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行動
覚は特に「誰か人口を減らしてくれないか。」という意見に注目した。この発言が広まってから、ニュースのコメンテーターの言動が変わってきた。それは人間観察が好きな覚にしかわからないような小さな変化だった。
コメンテーターがこの意見に反論している時に、瞬きが増えたり、目が泳いだり、落ち着きがなくなる人がいた。それに気づいた覚は、「本当は皆が人口を減らすことに賛成しているんだ。自分も何か出来ないだろうか。」そう考えるようになっていた。
しかし、何も取り柄のない自分には世界を変えるようなことは出来ないと思っていた。毎日同じことを繰り返す生活、趣味は人間観察、娯楽を知らずただただ真面目に過ごす人生、自分への疑問がどんどん広がっていく覚だった。