うように上から押さえつけているような感覚に陥り、かわりにコアを守るように両手で皮膚ごと掴んで頭を下げた。


ボンッ!!!


なんの音か分からず、ゴブリンは目だけで目の前の光景を見つめた。


'何が起きているんだ?'


ゴブリンがそう一言呟いた時には──視界はなぜか浮いており、上から人族を見下ろしていた。


""極真空手──正拳、上段顔面打ち""


ガゼルが放つ正拳はその体格に全く見合わない風と重さを兼ね備え、目の前にいる魔物2匹の前で片足を踏みつけそれを支えに左の正拳が魔物へと向かった。


結果?そんなの言わなくても理解できるだろう。頭に直で当たり、首がぐるんと何周かしながら斜め後ろに鮮血と共に飛んでいっている。


「⋯⋯っ」


ウルフがまずいと顔を顰め繊細な身体の操作によってすぐさま後退することに成功した。だがウルフは安心することなど不可能。まだ上から落ちてくる魔物達がいるからだ。


「人族〜!終わりだよ!」

「しねぇぇ!」

「復讐だぁぁぁ!!」


囲うように上から罵声をガゼルに浴びせながら攻撃を仕掛ける魔物達。


「⋯⋯ん?」


 ガゼルの両手をガシッと力強く魔物達が掴み、動かないようにドンドン他の魔物達もガゼルの身体を掴んで行動不能にしていく。


 次第にガゼルがいる所から煙が舞い上がる。続々と魔物達が降りて行くからだ。そこから更に攻撃を仕掛ける。これだけいれば流石のガゼルも無理か──。


ウルフはすぐに増援を呼ぶように吼える。的確に聞き取ったオークが指示を出し、すぐ他の魔物も動き出す。


「終わりだぞ人族!」

「さっきは良くも仲間を!」


もうガゼルの姿が見えないくらい魔物達が降り立って打撃やら魔力を纏っているであろう爆音の連打がこの森に響く。もはや、それはオーバーキルだと思うほどに。


'くそっ、さっきのは失策だった'


なぜアイツを犠牲にしてしまったんだ!さっさと数でどうにかすればよかったじゃないか!


視線が上がる。ウルフは「いやいや」と首を振りながら気持ちを切り替えながら様子を伺う。


ドンッ!ドスッ!バコッ!と絶対に一度は聞いたことあるような打撃音が森に響き、その場にいた魔物達の誰もが死んだと思うほどの力だった。


「へへっ、死んだか?」

「そりゃそうだろ?人族の分際で調子に乗り過ぎなんだよ」

「一人じゃ何も出来ないくせにな」


魔物達の嘲笑と罵声がここぞとばかりに向かう。


だが──。


「やっとスキルレベルが上がったようだ。お前達がなんて言っているのかが分かってきたぞ?」


その時、何十といた魔物達の身体と感情が目と表情に現れていた。⋯⋯『何故?』と。


その様は、まるで悪魔が現れたかのような光景。何十の視線が一人の漢に向けられ、男は徐々に顔を普通の高さまで持ち上げていく。


「あぁ〜」


ガゼルが動こうと力を入れるが、腕はガッツリホールドされていて外す事は困難に思える。


「人族如き⋯⋯俺達数人がかりで押さえているんだから無理に決まってるだろ?」

「そうか?」

「舐めてんな〜腕でもオッテやろうか?」


嘲笑を浮かべ、ガゼルを見下ろす1匹のオーク。


「悪いな⋯⋯。俺に──痛みという感情は随分昔に消えちまったんだ。折るとは表現は違うが──」


ゴギゴキ!!!

森の中で痛々しいくらいの骨の生々しい音が響いた。


「こういう事か?」

「はっ!??」


ガゼルが自ら関節を外して掴んでいる手をすり抜ける。そして怠そうに関節を元に戻すガゼル。


「くっそ!だが足を掴んでるんだ⋯⋯問題ねぇさ!!」

「ん?」


もう一度数体の魔物がガゼルに向かって腕を掴みかかろうとした瞬間──身体に違和感を感じた。


「あれ?」


 数人がかり。それも、遥かに大きなガタイをしている魔物だ。それを⋯⋯ガゼルは両手で数人の魔物を浮かせ、掴んでいる魔物の手首を動かし、真下に投げ落とした。


あり得ない。下半身の力は無に等しい。上半身のみで数体の魔物を紐のようにガゼルは軽く動かした。


『がはっ!』

『うっ!』

『なんだ!?』


""合気道──神門アレンジ、両手呼吸投げ落とし""


 倒れた衝撃で魔物達がクラっとしているが、そんな場合じゃないと起き上がろうとした時⋯⋯冷たい空気感が頬を通ったような感覚がした。


""テコンドー─── 앞차기アプチャギ (前蹴り)""


ドンッッッ!!!


