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鬱リーマン  作者: 鬱リーマン
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トラウマ

第二章



 人生にはトラウマがある。

 俺のトラウマは小学4年の時だ。

 こんなにも、あの出来事が、俺を変えてしまうとは思いもしなかった。


 俺は中学生になった。

 一度狂った歯車は、なかなか戻りはしなかった。あっちこちの女の子に、好きと言ってはフラれ、でも、本命は初恋の子で、相変わらず、元に戻らない初恋を追っていた。

 

 心機一転、野球も部活で始めた。だけど、これがさらに俺の過去を抉っていくなんて、思いもしなかった。


 小学の時、俺は4年生ながら、強豪チームのレフトを、たまに守らせてもらっていた。だけど5.6年行かなくなって、同級生との力の差は歴然だった。


 真面目にやってきた人間と、そうでない人間、差は思いもしないものだった。

 あの初恋の女の子のいるテニス部が練習の時は、そこに打球がいくことを祈り、少しだけ幸せな瞬間だった。


「俺は、また幸せになるんだ。」


 しかし、夏が終わり、3年生が引退すると、その思いを砕かす出来事があった。

 ある日、練習終わりに、俺のグローブがなくなっていた。イチロー選手のロゴが入った父親に買ってもらった新しいグローブ。

 部室を探してもない。誰もいなくなった部室で、探していると、同じような黒い古いグローブが置いてあった。

 

「誰か間違えて持ってったのか。」


 俺は、代わりにそれを持ち帰った。

 次の日、同級生のグローブがないという話になり、俺は昨日代わりに持って行ったグローブを差し出した。


「なんで、お前が持ってる?」

 俺は理由を話した。

 

 「普通、だから持ってくか?」


 同級生から責め立てられた。

 数日経ってから、俺のグローブが返された。どうやら、間違って持って帰り、なかなか返しづらかったらしい。

 そんなようなことは、野球部だけにとどまらなかった。

 ある放課後、友達と戯れあっていると、2階から友達のバックが窓から落下した。


「あぶな!!」

 下に降りると、友達ではなく、複数の女の子に取り囲まれ、俺は怒声を浴びた。


 なぜか、友達は言われなかった。悲しかったのは、怒声を浴びせた殆どが、同じ小学出身者だった。


 俺は自分の立ち位置を理解し、そこから、また悪い癖で自分を誤魔化すことにした。


「嘘」


 既に傷を負っていた俺に、野球部を辞める決断をする出来事が起きた。

 新しいチームで、下半身を見せろという上級生の指示が横行した。


 あの忌々しい記憶が、フラッシュバックしたことは言うまでもない。


 「野球、辞める。」

 俺は父親に言った。すると、

 「ふざけんな!出て行け!!」

 と怒鳴られ、俺は家を出た。


 結局、秋の寒空を彷徨っていた時に、車で探しにきた父親に連れ返された。

 上級生の下半身強要があるとだけ話し、父親は呆れながらも退部を認めてくれた。


 父親は、再び野球を始めた俺を喜んでくれ、新しいグローブや、ユニフォームを整えてくれ、さぞ悲しかっただろう。

 クラスでも最悪なことが起きた。

 野球部を辞めたとはいえ、俺の頭は坊主。


『坊主ー!丸坊主ー!!』

 同級生に揶揄われ、言い返してた俺は力尽きた。授業中に泣き出した。

 クラス内には、小学時代であれば、俺を庇ってくれたこともある女の子が複数いたが、誰も庇ってくれなく、教師からも、お前が悪いと言われた。


 ーー俺はズタボロだった


 俺は中2になった。相変わらず仲良くなったと思った友人を家に招くと、母親の時計がなくなったり、物で仲良くなろうとすると、あげたはずの下敷きが破って俺の机の中にあったり、最低なのは、アイドルの下敷きが、黒油性マジックで、落書きした状態で返品される。


 俺がこう言った事を、親に言わなかったのには理由がある。俺には、姉がいるのだが、姉はこの中学でいじめを受けていた。

 しかし、教師と親を巻き込み、話を聞いてみると、姉の勘違いということがあった。そんな背景も、俺は知ってか遠慮をしていた。


 もう一つ言うと、あの性的悪戯を言い出せなかったのも、一つ姉が関係している。

 姉が小さい頃、変質者に出会す事件があった。

 俺もかなり小さかったから、記憶の片隅でしかないが、そこから親が、遊びに行くのも厳しくなった覚えがあるし、何より母親の涙が印象的だった。


 そんな俺が、ただでさえ、親がローンを組んだことで、安い学費の塾しか行かせられなくて、ごめんと言われている中、そんな出来事を言えるはずもない。

 恐らく、近年ある学生の自殺の中にも、同級生もわからない、親も理由を知らない。そんなケースは俺みたいな、心優しい少年、少女なのだろう。

 解釈は無数、真実は一つなのだ。

 

 中学2年も、秋に差し掛かる時、ある転機が起きた。

 俺の人生は、思えば、捨てる神あれば拾う神あり。まさにこれだ。

 俺のいいところは、何があろうと挑戦は忘れない。

 小学6年、中学1年も、中学2年も、学芸会の劇に出演していた。普通なら、そこまでやられれば、表舞台から消えるけど、俺は、負けなかった。

 

『白雪姫誰がやりますか。』

『ねえ、コカコーラ一缶で引き受けない?』


 同級生が耳元で囁いた。この劇は、たくましいお姫様というオリジナル劇で、白雪姫、シンデレラ、眠り姫と主役級の姫が全員たくましいという、謎の劇だ。

 あまり盛り上がりそうにないため、女装をさせようと先生とリーダーが話していたようだ。


 俺は引き受けた。これが俺の残りの中学生活を好転させる。


『姫!白雪!』


 この役をやってから、そんなあだ名がつき、見知らぬ後輩から、同級生まで、あらゆる人に声をかけられた。


 この頃から、一部だけ俺は友達と呼べるメンバーを作っていった。


 思えばこの仲間たちは、これから起こる、中学最大にして、最強の奴との出会いの序章だったのかもしれない。

小学から人間関係を引きずる中で、立て直すことは容易ではなかった。


だけど、立て直す中で、見えてきたこともある。


復活をすれば、新たな試練がある。


お世話になった方が言っていた。


試練を乗り越えられない人間に、

試練はこない。


この出来事があったからこそ、次章の奴に出会ったのかもしれない。


当時の俺しか、支えれる人間はいなかったから。

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