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不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。  作者: ちょすニキ


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20/102

20話 奴隷商と新しい仲間

扉を開けると来客が分かる鈴が鳴り響き、扉の外からガゼルとセレーヌの二人が楽しく雑談しながら入ってくるのが見える。


それに気付いた男性店員が慌てて向かう。


「いらっしゃいませ!購入と売却⋯⋯どちらでしょうか?」

「え?あぁ、購入だ」

「かしこまりました!購入は初では無さそうですが、どの様な奴隷をお求めですか?」


'やっべ⋯⋯奴隷に種類なんてあったのかよ'


「すまない。その奴隷の種類というのは何があるか伺っても?」

「かしこまりました」


店員は元気よく返事を返してガゼルに説明を始めた。


**

「ご説明は以上です」

「ありがとう」


'奴隷文化か⋯⋯'


 まぁこうわざわざ言うことではないが、向こうでもそれなりに人間⋯⋯それも日本人という枠の中で見てみれば、かなりの数を見てきた方だと思う。


──きっと日本人なら思うはずだろう。


「え?奴隷?いるわけないじゃん」

「そんなの陰謀論だろ?プロパガンダだろ?」

「いたとしても何故取締りが無い?はい論破〜www」


まぁ言いたいことは分かるし、実際手を出した多くの人間は闇に葬られ、そして悲惨な末路を迎えている。だが⋯⋯だ。


これは何でもそうだと思うんだが、件数は分からないからあくまで例えとして聞いてほしいんだが、全体を100というパーセンテージでこれを見るならば──約10%以下⋯⋯1%かも知れないし、0.001かも知れない。だが実際にそういった場所や施設を俺は少なくとも"100"以上も知っている。それも取締りがあってもなくても⋯⋯だ。


数字の値が違う?それは許してくれ。カッコよくそれっぽいことを言いたいだけだ。話を戻そう。


そう言った自分のみてきた経験から考えると、まだこっちのほうがマシなのかも知れない。


⋯⋯こっちはみんな知っているからだ。

周知されているだけでまだマシだろう。無い(●●)なんて言える平和に浸かっている人間達が沢山いるほうが酷というものだ。いくら何を言っても人間は自分の見た事ない知らない事や現象が起きていることを信じない生き物だからだ。


 例えば科学が存在している事によって──失われた陰陽師という職業の存在。それも書物のような軽い内容で書かれているモノ。本当は真に魔を滅ぼすファンタジーレベルの技だって使えていた。⋯⋯俺が見た陰陽師と名乗った者はな。今の人間達は柔軟な思考を持ち合わせていない。先人達が見つけた事が全てと言い、ネットや授業で得た情報を真実と思い込み、そのまま大人になって固定概念だらけの人格となしてそのまま一生を終える⋯⋯なんてやつもいるだろう。むしろその人間が多いだろうな。


俺はその意見や考えを否定するつもりは全く無い。別にソイツはそいつの考えや常識という枠で話している訳だし、空気感を崩したくなくて同調している奴もいるだろう。だが忘れないで欲しい。


"その常識は──誰が作ったか"