人体から発する打撃の音ではない。異形の一撃のような、重く鈍く、そして速い。


口に煙草を咥え、両手はぶらんとしながら左脚だけで繰り出す。しなやかさを持ちながら、女性のような体の柔らかさを最大限に活かした速くて強い──まさに理想な足技。


前蹴りの連発。食らったオークは声を発することなく後方へと飛ばされる。


唇を器用に使って煙草を吸うガゼルの横から襲い掛かる。だが駄目だ──。


「グハッッッッ」

「⋯⋯⋯⋯」


まるで分かっていたかのような見る事なく振るうガゼル大ぶりの横蹴り。


きっと格闘技をやっている者なら、見ていて惚れ惚れするだろう読みとフォーム。全く軸のブレがなく、全体重が乗っかているだろう衝撃。


そして乗っかっているはずの中で行われる圧倒的なバランス力。


ブレとバランスはほんの少しだけ別だ。それをこの男は両方⋯⋯いや、文字通り完璧だ。超人にすら思える程高すぎる練度の動きから放たれる横蹴り。


ザザッ。


一人が貰えば並走していた他の魔物にぶつかり、力を合わせてガゼルの横蹴りの威力を抑えようと足で踏ん張る魔物達。


そのまま20m程後方へ退り、再度魔物達が攻め始める。


「食らえ人族!ふんっ!ハッ!」


剣が得意なゴブリンソード。

通常のゴブリン達よりも遥かに練度の高い個体。


⋯⋯ブンッ!ブンッ!

そんなゴブリンソードから振るわれる横斬りと袈裟斬り連発。それをガゼルは当たり前のように体の向きだけを変え、スレスレの距離で避けていく。


「いつまでもそんな事で出来ると思うなっ!」


大きく下半身に力が入った。そこから放たれる最速の横一閃。ゴブリンソード本気の一撃。


ブンッッ!!


「何っ!?」

「いい筋をしてる」


笑いながらそう呟くガゼルは、街にいるようなヤンキー座りの体勢でゴブリンソードを見上げる。そして──。


「なんだっ!」


そのまま流れるような動きで両手を地面につき、その体勢からは想像できない程の軌道を描いた強力な蹴りがゴブリンソードの横腹に直撃する。


バキッッッッ!!!!


「ううっっっっっ!」


""──躰道、卍蹴り"""


魔物であるゴブリンが痛みで口から胃液が飛び出る。悶絶した表情、ゴブリンが前によろめいたところに、ガゼルがブレイクダンスのように体を動かして倒立した。そしてそのまま回転しながら前によろめいたゴブリンソードの顔面に強烈な蹴りがもう一撃入った。


""──カポエイラ、パラフーゾ""


「人族〜!!!!」


飛ばされたゴブリンソードを見てガゼルの背後から更に攻める。


「⋯⋯っ」


この男は既に倒立している。

反対方向を向いているガゼルだが、そんな事は関係ない。


ドンッ──!


相手と反対方向へ倒立している姿勢から、片足のふくらはぎから先の背足までを使って縦に蹴る技。


""カポエイラ──アウージアンゴラ""


打ち終わりで威力が下がっている?

そもそもその体勢からの蹴りなんぞ痛くない?



馬鹿を言え──今まで何を見ていた。

この男が何個の格闘技と武術、そして技の種類を使えると思っている。


躰道で磨き上げた圧倒的な体幹と軸。

テコンドーでは美しくも威力のある蹴り技。

カポエイラでは連続したなかでの大振りの蹴り技に体力。


足技だけで何百というバリエーションとトレーニングを磨いたこの男から放たれる蹴りが──普通なわけがない。


ドゴンッ──!!!


