表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬱リーマン  作者: 鬱リーマン
3/6

傷つき者

第三章

傷ついた者は、傷ついた者を引き寄せる。

 それは、俺が実証している。

 だからこそ、奴と俺は出会ったのだ。


 俺は中学3年になった。

 野球部を辞めた俺は、友人のススメで卓球部にいた。相変わらず、真面目にやることを恐れ、廊下で壁打ちをしているような部員だった。

 ある時、廊下で壁打ちをしていると、部活の後輩と一緒に、同級生の女の子が廊下を通った。

 その子こそ、俺の人生をある意味で救ってくれ、ある意味でさらにどん底にしたA子だ。

 A子は、見た目も可愛く、笑顔が似合う、同級生の男からモテていた。

 A子はその出会いから、しばらく廊下に来ては、よく話しかけてきた。

 ある、体育館での練習の日、A子と同級生らしき友達が、体育館に消えていった。

 

 「A子?」

 俺は軽い気持ちで後を追った。

 「来ないで!!」

 A子の友達が、俺を拒んだ。


 A子は泣いていたのか、モヤモヤした気持ちで俺は部活に戻った。


 数日後、A子の姿が廊下にあった。


「よ!」

 と声をかけると、A子は体を震わせ、泣き出した。何がなんだか分からず、俺たちは学校を後にした。


 俺の自宅付近に、公園がある。昔から遊び慣れている公園だ。そこのブランコに連れて行き、話を聞いた。


 「あの、たい、、いくかんで、、」

 A子は泣きじゃくりながら話し始めた。


 どうやら悩みを聞いていた女の子に裏切られたようであった。

 俺は、そこから部活中に来るA子と、何度もそういう機会が増えた。

 

 「よくこいつ毎回泣くな。」

 なぜ泣いているのか俺はわからなかった。

 A子の兄は、俺の一個上で学校では、優秀な生徒として有名だった。特に、彼が音楽会でやった指揮は、大きな体格から繰り出す凛とした風格に、俺らは鳥肌すら覚えたほどだった。

 

「兄と比較されることがきついのか。」


 俺は、知らなかった。

 A子が本当に苦しんでいたことに、学年が違うため、彼女のクラスで彼女が、なぜ嫌われるのか、初めは悩みを聞いていた女の子が離れていくのか。知る由もなかった。


「宗教二世」

 俺がその苦しみを知れたのは、俺が専門学校3年の時だ。資格試験の勉強が手につかず、後に別れることになる彼女の足跡を辿り、彼女の親から聞かされ、全てのピースが揃った。

 

 それを踏まえて、15歳の時の俺のできたこと、彼女の嘘を見ていって欲しい。


 俺らが距離を近づけたのは、運動会がきっかけだった。

 運動会が終わった後、ジャージ姿の俺たちは、公園にいた。


「暑いな!!」

 運動会後ということもあり、俺は上ジャージを脱いだ。体操服でいると、A子もつられるように、ジャージをまくった。


「お前!!それって!?」

 彼女の細い腕には、無数のリストカットが存在した。


 彼女はいつも以上に、体を震わせた。運悪く近所のおじさんが犬の散歩で通りかかった。

 俺は、A子を近くのマンションに連れていった。


「ここの夜景が綺麗でな、、、」

 意味のわからない嘘をつく。リスカなんて言葉聞いたこともなかった。


「お前、なんでそんなことするんだ。」

 A子の体の震えが止まらない。どうしていいか分からず、ドラマで見たマネで、A子を抱きしめた。

 ジャージは、涙と鼻水で濡れた。


 「鼻水つく!」

 「うるせぇ!馬鹿野郎!」

 彼女を潰してしまうのではないかと思うほど、きつく抱きしめた。

 あの行動は、本当は、小学4年の時に、俺が誰かにして欲しかった行動だったのかもしれない。

 

 彼女は、泣き止むと理由を話してくれた。

 A子には彼氏がいて、暴力をされるらしい。

 今、思えば、彼は彼なりに、A子のリスカと向き合っていたのかもしれない。


 次の日、俺とA子の姿は、彼氏の前にあった。

 サッカー部の彼氏を呼び出し、こう言った。


 「どんな理由があろうと、女の子に乱暴してはいけない。」

 彼氏はびっくりしたであろう。見ず知らずの先輩学年の人間がいきなり現れ、暴力をしたことを咎めたのだから。

 

 「先輩すいません。2人にしていただけませをやか。」


 そういわれ、俺は席を外した。

 数日後、A子は再び廊下に来た。

 まだ、暴力をされていると言う。

 

 俺は、とんでもない手段に出た。

 A子の靴箱に別れの手紙を、彼氏の名前で入れたのだ。

 今、思えば、なかなかの策士だったと思う。

 俺が描いた構図はこうだ。

 A子は当然彼氏のもとに行く、その瞬間、誰がこの手紙を書いたと言う話になり、A子がどうしたいかがわかる。最も、その段階で、確実に俺がやったことがわかり、俺は嫌われる。


 嫌われることには慣れていたから、それで良かった。

 

 

 ーーしかし、状況は予想外のことになる


 A子が俺を公園に呼び出した。


 「さて、嫌われに行くか」

 俺はA子のもとに向かった。


 「あのね、あたし、彼氏と別れるんだ。」

 「なんでだ?彼氏が言ったのか?」


 俺は意外な展開に戸惑った。

 「いや、手紙入ってたから。」

 「そうか。」

 意外なまでに爽やかな顔をしていたA子と別れた後、俺は彼氏のもとに向かった。

 

 「A子がそう言ったんすか?あとは先輩、お願いします。」


 あっさりとしたものだった。彼氏は知っていたのかもしれない、彼女の背景に宗教二世があり、そのことでリスカをしているのだと。


 後に、この彼氏と道端で出会した時、付き合ってて、かなり面倒だったと語っていたのが印象的だった。


 そこから、俺はある決断をする。

 毎日、泣くこいつの悩みを聞くには、受験なんてしている暇がない。俺は受験を捨てた。


毎日、あの公園で彼女は泣いていた。

今、思えば、宗教絡みで参加したい行事も参加ができず、クラスから省かれていたのかもしれない。

 

 俺は理由は聞かず、泣いたら抱きしめる。キスするわけでもなく、ただ、純粋に傷を受け止めていた。


 恋愛ではなかった。だからこれからくる別れが苦しかったんだ。

人は、その時の思いや、性格で、類似する人を惹きつける。

だから、ダメンズから抜け出せない女の子は、次に付き合うのも、ダメンズというのはこういう仕組みからだ。


自分が極端に変わらない限り、引き寄せる相手も変わらない。

特に、学生時代は、生活も変わらないし、環境も変えられない。


A子は、宗教二世に苦しんでいた。土日も宗教絡みで、

遊びに行けず、行事も参加ができない。


今の時代は、当時と違い、SNSで帰ってもいじめられる。望まない二世は、思いの強い人間を巻き込むことを親は忘れてはいけない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