表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夢の続き 前編

作者: かみつれ

「かわいそうにまだあんなに小さいのに」


「神様はいじわるだわなぜあの子なの」


小さい頃からずっとそういわれ続けて育った

みんな何を言っているの?

私は幸せになるために生まれてきたんじゃないの?





心臓に生まれつき疾患があるんだって

でも病気を治せる薬はあるの

だけど私にだけ薬の拒否反応があって

心臓の薬だけじゃなくふつーの人にも効く薬もダメなんだって




この話を聞いた時の母親は絶望して泣いたって散々聞かされたっけ





でもいいの

私の体を実験にして薬の開発をするための人材に選ばれたから

だからもういいの

あの人に会えたから









「きょんきょん~おはよ」

女の子がするようにかわいい角度で首を傾けあいさつをしている。

無駄に顔がよく金色の髪の毛が太陽の光に溶け込んで金色というより神々しく透き通っている何か・・・





そんな男がいつもと変わらず私に話しかけてくる

私が返事もせず無言でいると

相変わらずのツンデレだよね~でもそこがいい!

とかなんとか何故か笑顔で悶えている


私なんかのどこがいいんだか

こんな薬漬けでボロボロの体の私のどこに惹かれるんだか



はぁとため息をつく私に対し

周囲の男女のだれからも好かれる男を無視する私は悪のようで

周りの人たちから睨まれている。

これ以上話すことはないと無言でいると男の友達が教室の端で彼を呼んで

離れていった。



改めて遠くから男を見ると

なぜ私に興味をもって近づいてきたのか改めて考える。

私の手首は骨が浮き出て気持ち悪いくらい不気味だ。

顔も血が通っていないほど青白い

性格も根暗だ

世の中のすべてを恨んでいるといっても過言ではない

なぜ私だけ

ずるいずるいずるいずるい

ずるいずるいずるいずるい

ずるいずるいずるいずるい

ずるいずるいずるいずるい・・・


周りの人間と当たり前のことがこれっぽっちもできやしない

勉強ができて高校に入学しても

日によってはベットから起きれない

早く歩けない

学校の行事など参加したことがない

無情なほど周りについていけない

けれど同情はされたくない私は当然のように腫物扱いにされる

いわゆるクラスの厄介者だ





小林真宙くん

名前の通り宇宙のように心が広く好青年だ

見た目は金髪で初対面の人は一瞬怯むが誰もが好む笑顔で人の心を掴む

初めて彼を見たとき

この人は周りを幸せにできる人なんだなとなんとなく思った。

そこにいるだけでパッと花が咲いたみたいに空気が変わる

クラスメイトだけでなく先生にも受けがよく

非常に人生を謳歌している人の一人だ。


そんな私とは正反対の彼がなぜ私に近づくのか

彼に興味を持ち始めたが

やめた



だって時間の無駄だから。













また拒否反応がでたんだってね

相変わらず君の体はうまくいかないね

君くらいだよ

僕を楽しませてくれる人間は




今日から新しい薬が処方された

今までの私の実験結果をもとにして作ったと

いう新薬だそうだ

骨ばった腕に楽しそうに白い髪の男が注射してくる

何がそんなに楽しいのか

私には楽しいことなどないのだ

毎日苦痛と戦っているのに

この男ときたら

一発殴ってやりたい。どうせ殴ったところで私の腕が大惨事になるんだろうけど

想像するだけは私の勝手だ。










今日はからだがすこぶる調子がいい

新しい薬が効いているのだろうか

電車の中でうたた寝できるくらい














今日は学外実習というなの遠足だ

生まれて初めての遠足に私はらしくないほど浮かれていた。

前日から興奮してなかなか寝付けなったくらいに

うれしくてうれしくてたまらなかった。

だから金髪男がバスの中で膝枕してきてもなんとも思わなかった。


あ~きょんきょんの膝枕さいこ~

こんな日が来るなんて神様に感謝だ~





神様ってホントにいるのかな

私だけこんなおちこぼれの体に生まれてきて

でも今日は

