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ギルドライバー“ハヅキ”  作者: 今井亜美
第二話 ダンジョンと“冒険者<ギルドライバー>”
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二章 女子高生、部活に行く


…… 次の日 ……

 ──『東白百合高等学校 弓道場』




「……時雨先輩? お久しぶりっす! もういいんすか!?」

「久しぶり……美春」


 学校に謎の男が乱入してきたあの事件から、八日。

 私は、久しぶりに部活……弓道部に顔を出した。


 犯人はまだ捕まっていないらしい。


 私も警察の人に事情を話したけれど、あの事件の時、途中で気絶してしまって……前後の記憶が曖昧なのだ。犯人の服装が緑色だったような気がする、という事までしか憶えていない。

 

 犯人は、爆弾を使って旧校舎を破壊したらしい。一部の生徒は素手で壊す所を見たとか言っていたけれど、流石にコンクリートを素手で壊せる訳がない。


 恐ろしいのは、旧校舎の中に、葉月がいた事。

 何故旧校舎にいたのかは分からないが、彼女は躁鬱病……普通の精神状態ではないからそれが原因だろう。


 とにかく旧校舎にいた彼女は爆発に巻き込まれた。


 ボロボロだった葉月はそのまま病院に搬送された。

 私もすぐに駆け付けたが、幸いなことに大きな外傷はなく、程なくして目が覚めた。

 

 葉月のいた部屋は、爆発の中心に近かったらしいから、警察の人は、奇跡、と言っていた。


 あと少しずれていたら命は無かったかもしれないらしい。

 ……想像もしたくない。


 検査の為に葉月は一週間の入院を余儀なくされた。

 そのため当然、私も付きっきりで看病をしていた。


 葉月は照れ臭いのかそんなことしなくていい、学校に行けとずっと言っていた。

 私が、学校は暫く休校になったと告げると、部活はどうなんだ? と聞いてくる。


 察しの通り、部活動は普通に行われていた。特に私は大会出場者という事もあって最近は土日まで弓道漬けの日々を行っていた。

 

 私は迷わず大会出場をキャンセルした。


 今の葉月を一人にはしておけない。

 一秒だって目を離したくなかった。


 という訳で、暫く部活には顔をだせなかったのだ。

 こうして後輩の美春……『弓美春<ユミミハル>』と会うのも実に十日ぶりである。


「それで、もういいんすか? その、葉月先輩? でしたっけ?」

「うん。昨日ようやく検査の結果が出て無事退院した」


「そうですか、それは良かったっす! ……でも、時雨先輩も凄いっすねー?」

「……何が?」


「だって、あの全日本弓道大会っすよ? 参加資格が四段以上で、高校生は普通出れないのに……」

「そんなことは……」


 一般的には高校生の標準段位は弐段程度だと言われている。

 稀に、長く続けている者ならば三段、その中でも一握りが四段を取得出来る。


 確かに普通ではないかもしれないが、出場資格のある高校生がいてもおかしくはないはずだ。

 

「時雨先輩は高二で五段上がった天才っすもんね。テレビに出たこともあったじゃないすか」

「テレビに出たからって凄いわけじゃない。それに、葉月が嫌がるから最近は断ってる」


「うわ……やっぱりまだ取材くるんだ……。先輩、美人すもんねー。モデルさんみたいに背が高いしスタイル良いし……そりゃほっとかないか。弓道界期待の天才が大会キャンセルなんて……いいネタになりそうっすもんね」


「確かに最近はよく電話が鳴って辛い……」

「…………本当によかったんですか? 先輩の腕前なら絶対優勝出来ましたよ……勿体ない」


「大会はまた出ればいい。美春も今三段でしょう? 次は一緒に出よう?」

「……昇段、出来ればっすけどねー」


 美春が笑いながらそう言う。

 冗談に思われてしまったのだろうか。


 私は美春の腕なら四段も夢ではないと思うのだが……。


「それより先輩! 久しぶりに来たんですから、可愛い後輩ちゃんにアドバイスお願いしまっす!」

「そうだね。美春はかわいいからアドバイスしてあげる」


 美春のこういう所は、葉月に似ていて少し好き。


「ついでに後でアイスも奢ってください!」


 こういう所は、嫌い。




…… 暫くして ……




「いやーありがとうございます先輩! まさか本当に奢ってくれるとは思わなかったっす」

「自販機の前から張り付いて動かなかったのは誰……?」


 部活終わりの帰路。私は思わず嘆息する。本当に子供っぽい後輩だ。だからこそつい甘やかしてしまうのだけれど。


「先輩の寛大な精神には誠に感服致しますよー。……一口食べます?」

「別にいい。好きじゃないから……チョコミント」

「そっすか」


 そう言うと大きな口を開けてアイスにむしゃぶりつく。

 そんなにお腹が空いていたんだろうか?

 あっという間に食べ終わってしまった。


「ご馳走様でっす!」

 

 満面の笑みを浮かべている。ずるい。小言の一つも言ってやりたいのに、これじゃあ何も言えない。


「……あああ! すいません先輩! 忘れ物思い出しました! 先に帰っててもらえますか!?」


 そう言うと、返事も聞かずに駆けだして行ってしまった。

 相変わらず忙しない子だ。ちょっと心配になる。


 五月も半ば、段々日も長くなってきたとはいえ、今は七時。

 辺りは十分暗い。


「心配……一応様子を見に行ってみるべき?」


 多分、弓道場の方だろう。

 私はゆっくり美春の後を追いかけた。

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