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悪意の愛に呑み込まれて  作者: 夜道に桜
第一章 文化祭編
7/91

「個」と「集団」



クラスの出し物のテーマは”合唱”だった。


 指揮者、ピアノ演奏者、そしてその他の合唱するクラスメイト達。


朝早くから教室に集まり、放課後も遅くまで残り練習していたクラスメイトは、発表直前に円陣を組んで気合を入れていた。



☆★☆


 発表後、壇上では感極決まって涙を流す女子もいたり、抱き合い喜びを表現するクラスメイトの姿がそこにはあった。


 御堂と僕は、”自作アニメ”の出し物を個人で出すということでその場に当然いなかったが、最前席にいる僕の方に関心を示すものはいなかった。


☆★☆


 僕、灰崎(はいざき) (たくみ) のクラスでの立場は一言で表すと”空気”だった。



 別にクラスメイトから無視されているというわけではない。


幼馴染の御堂は別として、人と会話することに対してどうしても面倒くさいと感じてしまうのだ。


いや感じてしまうようになったという方が正しいか……。


それでも、必要最低限のことしか話そうとしない姿勢を見せる僕に対して、最初は接触を試みようとするものもいた。


 しかし、それは難しい(というより、他の人と会話した方が楽)と悟り、僕を認識しようとする者はいなくなった。



「認識されないことは虐めを受けることよりもキツイ」


そんな事を言う人もいるが、全然そんなことはない。


 人が十人いれば、感性もまた十通りあるように”空気”であることに耐えられないという人もいるかもしれないが、僕にとってはそのような状況になって抱いた感想は、一言で表すと「楽」だった。



 僕以外のクラスメイト(御堂も含む)は、僕と違って、積極的に他者との接触を図り、そして様々なコミュニティーを形成して、群れることを好んでいた。


 群れることで自分のクラス内での立場を確立しようとし、そこに「楽」を見出そうとしていたのだと思う。


 それが、いわゆる”カースト制度”の上中下のどの部分に所属していたとしていても。


 しかし、僕にはそれが「苦」だった。


 だから、クラスの出し物が”合唱”と決まり、半ば強制的に”個”を好む僕が、集団の一員にさせられかけた時は憂鬱な気分になっていた。



そんな時だった。


学内ではほとんど会話を交わさない御堂が、一人で本を読んでいた僕に声をかけてきてのだ。



「灰崎君、私と一緒に出し物を出さない?」


押しの強い御堂に流されて今こんな状況になっているけど……。




上映開始まであと一時間。


そろそろ御堂を起こしに行くか。

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