俺から言えることは以上だ。

にしても奴隷⋯⋯しっかり整備されているならいいが。


とにかくここで説明された事を簡潔に言おう。


名前の通りではあるが、奴隷の種類は主に4つ。犯罪奴隷,欠損奴隷,戦闘奴隷,性奴隷。


説明をしてはくれたが、ほぼ名前通りで退屈だった。向こうも仕事だし仕方ないがな。


「なるほど、ありがとう。俺は事情があって店で購入した事が無いんだが、流れはどんな感じだ?」

「はい。流れとしましては、先に通行証の確認と何があってもいいように先払いとして入場料をお支払い頂き、実際に見ていただくことになります」

「了解した。いくらだ?」

「銀貨3枚です」


店員がそう言うと、ガゼルは懐から銀貨6枚を手渡す。


「⋯⋯ッ」

「それでは入口まで案内を頼む」


店員が一瞬驚きをみせたが、すぐに切り替えて先程より丁寧に、そして明らかに対応が変わった。



---地下収容場


コツ、コツ。

数人の歩く音に何百人といる奴隷たちが牢の内側から力強く見つめている。その中には興味がない者、必死にアピールする者様々だ。


地下へと続く階段を降りると幅6m程ある通路に出る。奥は果てしない程続いており、思わず圧倒されるだろう。


「こちらの道を進んでいただき、看板がありましたら曲がっていただければ種類ごとの奴隷がいますので、すぐにお呼びくださいませ」

「そうか。ありがとう」


'う〜わぁ⋯⋯⋯⋯'

ガゼルが思わず鼻をつまむ。


クッせぇ〜。

すぐに臭いを消そうとタバコに火をつける。


まぁ、異世界転生といえば──王道の奴隷な訳だが。


ガゼルが通路をゆっくり左右に並んでいる動物園のような檻に突っ込まれている人間達をチラチラ見ながら進む。


『あら〜まだ子供じゃない〜お姉さんを買ってみない?』

『おい!ガキを強くしてやるよ!』

『出してください!家族がいるんです!』


小説や漫画でみる描写だと、かなり曖昧というか⋯⋯そんなに深刻そうに感じない。ただの描写だしな。チートスキルを持った主人公が惚れさせるイベント。そんな感じだから奴隷やその他の感覚が麻痺するんだろうが──。


人間達が牢をガンガン揺らしたり、叫び散らかしている光景をガゼルは耳で聞き、そして目でみている。


暗い道。忘れる時間感覚。だけど増えていくストレスと性欲。伸びる髪と爪。ベタベタしていくなんて生易しい。通り過ぎるとのりみたいになるしな。


尋常ならざる風呂に入って無いやつ独特の臭いに大量に落ちているフケや髪。なんであるのかわからないような何故の物体。言い出したキリがない。


とにかく言えるのは──。


ガンガンッッッ。

『キエエエエエエ!!!』

『ははははははははは』


奇声を上げる者達や殴り合っている者達、一人で何処かを永遠に見る者を見たガゼルが黙って見上げる。


やはり、地獄みたいなところだよな⋯⋯所詮金儲けや消耗品としか考えていない奴らの思考で出来ているモノなんだから。


そんで小説とかと違ってリアル過ぎて目も当てられない。なんか心臓をきゅっと握られてる気分だ。見るところ、食事もあるんだか分からないレベルの体の細さ。全く衛生管理がなされてない場所でよく商売レベルが落ちないもんだよ。


コツ、コツ。

そのまま通りを歩いているガゼルの目に、欠損奴隷という文字が視界に入る。


「ここか」

「ご主人様?」

「ん?いや」


'金がめちゃくちゃあるわけじゃない'

とりあえず欠損奴隷を使って接客を出来るようにさせればいい。笑みを振りまくというのは凄く重要だ。


ガゼルはそのまま欠損奴隷の集まっている場所へと進む。


**

'鑑定'

目の前にウインドウが現れ、持っているスキルを眺めながら一人一人鑑定しまわっているガゼル。


ん〜、少しなら数人いるが、そこそこはいないな。


その後も見回るガゼルだったが、めぼしい人材はいなく、諦め半分で最後の檻に入っている子供数人を鑑定する。


'鑑定'

出てきたウインドウを覗くガゼル。


この子は⋯⋯え?14歳!?


