六章 女子高生、涙の味を知る
…… 夏祭り 当日 ……
「いいですか勘違いしないで下さいね私が浴衣なんて着てるのはあくまで一人だけ私服じゃあ浮くと思ったからであって別に一度くらい友達と浴衣を着てお祭りに出かけてみたかったからとかそんなのじゃ全然ないんですからね? 分かりましたか?」
「うんうん分かった分かったよーゆみみ!」
「……本当に分かったんですか?」
「お祭りが楽しみって事でしょ?」
「全然分かってないじゃないですか!?」
「そんな事よりさ」
「そんな事!?」
「さっき先輩達から連絡があったんだけど、ちょっと遅れちゃうみたい。『先に楽しんでて』ってさ」
「はあ、そうですか……」
「あ、あれ凛音じゃないかな? ほら行くよ、ゆみみ!」
「ちょ、ちょっと待って下さいよ!」
菫さんは私を置いて、どんどん先に行ってしまう。
私も必死に人混みをかき分けその後を追った。
西白百合の駅前はお祭りの影響からか凄い賑わいを見せている。
私達の様に東から来た人も大勢いるのだろう。
菫さんについていくと、確かに凛音さんが駅入り口の壁にもたれかかって、ぼんやりと空を眺めていた。
「凛音ー! こっちぃー!」
菫さんが大声で呼びかけるとこちらに気付いて、トコトコと向かってくる。
彼女も桃色の浴衣を着ている。あの後、菫さんと一緒にレンタルしたのだ。
だが、凛音さんの恰好は何というか……とっても可愛らしい、というか……端的に言ってしまうと小学生……いや、七五三と言われてもおかしくないだろう。
彼女の体格も相まってどうしても子供っぽく見えてしまう。
あのペンギンみたいなトコトコ歩きもそれっぽいし。
……どうしてだろう?
凛音さんを見ていると、凄い優越感を感じるのは。
恐らく、あまり良い事ではないのでこれ以上深く考えるのはやめておこう。
凛音さんと合流した私達は、人の流れに沿って移動し、お祭りの会場に向かった。
会場では長い通りの左右に大量の出店が存在し実に賑やかだった。
菫さんは大きなわたあめを、凛音さんはりんご飴を、私はチョコバナナを買った。
そのまま食べ歩きながら、あちこち見て回る。
金魚すくいとか。
キーホルダーとか売ってる小物屋さんとか。
射的屋さんとか。
「ね、折角だし元弓道部エースの実力見せてよ!」
「射的と弓道は全然違うと思いますけど……」
「……射的……やった事ない……」
「ほら凛音もやりたいって!」
「うーん……しょうがないですねえ……じゃあ、特別に見せてあげましょうか……! すみません、一回お願いします」
「はい、一回五百円ね。弾は一回につき六発だよ」
…… 十分後 ……
「すっごい凛音! また落とした! 今度はネコちゃんのぬいぐるみだよ!」
「…………射的、結構楽しいかも」
「ゆみみは……あっ……」
『あっ』ってなんですか?
何が『あっ』なんですか?
いけませんか?
二千円も使って一個も景品を落とせないのは、そんなにいけない事なんですか?
というか、そもそもこんなの弓とは全然違いますしね。
銃は重いし、反動で照準がぶれるし、大体私が部活から離れてもう結構経ちますからね。
三か月ですよ? 三か月。三か月もあれば蝉なら十三回は死ねますよ?
「最早何言ってるか分からないよ、ゆみみ……」
「…………下手……余りにも……」
「お嬢ちゃん、もうやめときな……ほら、これ(←景品の酢昆布)サービスしてやるからさ」
「黙ってて下さい……! まだ、まだ弾は残ってるんだ……! 後、一回……一回位ならまだ財布もっ……! うおおおおおおおおっ!! 当たれええええええ!!」
…… 五分後 ……
「……酢昆布、美味しい? ゆみみ」
「……酸っぱいです」
後、ちょっとしょっぱいです。