""躰道×テコンドー×カポエイラ""


それだけじゃない、まだまだ他にもある。


「⋯⋯!!」


オークが棍棒を持ってガゼルへと振り下ろす。


地面スレスレを流水の如き滑らかさと素早さで移動し、一気に手をついて踏み込む。


""カポエイラ──ケブラジヒンス""


両手をつきながら地面と高さが並行になるまで下げる超低空姿勢から、円を描くように片足で一周しながら蹴る技の一つ。


「ぐっ⋯⋯!!!!」

「⋯⋯⋯⋯」


足に直で貰ったオークは悶絶しながらブルブル震わせている。だが腰を落とすわけにはいかない。落ちたら人族に負けたということになるからだ。


「Guaッッッ!!!」


力を振り絞っての強烈な振り下ろしが迫る。だがガゼルは冷静にその振り下ろしを当たりのように両手を使ってオークの背後へと飛び跳ねる。そのまま再度片手で前宙をするように回って、踵で真上から先程当てた箇所と全く同じ場所へと落とす。


""カポエイラ──アウーシバータ""


「Gyaaaaaaaaaッ!!!!」


その刹那、オークが悲鳴を上げるように声を張り上げながら両膝を付いた。


煙が立ち上り、周囲の魔物もドン引きしている間に──白い悪魔の瞳もギラッと煌煌と輝く。


ガゼルが華麗なステップで一気に詰める。


「人族に⋯⋯負ける訳にはいかぬ!!!」


最後のひと絞り、持つ棍棒に自身が出せる最大限の力でガゼルに向けて斜めに振り下ろすが、既に視界には映ってはおらず、僅かの体感の間に──先程食らった場所である足の中が粉々になったと悟った。


""躰道──旋状蹴り""


扇のように広げて打つ後ろ回し蹴り。

振りに合わせた⋯⋯タイミング、位置、威力、どれをとっても完璧な一撃。


オークに直撃した瞬間──大木のように太い足が粉々に粉砕した。


ギリギリ保っていた意識がもう消えてしまう。


「Guッッ!!」


""テコンドー──踵落とし (ネリチャギ)""


片足重心なのにも関わらず全くブレないガゼルの体勢。両手をポケットに突っ込んだまま綺麗な所作で高く足を上げてオークの顔面に向けて殺人的な足技がオークに向かう。


それはもう、足でガトリングを撃ちまくっているような連射音と暴力が奮われる。


「⋯⋯⋯⋯」


まるで拷問でも受けたかのようなオークの体中に付いた傷。それを遠目に見ていた他の魔物達の魂に火が灯る。


「人族〜!!」


"復讐だ。絶対に人族を殺すんだ"


その場にいた魔物達全部の心の中で浮かんでいた言葉。


無残な姿で倒れているオークの前に立っているガゼルへと向かうその姿は、まるで今までの構図とは真逆。


矮小で雑魚と侮っていたモノとは違って──今はそんな事を感じさせない鬼気。


魔物達が一心不乱になって一気に攻め立てる。


「⋯⋯ふふっ」


不敵な笑みを浮かべ、ガゼルは煙草を一吸いする。


'久し振りに良い戦いになる'


ドゴンッッッッ───!!!

拳を握り、片手を上から大振りで地面へと叩きつける。その様は野球の全力速球を投げるような全力具合。その一撃で地面に亀裂が入り、穴が空いたその中には数十の魔物が意識を失った状態で倒れていた。


'人間相手じゃこんな力で戦う事はできなかった'


""テコンドー×躰道×カポエイラ×極真空手""

──ブラジリアンキック。


全ての動き方から放たれる無限のような軌道の揺れ。コッチに行くかと思ったら行かずにコッチに行くよ⋯⋯やっぱ止めたと、足技の全てを染み込ませている男の圧倒的な軸、バランス、体幹、威力などなど、尋常ならざる技が全ての魔物へと向かい、その威力に負けた魔物達が空中で体を仰け反らせながら後ろへと飛んでいく。


ブォォォォン──!


""極真空手──正拳、中段順突き""

