一章 女子大生、呆れる
「……あれ?」
「どうしたのぉ?」
九月四日。午前、十時十三分。
高校生とは違い、まだまだ夏季休暇期間中の大学生であるウチは久しぶりに大女優、海野美玲の私邸を訪れていた。
そこで前回訪れた時と違う、ある変化をみつけ、思わず声を上げてしまう。
「美玲さん……ここにいた人達、何処行ったんです?」
ウチが指さしたのは例の檻……人口モンスターの巣である。
以前は山の様に積み重なっていた人間達が、今は影も形も無い。
ウチの疑問に、「ああ!」と美玲さんは嬉しそうな顔をつくる。
「全部処分しちゃったわ! いやー呻き声とか結構五月蠅くって困ってたしありがたいわぁ」
「……処分、ですか? いいんですか、折角の駒なのに」
「いいのいいの! 何て言ったって……遂に完成したんだもの、例の『あれ』」
「『あれ』って……前に雪が開発してるって言ってた『凄いもの』ですか?」
「そ! だからもう必要なくなっちゃったの。研究用に一、二体は地下に置いてあるけど……それ以外はぜーんぶ捨てちゃった」
成程……道理で数日前、西白百合の方が騒がしかったわけだ。
ただ捨てるだけじゃ勿体ないからモンスターを一斉に放流したんだろう。
「じゃあここ最近、沙耶さんが見当たらないのもそれですか。死体の、処分?」
「ああいや……沙耶ちゃんはね、今京都に行ってるわ」
「京都? なんでまた?」
ふふふ、と美玲さんは妖しく微笑む。
コイツがこの笑いをする時は碌な事にならない、とウチの直感は告げている。
「修学旅行のサプライズゲスト! ってトコかしらね」
案の定、だ。
修学旅行とはつまり、東白百合高等学校のもので間違いないだろう。
確か『彼女』も行き先をそう言ってた筈だ。
だとすればサプライズゲストとは……会いに行ったって事だろう。
我らがユウシャ……杠葉月に。
全く……あの単細胞も勝手な真似をしてくれる。
計画に支障をきたすような事があればどうしてくれようか。
「美玲さんも、それでいいんですか? あの人、手加減とか出来ませんよお……多分。万が一殺しちゃったらどうするんです?」
「うふふ……! そしたら、それもまた、面白いわね……!」
「はあ……そーですか」
聞いたウチがバカだった。
コイツは自分が面白ければいいだけの狂人だった。
『~~♪ ~~♪』
「……あら? 電話……マネージャーかしら」
「いや、どうもウチの方みたいです。ちょっと席外しますね」
「はいはーい、ごゆっくり~」
可愛らしく手を振る大女優を尻目に部屋を後にする。
スマホを見ると、すっかり見慣れた番号が表示されていてげんなりする。
昨日もあれだけ話したのに……まだ足りないのだろうか。
いい加減、着信拒否にしてやろうかと本気で思案してしまう。