今日だけは神様の存在を信じてもいいかと思った。








皆でバスにのりくたびれた表情のおじさんの話を聞いて

たとえ天気が雨であっても私を口角をあげ微笑んでいる。

そんな私の表情に周りがびっくりしていても

私を知らない

そんな私を金髪の男と白髪の男がみていたなんて




帰り際のバスの席順がなぜこうなったのかわからない

だけど金髪の男と座っていた隣に白い髪の男が座ってきた

座るときの音は

ドスンッ

とそんな音がするように乱暴に座って



でもそんなこと気にしてられない

だってもう私にとっての

人生最後の遠足が終わってしまうのだ


たのしかった?

うん

楽しかった

すんごく

雨がふったら皆うっとうしそうに不満な顔をする

おじさんの話がつまらなかったら皆でおしゃべりする。

バスの中でお菓子を食べあう

いつもの学校生活とはそんなに変わらないのかもしれない

でも私にとってはすべてが

空気もが

すべてが新鮮なのだ


私は自分のなかのわたしと対話していた


だからなのか

膝枕していた金髪男の髪をなでていた

猫でもなでるかのような

そして私もこの状況下でうっすら笑っていた。

そして反対の手は白髪の男に握られていた。

















今日は体育祭

私は見学だ

金髪男はクラス一いや全学年で一番というくらい活躍している。

あんな風に体がめちゃくちゃになるくらい体を動かしてみたいな

腕が

足が振り切れるくらい

風になったみたいに

走ってみたい

私はうらめしいくらいあいつを見つめていた。

「ずるい」


私はいつもの間にか金髪男を憎らしく思っていた

なんでお前は

なんでなんで

こんなにも私とお前は違うんだ

男の失敗を願う

けれど私の思いとは裏腹に奴は絶好調

ゴールをするのは金髪男

私をあざ笑うかのようにこっちに手を振っている

いらいら

いらいら

いらいらするから私は応援席を立った。

そんな私をクラスメイトの女子をにらんでいるとも知らずに





少しづつ脈が速くなっているのがわかる

いらついた感情のためか

薬をのむ時間だからなのか


「はやく教室に行かなきゃ・・・」

教室には薬がある

いらだちを隠しながら教室に向かうが

自分のカバンのがなくなっていた




こんなことをするのはあの金髪男の取り巻き女たちだろう

おおよその予想はつく

あの男が私にかまうのが面白くないんだろ

どうでもいい

「くだらな」

思わず声にだしてしまった。だけど教室には誰もいない

外には大きな歓声が上がっているが

教室は静かで虚しさを感じていまう。

「なんてくだらない」

むなしい言葉とは反対に心臓が脈をうつ

今までにないくらい激しく心臓が動き苦しさで胸をつかみ

「あっ」


どくん


激しく机や椅子にぶつかりながら倒れこむ

「ふっっ 」

息をするのも苦しくて胸を掴みながらもだえ苦しむ私

こんなとこで私は終わるの・・・

苦しさと圧倒的孤独に再悩まされていると





いつからそこにいたのだろう

白い髪の男が私をじっと見つめていた。

そしてゆっくりと近づいてきて

床に倒れている私を見下ろしてたところで意識が途切れた。



目が覚めると白い天井がみえて保健室にいた。

気づいた?

倒れたんだよ君


私を君って呼ぶのはあの人しかいない


「なんでいるの?」

「ひどいな~心配して学校まで駆けつけたのに」

保健師らしく?白衣をきているその男は絶対に私のことを心配などしていない。

興味をなくした私に対し笑顔で問いかける

「そろそろ限界なんじゃない?」




うるさい


うるさい うるさい


そんなこと私はとっくにわかっている

欠陥品の私の心臓はとうに悲鳴をあげている。

でもそんなことどうでもいいのだ

私には最後にやるべきことがある。



白衣を着た男から体ごとそむけ

「あと少しだけここにいたいの」

男はため息をつきながら「わかったよ でも冬になる前には入院だよ」

返事はせずうなずくだけにした














評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