思わずウインドウと実物を交互に何回も見直すガゼル。


え?どう考えても9歳とかじゃないのか?栄養が行き届かな過ぎてこうなったのか?なんとも酷い話だ。買うかは別として。


そんで〜?お、双子⋯⋯ではねぇのか。一人は接客がレベル5で計算はレベル3。まぁ欠損という部分で考えるならまぁまぁだろう。もう一人もかなり当たりな部類だろう。受付系のスキルが平均的にレベル3だ。これならかなり役に立つはず。


「セレーヌ、店員を呼んできてくれ」

「かしこまりました!」


すぐにセレーヌが走って向かい、目の前にいる奴隷達を見下ろすガゼル。


'これからコイツらに加護がありますように'


ガラじゃないように見えるが、両手で祈るようにガゼルがそう心の中で言葉を並べた。


それから僅か3分程で店員が駆けつけ、ガゼルの話を聞く。


「あそことその数人隣の子達を頼む。値段は?」

「あ~、コイツら(●●●●)なら合わせて2枚で大丈夫ですよ」

「そうか、なら進めてくれ」

「かしこまりました。直ぐに準備をさせます」


丁寧にそう挨拶したあと、店員が牢の鍵を開ける。そのまま不快そうに人をかぎ分けて二人の上から怒鳴るように「起きろ!!」と物凄い声量で声を掛けている。


「ぁ⋯⋯ぁい」

「めんなさぃ」

「ご主人様が呼んでるんだぞ!急げって!!」


明らかに動きの悪い奴隷達を見た店員が無理やり服を掴んだその瞬間に⋯⋯突然強力な力で止まった。


「⋯⋯ん?あ、お客様」


振り返ると店員の腕を尋常じゃない握力で掴むガゼル。無表情で掴むその様子はどこか不思議で恐怖すら覚える。


「すまない、もうこれ以上に怒鳴ったりしないでやってくれ。俺が抱えて帰るので」

「え?か、かしこまりしました」

「大丈夫か?」


ガゼルはブルブル震えている二人の子供と目線を合わせる為にしゃがんだ。店員は臭いに耐えきれずにすぐ牢から出ていっている。


「起き上がれる?」

「⋯⋯ぃ」

「急がなくていい。ゆっくりでいいんだ」


そう呟くガゼルの声がいつもの何百倍もの優しく、穏やかな声色。聞いていたセレーヌも人が変わったんじゃないかと思うほど。


「なさぃ」

「謝る必要はない。脚が無いのか」

「なさぃ」

「君は腕か」

「ぃ」

「よいしょ」


ガゼルが二人を抱えて牢から出る。

見ていた店員が正気かよと疑うような目でガゼルを見ていた。


「セレーヌ、お前の感覚でいい。まずは何をさせるほうがいい?」


'地球とこっちでは何かが違うかもしれないから聞いておいた方がいいだろう'


