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鬱リーマン  作者: 鬱リーマン
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サヨナラ

 俺はわかっていなかった。人生において、一番辛いのは、肩を壊すこと、人がいなくなること、そんなことは軽い事だと。

 忘れもしない日は、突然訪れた。

 ある日のこと、家の電話が鳴った。親父のお兄さんからであった。

 おばあちゃんが、自宅で倒れ、病院に運ばれたと。この時の、家族は入院すらも直近したことのない、おばあちゃんだったため、軽く考えていた。


 病院に着き、医者の説明を受ける部屋から、聞いたことがない、泣きじゃくる声が聞こえた。部屋を出てきて、その声の主が判明した。

 自分の親父だ。おばあちゃんは、若い頃、くも膜下出血を患い、生死を彷徨ったことがあったらしく、運悪く転倒したはずみで、当時の頭のクリップが取れ、血液が溢れ出し、助かる見込みはなかった。


 あんな親父を2度と見たくない。子にとって父親以上にかけがえのない存在なのだと悟った。

 俺も例外でない。こんな親ですらも、わからない状況で、側からみれば部活も続かない、勉強もダメ。そんな俺に対し、お前は優しくて、いい子だと疑わずに言ってくれた唯一の存在。まだまだ長生きをしてくれるというか、入退院すらもしていなかった、おばあちゃんの変わり果てた姿。


 家に帰り、俺は助からないおばあちゃんが、器具に囲まれていることに、最期の念を送った。

 おじいちゃんが亡くなって寂しかったよね。昔のおじいちゃんの話を聞くと、今では信じられないことばかりだけど、それでも亡くなる前に、おじいちゃんが言った感謝の気持ちを照れ臭そうに言っていたおばあちゃん。

 もういいよ。おばあちゃん。

 

 その日に、おばあちゃんは息を引き取った。

 葬儀はすぐに行われ、俺は特別な感情を抱いていた。


 【泣かない】


 おばちゃんは、こんな人が本当にいるかのような気遣いの人だ。そんな人だから、俺のことを凄く気にかけてくれた。


 子供ながらに、心配するといけないと考えたのだろう。

 しかし、告別式の時に、私の感情は爆発する。最期の別れで人一倍泣いた。


 そして、、、

 帰りの車で嘔吐をした俺は、ついにそれがきっかけで、心も完全に壊れてしまった。


 この嘔吐の翌日から、原因不明の吐き気との戦いが始まった。ブラックガムを噛んで、紛らわす日々が続いた。


 忌引きが終わり、クラスに戻った俺に、さらなる衝撃が襲う。

 なんと、Kの悪口を言っていた女子とKが席替えで、隣になり、談笑している。

 もううんざりだ。

 俺は、その日から、出席を取ると、気持ち悪さを誤魔化すのと、クラスにすら居場所がなくなり、河原にいくようになっていた。

 携帯が鳴る。この時代は、非通知でショートメールが送れる。

 「誰もあんたに構う人間はいない。」

 その言葉で、俺はその日早退をした。気づけば、あの公園に向かっていた。

 途中で家に着くと、ペンと紙を持ち、クラスメイト1人、1人にメッセージを書く。

 ●●さん、、、もう少しお喋りしたかったです。

 そう。俺は死のうとしていた。


 メッセージを書き終えると、自宅の机に起き、公園に向かい、ブランコを見ると、俺はマンションに登った。


 A子を守っていたマンション、A子のリスカを抑えたマンションで、俺は飛び降りようとしていた。

 手すりに身を投げ出した瞬間だった。


 様々なことが、フラッシュバックする。


 そして、、、

 「●●ちゃん!だめよ!」


 ハッとした。そう。飛び降りる瞬間、嘘のような話、おばあちゃんの顔がよぎったのだ。


 「お、ばあ、、あちゃん、、、。もう疲れたよ、、、。体がおかしいんだ、、、。」


 スーとフラッシュバックは消え、身を投げ出していた体は、何故か手すりの内側にあった。

 ありがとう、、、おばあちゃん。。。

 人は人生で不思議な経験をする。

 信じられないが、俺を救ってくれたのは、おばあちゃんだった。

 人の命なんて、失う、生かされる、そんなものは、実は紙一重なのかもしれない。

 流石にきつかったな。毎日吐き気との戦い、それを知らない周り。絶対、負けない。

 その気持ちだけだたった。

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