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神出鬼没の大泥棒

作者: てこ/ひかり

 とある国に、すごうでのドロボウがいた。

 彼はどんな鍵もたちどころに開けてしまう特技を持っていた。予告もなしにふらっと現れ、気がつくと金庫の中身が丸々なくなっている。時には金庫ごと持っていかれることも。どんなげんじゅうな警備もかいくぐる、神出鬼没の大ドロボウ。警察も彼には、かねてから頭を悩まされていた。


 盗まれる側だって、手をこまねいて見ているわけにはいかない。とあるぼうえき会社の社長は、ある日隣国からばく大な金塊を買い入れた。万が一盗まれでもしたら会社がかたむきかねない。自分の財産をなんとか守ろうと、万全の対策を練った。


 まずは金庫の扉。

 扉を三重にし、生体認証をさい用して会社の役員3人以上がそろわないと絶対に開かないようにした。金庫は会社の地下三階にせつ立し、一階には24時間体制・合計100人の警備員室、二階には有名建築家を呼んで、きょだいな迷路を作ってもらった。ここを通らなければ金庫へはたどりつけない。さらに金庫へ通じる回廊には赤外線センサーを張り巡らし、ネズミ一匹の侵入をも許さなかった。


「まだだ」


 心配性の社長は、さらに警備を厳戒にした。そして、金庫自体をうごかす、というアイディアを思いついた。万が一何者かが不当に金庫に押入れば、自動的に強化シャッターが降り、侵入者を金庫の中に閉じ込める。すごうでのドロボウなら、それすらも内側から解錠して逃げおおせてしまいそうだが……ここからがミソだ。


 仮にドリルか何かでシャッターに穴を開けようとしても、ドロボウに逃げ道はない。その間に、金庫をエレベーターのように、こっそり会社の屋上までうごかすのだ。屋上には鉄格子を用意し、金庫から出たとたん、彼は御用というワケ。


「飛んで火にいる夏の虫というワケだ」

「社長!」

「さぁどこからでもかかってこい、盗人め!」

「社長、もうやめましょう」


 鼻息を荒くする社長に向かって、社員の一人がおずおずと諫言した。


「社長の壮大な警備計画で、すでに仕入れた金塊以上の予算がかかっています。このままではウチの会社は破産です。会社のお金を一番盗んでいるのは、社長、貴方です」

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