「用途を考えるに──」

「用途じゃない、気持ちの話だ」


一瞬の動揺の後、セレーヌはガゼルの穏やかな笑みを見て瞳がウルウルしている。


「まずはやはり食事だと思います!」

「だよな。それじゃあ帰るぞ」

「ご主人様!私が」


明らかに臭うレベルの汚い二人を躊躇することなく抱えているガゼルに尊敬すら覚えるセレーヌ。だがガゼルは無視して奴隷商から宿まで結局抱えたまま帰ったのだった。



---宿


「⋯⋯っ!ガゼルちゃん?」

「あーお疲れ様ですおばちゃん」

「じゃなくって何よこの臭い!」


クッサと言わんばかりに手で扇ぐおばちゃん。


「え?あぁ〜確かに」

「流石に臭いくらいは消してきてから入ってちょうだい」

「それは失礼したな」


ガゼルはその場で消臭スプレーを加工し、二人にふりかける。


シュ〜──。


「⋯⋯あら?全く臭わなくなったわね?ガゼルちゃんまた何か作ったのかい?」

「たまたま出来上がっただけですよ」


羨ましい〜とおばちゃんの声を打ち消すようにガゼルがロウソクセットをカウンターに並べる。


「見ててくださいよ?」


おばちゃんが言う通りに注目していると、ガゼルが指を1回鳴らす。


「あれっ?なんかいい匂いが」

「いい匂いがするロウソクですよ。これさえあれば、体がほぐれるような効果もあるんですよ。良かったらそれあげます」


息子のような意地悪そうな歳相応の表情におばちゃんもかなり嬉しそうにそのロウソクを専用のエリアに置いていた。


「セレーヌここからは仕事だ。俺は食事を持っていくから、二人を」

「がんばります!!」


 そう言って気合いの入った声と共に光が消えていくような感覚で視界から消え去っていた。

 それからガゼルは食事が出来上がるまで雑談をしながら過ごした。



**

バタン。


ガゼルが食事を持ってくる。


「お?お疲れ様セレーヌ」

「ご主人様!」


セレーヌがガゼルを見てすぐに立ち上がり、手に持っている食事の片方を受け取る。


「そして⋯⋯」


おそらくある程度キレイな状態で座っている2人組。


「初めまして、俺はガゼルという。君達二人の名前は?」


なるべく怖がられないようにとガゼルが優しい声色で尋ねる。


「ミウです」

「アリスです」


吐息が途切れ途切れになりながらボソボソ喋る二人。そして無意識にガゼルと目を合わせないように横目で流している。


「ご主人様申し訳ありません」


セレーヌが申し訳なさそうに軽く頭を下げている。


「問題ない」

「この度は買っていただき──」


そう声を発した二人を遮ってガゼルが話し出す。


「ひとまず名前は分かった。とりあえずお前達に与える最初の命令だ」


体育座りをする二人がブルブル震えている。これから自分達に何が起きるか分かっているように。


────と思っていただろう。



カラン!ガッシャーン!!カーン


「はぁ⋯⋯食べ物は逃げないんだから──」


ブルブル震える二人の前に置いたのは温かい消化にいい大根に似たスープと、サラダ、そして似たような病人食を複数置いたガゼル。困惑しながらも二人は野蛮人のように手づかみで食事を始めて、何故こんなにも騒音がするのか理解不能な程金属音が大量に聞こえている。


眉間を摘みながらガゼルが煙草に火をつけた。


「ご主人様?」

「どうした?」

「お肉とかは出さなかったんですね?」

「そりゃそうだろう?いきなりそんなもん食べて体壊したら元も子もないだろう」


「確かに」と納得したセレーヌが必死に止めようと二人の元へといき、しっかりと説明を繰り返した。


それから20分後。


「食い終わったか?」


ガゼルがそう二人に話し掛けると体をビクッ!とさせ、二人は抱き合ってガゼルを見上げる。


「そんな顔されても困るんだけどなぁ〜」


どうしようと困惑しながら髪を掻き上げるガゼル。


'ひとまず俺は嫌われているからセレーヌに任せるしかねぇか'


まぁ、いきなりこんな絡まれたら嫌か。そしたらついでに、ラカゴの森でスキルとか色々検証したいと思っていたところだったし丁度良いか。


「セレーヌ」

「は⋯⋯」


ピィ〜ンとセレーヌの方へと数枚の硬貨が飛んでいく。それに気付いたセレーヌが慌てて拾う。


「ご主人様!?」

「俺はとりあえずラカゴの森へお出かけしてくる。可愛がってた犬っころも連れてな」

「心配だったんですよ!まだ施設に?」

「あぁ」

「良かった〜」


そう言いながら手元にある硬貨を見ると、顔が引き攣る。


「ご主人様!これは金貨ですよ!!」

「だからなんだ?」

「奴隷にお金を使いすぎです!」


「はぁ?」とあからさまに頭がおかしいのかと顔から滲み出ているガゼル。


「そんなお顔されても困ります!金貨がどれだけ重要かご理解されていないご主人様ではないはずです!」

「人に金を掛けるのは当たり前だし、かけなかったからお前達がこんな目にあっている⋯⋯違うか?」

「え?」

「金があって、普通の家に生まれていたらこんな目に遭わなかっただろうな。だからせめて服とか飯とか、困らないようにしてやりたいと思う普通の感性に口を出されるのは中々クるものがあるんだが?」


真顔でそう言い放つガゼルに納得するしかないセレーヌ。


「分かりました!行ってきます!──ありがとうございます」

「あぁ、気を付けてな」


そう言ってガゼルは従魔引き取り所で回収を行い、ラカゴの森へと向かうのだった。

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