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奴隷屋の日常  作者: 坂牧 祀
21/53

奴隷屋と萬屋 7


 約束通り城門前まで行くと、エンニオと仲間たちが待っていた。合計で五名だった。それぞれが得意とする得物を(かか)えており、収穫したものを運ぶための、年季の入った袋もある。

 そして、その中に混ざる一人を見つけたシリウスは、親しげに手を振った。


「おーい、イグリ!」


 名前を呼ばれた人物がこちらに気づき、ゆっくりと近づく。

 黒い短髪、灰色の鋭い目つき。綺麗に鍛えられた大きな身体がたくましい、三十代の男性。服装は柔らかいレモン色のジャケットに、シンプルな柄の入った腰布(こしぬの)を巻いている。

 厳格そうな顔つきは普段からで、身長もシリウスやライファットより高い。一見すると、近寄りがたい雰囲気を持っている彼だが、


「こんにちは。シリウス、ライファット」

「こんにちは」

「こんにちは」


 この通り、たとえ相手が気の知れた仲であろうと、会えばしっかりと挨拶をする男だった。


「まさかイグリも声をかけられてたなんてな」

「それはこちらのセリフだ。奴隷屋のくせに、ボクの仕事を横取りするつもりか?」

「俺、最初は断ろうかと思ってたんだけどさ。あんたがいるって聞いて引き受けた」

「ん? なんでだ?」

「いやぁ、だって楽しそうじゃん?」

「……遊びに行くんじゃないんだぞ」


 へらりと笑う歳下を(さと)し、イグリはため息を吐いてから腕を組む。


「まあ、話は聞いている。墜狼(ついろう)を倒したんだってな」

「そうそう、俺の頼りになる従者くんがな」

「知名度がないせいで、毎日店に引きこもるだけのお前にも見せてやりたかったよ。俺の戦いぶりを」

「……あいかわらず舌の使い方が生意気だな、ライファット」


 会って早々、さらりと毒舌を走らせるライファットだが、イグリはそんな彼にも慣れているようで、特に怒った態度を示すことなく話を続ける。


「一応確認をするが、お前が人狼だってことは、依頼主たちは知っているのか?」

「いや、気づいてないはずだ。もし知っていれば頼まないだろう」

「……そうかもな」


 イグリは、ライファットが人狼だと知っている。その上で、普通に接している。

 イグリのような人間は稀有(けう)とまではいかないが、それでも他者からは奇妙な目で見られる可能性が高いだろう。シリウスは別の大陸から来たので、元から人狼に対する先入観はなかったが。

 実はシリウスたちが【8番都市】に来て自身の店を持つまで、このイグリの家に居候させてもらっていた。そして、萬屋の手伝いをしていた。その中でイグリは、ライファットの正体を知った。

 彼には彼なりの理由で、人狼に対する差別や偏見は(いだ)いていない。その理由がなんなのか二人はわからないが、人狼であるライファットと、そんなライファットを側に置くシリウスを難なく受け入れ、自立するまで面倒をみてくれた。


 だからイグリは、二人にとっての『身内』といえるのだ。


「兄ちゃんたち! そろそろ行くぞ!」


 エンニオから出発の合図が出た。城門を抜けて、シリウスたちは仕事へ向かった。



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― 新着の感想 ―
イグリさん、めっちゃ好感度高い!!(*'ω'*) 見た目(容姿)もかなり私の好みタイプだし、ライファットさんにも人狼と知っていて普通に接してくれるし!
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