二章 女子高生、わくわくが抑えられない
「説明して貰えますか……!?」
午後になってようやく電話が繋がった。
私は苛立ちを隠し切れずに、電話口の向こうにいる人物に語気を強め、尋ねる。
「先日の西白百合海岸でのモンスター大量発生……あれは間違いなく“奴ら”の仕業ですよね? しかし、頂いていた情報によれば『暫くは起こらない』という事だったはず」
『貴方の怒りも、もっともね……志保』
「納得のいく説明を頂けますね?」
『勿論、こちらも“彼女”に確認はとった。でも、“彼女”の話によれば本来の予定にはない突発的な行動だったみたいね』
「その話……本当に信じていいんでしょうか?」
『今の所はね。それよりも……以前から打診があった件だけれども』
「! 許可が、下りたんですか?」
『ええ。決戦を前にして……やっと上層部も理解してくれたわ。もう隠していられる段階ではないってね。二日後、そちらにヘリを回す。京都支部で落ち合いましょう。杠葉月、及び黒森時雨を上手く連れ出して来なさい』
「……了解」
電話を切り、深く息を吐く。
視界の端に三日分の荷物が詰められた、旅行用のカバンが目に入った。
(京都……かあ)
昔、私も修学旅行で行ったなあ……とふと、懐かしくなる。
あの時は何処を見て回ったんだっけ……。
友達も碌にいなかったから、自由時間に一人で、寺社仏閣巡りしたなあ……。
落ち合うのは二日後、と言っていた。
それなら一日目はまだ楽しめる時間があるかもしれない。
勿論、気を抜きすぎる訳にもいかないが。
しかし、杠葉月達のグループに入れたのは僥倖だった。
行動を共にする傍ら、友好関係を深められるかもしれない。
(あわよくば……と、とも、“友達”に……)
い、いやいや! 何を考えているんだ私は!
公私混同だろう、それは。
そもそも彼女達と私とでは年が離れすぎているし……。
よくない、実に良くない考えだぞ、白銀志保。
戒めなければならない、自分を。
ここ最近、彼女達に近づきすぎてはいないか。
私など、ただの監視役にすぎないのだ。
それ以上の特別な感情など、持ってはいけないだろう。
浮かれるな、自惚れるな。これは遊びではないのだ。
万が一我々の行動が理解されずに敵になる様な事があれば、私はこの『世界』の為にも彼女達と戦わなければいけないのだから。
(……でも)
それでも、彼女達となら。
ここ数か月一緒に過ごして、そう思ってきている自分がいる。
(ああ、よくない)
褒められたものじゃないな、これは。
それは大いに理解している。
だが明日の旅行を少し楽しみに思ってしまう自分を、抑える事は出来そうになかった。




