二章 女子高生、久しぶりの説明回に入る
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「そうね……何から話すべきか……」
「やはり、最初から。『リリー・クリスタル』の件から話すべきでは」
志保さんの言葉に、山中さんは頷いた。
「ね、ねえ、ゆみみ……『リリー・クリスタル』って何?」
「え……冗談ですよね菫さん? 授業でもやってますよね……?」
「ご、ごめん弓さん。実は私もよく知らない……」
「葉月先輩まで……!?」
「『リリー・クリスタル』は、未知のエネルギーを発するとされる鉱石の事だよ、葉月。次世代のクリーンエネルギーになるとして、今世界中から注目されているの。白百合の主要産業の一つでもあるんだけれど、現状確認されている採掘場所が白百合にしか無く、需要に対する供給不足がこれからの課題になってるんだよ」
流石は時雨! 完璧な説明だね。
やっぱりこういう時に時雨が一匹いると便利だよねー。
そうだ! 時雨をアンドロイドにして売りに出したらいいんじゃないかな?
一家に一台、時雨を持つ。そんな未来も近い……かもしれない。
「彼女の説明した通り、リリー・クリスタルは未知のエネルギーを持っている。そして研究の結果……これらが“UMA”────つまり、『モンスター』や貴方達『ギルドライバー』の発するエネルギーと同一の物である事が判明した」
「え、それって……『魔力』? ですか?」
私の言葉に、山中さんが静かに頷く。
「我々WPFはこの一致を、『偶然とは言えない』、と考えた。実際に……貴方達は疑問に思った事は無いかしら? 『何故モンスターは関東一帯にしか出現しないのか?』とね」
考えた事も無かった。
確かに、言われてみれば……今までモンスターが出現したのは白百合、東京、後、千葉県とかで……関東圏にしか発生してない。これってつまり、実は“UMA事件”は日本全国の問題ではなく、関東だけの問題だった、って事だよね?
「これまでモンスターが発生した場所を我々はデータ化した。その結果、面白い事が判明した。これまでのモンスター発生事件は全て……『白百合島』を中心に起こっている」
「白百合を……!?」
「これらの情報から……『事件の原因は白百合島にある』と推察出来る」
事件の原因が白百合に……?
で、でも一体何が原因でそんな事が……?
私が頭を抱えていると、時雨が何かに気付いたかの様にハッと息を漏らした。
「まさか……『魔王の力』が?」
そういえば、妖精が前にそんな事を言っていた気がする。
確か……封印した『魔王の力』がこの世界にやってきて、それが原因で人の迷いとか悩みとか……いわゆる負の感情が刺激されて、ダンジョンに変わりモンスターが生まれる。そんな話だった筈。
「流石ね、黒森時雨の言う通りよ。白百合島のどこかに存在しているのよ……『魔王の力』────即ち、『魔王パスポート』がね!」
「ま、『魔王パスポート』……!?」
そ、それって私達の持ってるジョブパスの魔王バージョンって事?
略して言えば、『魔王パス』ってとこかな。
そんな物が私達のすぐ近くに、眠っていたって事……?
「でも一体、白百合のどこに……?」
「さあ……そこまでは我々にも分からない。我々が知っているのは、モンスターと戦う為には『魔力』が必要だという事だけ。その為に……“MOBドライバー”を開発した」
「Magical Occupational Basis Driver……日本語で言うと、“魔法職業の基礎”、だな」
志保さんが補足で説明を行う。
「西条と蓮見の持っていたジョブ・パスポートとワークベンダー。これらがどうやって魔力を引き出しているのか? その仕組みを研究して模倣する事で、リリー・クリスタルを媒介に魔力を引き出し、誰もが使える兵器を開発しようとした。一年ほど前に研究は成功、ギルドライバーの持つ基礎部分である肉体強化魔法をコピー出来た。ところが……仕組みを模倣した結果、若い女性にしか反応しなくなってしまったんだ」
成程。それで、チームが若い女性まみれになったって訳だね。
妖精もジョブパスは女子高生にしか反応しないとか言ってたし。
MOBドライバーを使用できる人材を確保する為に、若い女性を沢山集めていたって事か。
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
どうしたのだろう。
弓さんが突然、大声を上げる。
「今の話では……西条先輩と蓮見先輩は────」
「はっすーでいいよん、ミハエルー」
「…………はっすー先輩は……その、そんな昔からギルドライバーだったって事ですか?」
「そだねー……大体、二、三年くらい前かなー? あーしの部屋にパスとワークベンダーが置いてあって、んで、パピーとおじいちゃんに相談したら、まーここに来た的な?」
「明日香の家は代々、剣術道場を営む由緒正しき家系なのです。おじい様とお父様は警察に剣を教えに行く程の腕前。その関係で、明日香はここに辿り着いたのですわ。私も明日香の少し前、同じ様にギルドライバーになりまして……それ以来、ここで隊長殿の指示の下活動していたのです」
へー……二、三年前って言ったら私がまだ中学生の時からって事か。
そんな時から、たった二人でモンスターと戦い続けてたんだ。
すごいなぁ、私なんて一週間くらいで身体が限界を迎えちゃったのに。
「そんな事ありません……私は貴族ですから。力の無い庶民の方をお守りするのは貴族として当然の務め。果たすべき義務ですので」
貴族……って。
まさかこの時代にそんな言葉を聞く事になろうとは。
でも、あながち間違っていないんだろうな。
大企業の娘さんで、五千万円をあの程度って言える位にはお金持ち、って事だもんね。
「あら、私が言っているのはお金の事だけではありませんよ?」
「え?」
「お金も確かにそうですが……あらゆる力、才能を持つ人間には愚かな庶民を導く責務が発生すると言っているのです。つまり私達の様に『選ばれし者』であるギルドライバーもまた、『貴族』なのです。勿論、杠葉月さん……貴方もね?」
「わ、私が『貴族』……?」
「やー……気ぃつけな、はづきちー。葵はこーみえてけっこ厳しいかんねー。お仲間認定されると大変よー……まあ辛かったら、話半分で聞いときゃおっけーって事で」
「人聞きの悪い事を言わないで下さいな、明日香。私が貴方に厳しく接するのは、いつまで経っても貴族としての責務を弁えて頂けないからです。それさえ分かって下されば、後は何も言いませんわ」
「…………と、まあいつもこんな調子なんよねー」
「あ、あはは……」
「…………話を戻していいかしら?」
「あ、す、すいません……」
気付いたら山中さんの鋭い目が、じとりとこちらを睨みつけていた。
山中さんって、目力が凄いんだよね。
ああやって睨まれると怖くて思わず謝っちゃうよ。
「さて、もう分かったとは思うけれど……我々の目的は、一つ。『白百合島に存在する魔王パスを確保し、この一連の事件を終わらせる』事よ」