魔物の体に穴が空くほどの化物じみた一撃の破壊力。


聞こえる⋯⋯魔物達の悲鳴が。

聞こえる⋯⋯叫びや吠える声が。


だが──無理だ、相手は海内奇士。


圧倒的な暴力。文句も言えぬほどの怪力。





















「最ッッッッ高だぞお前らっ!!」


10体、20匹、50、100、200。


戦闘狂の邪悪な笑みと共に圧倒的な暴力が魔物達へと向かう。


「ガッ⋯⋯!!ハッ⋯⋯」

「お前か?」


完全に狂人の表情をしているガゼル。魔物の首を掴んでは一人一人に同じ事を聞きまわっている。


「お前か?」

「なっ⋯⋯なんの事だ!」


白い悪魔からはS級クラスの魔物が出すような圧倒的な重圧を秘めた双眸が至近距離で鋭く見つめ、思わず魔物であるのにも関わらず人族に頭を下げそうになっている程だ。


「お前も違うのか?」


ボールを投げるような軽快さで木に向かって片手で放り投げるガゼル。そのままドンドン迫る魔物の頭を両手で掴み、修羅の形相で睥睨をきかせている。


「さっきっからたった一人の人族を殺すのになんでこんな時間掛かってんだよォ?こんなに数いるのによ〜?」


掴んでいる2体の魔物同士の顔面を胸の前で思い切りぶつける。衝突し完全に息絶えた魔物達は死んだように地面に倒れる。


「一体誰だぁ?俺を殺してくれる魔物はよォ〜?あぁ?矮小な人族様だぞ?俺は」


ケラケラ嘲笑を向けながらまだまだ来る魔物を対処する。


「くそっ!」


素手のコボルト達は綺麗な飛び蹴りをガゼルに繰り出す。


ドゴッッ──!!


「⋯⋯なっ!」



"極真空手×合気道×伝統空手×ボクシング×???×???"


軽く肘を曲げて両の拳を握り、胸より少し下の位置で数人のコボルトが放つ飛び蹴りを受けるガゼルの姿。そこから"シュウウ"という蒸気にも聞こえるガゼルの呼吸。そして全く効いていないであろう鋼の肉体。


そんな中、朧げなガゼルの記憶の中で、過去にあったであろう記憶が想起していた。



─「小僧、やるのう⋯⋯。もっと儂が、後10年以上若ければ──」

─「※さん〜!!!」

─「〈:『±━━━*〈》_》_『『≠━】」

─「王とは!民との信頼を築いてこそ!!」

─「王とは⋯⋯常に孤独である」

─「王とは⋯⋯孤高で決断力に優れた者を指す言葉であるぞ⋯⋯人間」






















これだ(This is it)


邪悪な笑みを浮かべ、飛び蹴りをもらっているにも関わらず──少年は興奮しながら笑う。


蹴りを入れた魔物達は⋯⋯本能でもう一捻りいれて飛び蹴りを顔面に入れる。


凄まじい蹴撃。常人の人族が貰えば、恐らく即死だろう。だが、少年からは『まだまだこんなものでは足りないぞ、もっとやれ』と邪悪な笑みからそういう風にとれる表情をコボルト達に見せていた。


「⋯⋯いいじゃないか」


ドゴンッッ──!!!


またも地面に向かって叩きつける。一撃入れる度に⋯⋯果実を握り潰すような爆音が聞こえ、まともに貰った魔物達は二度と声を上げることはない。


「ふんっ!!」


かと思いきや、再度立ち上がって決死の覚悟でガゼルの顔面を蹴り上げる。


自身の血で乱れた身体。超えてゆけ──そう言わんばかりにその背後から他のコボルトが大きく体を抱え込んで回し蹴りをガゼルにお見舞いする。


「グハッ!!」


確かに入ったはずなのに──!!そう繰り出したコボルトは呟きながら後ろへ吹き飛んでいく。


ギルドの時にみせた、あの見えない拳。既に拳を握りしめ、腰に両手を引いたような状態で気付けば⋯⋯コボルト達が一回転しながら後ろへと吹き飛んでいく。


「これだ」


⋯⋯魔法も、スキルも、体格も、スペックすら無視しているようなガゼルの暴力。


制服を着ている17歳が、異世界で勝てぬとされている魔物達を──圧倒的な暴力と狂気、そして素晴らしき天下無双⋯⋯先程までいたであろう無数とも呼べる魔物達を力でねじ伏せている。


「これだぁぁ!!!」

「無理だ⋯⋯なんだ⋯⋯この人族は」


気付けば周りに舞い上がっている鮮血と、コボルトの耳を掴んで顔面を殴ろうとしているガゼルの姿。そしてもう戦意喪失しているコボルトの姿。


「無理だ⋯⋯人族、負けだ」

「あァ?」

「うっ!!」 


片手でゴミを捨てるように乱暴に投げ飛ばされ、ガゼルが煙草に火をつける。


「終わりか?折角興奮してきたのに」


侮蔑の眼差しでコボルトを見下ろす。だが、突然『ふっ』と鼻で笑い始め、背後から迫っている一体の魔物に声を掛けるガゼル。


「またか⋯⋯それで?他はお前だけか?リーダーオーク」


怒りに身を任せて鼻息荒くさせながら斧を振り上げる黒いオーク。対して玩具を見つけたような輝きを見せるガゼルの瞳。


「人族ぅぅぅぅ!!!!!」

「やっとお前と戦えるのかァ?待ってたぞぉ?」


魔力を開放させながら、オークが耳鳴りをするかのような咆哮を上げてガゼルを威圧するのだった。

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