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悪意の愛に呑み込まれて  作者: 夜道に桜
第一章 文化祭編
4/91

中途半端じゃダメだ


☆★☆


僕に反論されるなんて思ってもいなかったのか。


御堂は何を言われたのか最初理解できない様子だった。


が、しばらくしてようやく、納得できない!って感じに


「なんで? 一緒にやろうよ。もしかして、私とやるの嫌なの? それに巧が嫌でももう私準備したし! ……ホラッ!」


 と、まくし立てるように言い、背負っていたカバンから膨大なイラストが描かれた紙を僕に渡してきた。


そこに書かれていたイラストは、僕の知る有名なアニメキャラが多数(というか、全部知っている)が描かれていた。


試しにパラパラ漫画のようにめくっていくと、プロも顔負けなのではないかと思えるクオリティ。


(……こんなの尚更一人でやってくれ)



そして、それを見て僕の判断はやはり正しいのだと考えを固め、改めて断りを入れるべきなのだと思い、


「もう一度言うよ。1人でやってくれ。こんないいものに、僕なんかが加わったら台無しになるよ」


 ときっぱりと言い、これで御堂も諦めてくれるだろうと思っていた。


だけど、僕の思うように話は進まなかった。


「よく言った! 灰崎! そうだぞ! ギャフンと言わせてやれ!」


そばで僕らのやりとりを見ていた山本先生が、ヒュー! ヒュー!と応援してくれたが、御堂が一喝。


「ちょっと、黙ってくださいよ、先生! この天然無自覚野郎は、まだ自分の才能をいまいち把握してないようなんでね。 なんのために灰崎君が知っているキャラクターだけで制作したと思ってるのよ。 知らないキャラクターじゃ、感情移入するまでに時間がかかるだろうと思い、文化祭までの残り少ない時間を考慮してそうしたんだよ。 それにね何が台無しになる! 何が1人でやれ、だよ! 私は灰崎君と一緒にやりたいの! ……それに、それに、時計見なよ! 受付締め切りまであと五分だよ? 今更変更なんてできないの。いい加減、腹をくくって!」


「お、落ちつけよ……」


 時間を盾に、お前に拒否権なんてないと肩で息をしながら言い張る御堂。


そんな御堂の気迫に押されたのか、先生もため息をついて、僕に「諦めな」とあっさり裏切って、


「……正直、お前たちが文化祭で何をするのか皆目見当もつかないが、御堂の言う通りもう時間がないぞ。 早く、登録参加証を提出してくれないと困る」


「ちょ……だから僕は……」


必死に抵抗したけど




 テーマ ~アニメ、作ってみた~




「やったぁ! これでもう逃げられないね! 一緒に頑張ろ!」


「ク、クソ…何で僕がこんな目に…」



押し切られた。


 言われるがままに、半ばやけくそ気味に記入し、山本先生に紙を渡してしまった。


先生はそれを受け付けるとやっと残業から解放されたと嬉しそうにスキップしながら職員室に帰っていったし……。


御堂はテーマが受理されて、安心したようにふぅとため息をつき、いまだにどうしようか悩む僕に、ダメ出しするように



「足掻いてもダメ! これで後戻りはできないし! 私もあと500枚ほど書かなくちゃいけないからね。先に帰ってるね」



そう言って、ニッと笑って帰ろうとする御堂。


だが、このときになってようやく気が付いた。


御堂の目元にはクマがうっすらと浮かんでいたのだ。



「御堂、もしかしてお前…」


「ん、なに? あ、これか。気にしないで。自分の好きなことに没頭した結果だからね。これはその証みたいなものなの。それじゃあね! あ、これ台本! 私が作ったから練習しといてね! よろしく☆」


「……」


 『こんなのどうってことない』という風に、明るく振舞う御堂。



☆★☆


1人残された僕。


「……クソ」


あんなの見せられたら、もう中途半端なものにしたらダメじゃないか……。




 



文化祭までの残り少ない準備期間。


僕はとにかく台本を練習した。

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