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ギルドライバー“ハヅキ”  作者: 今井亜美
第八話 名探偵“ゆみみ” ~浴衣と花火とモンスター~
60/162

まくあいショート2『決闘代理人とシホとキャットファイト』 ~後編~

☆☆☆ ☆☆☆




 ●愛してるゲーム(今大会特殊ルール)


 ■用意するもの

 ・椅子二つ

 ・対戦相手


 ■ルール

 ・椅子に向かい合い、先攻後攻を決めます。

 ・先攻が後攻に向かって「愛してる」と言います。言い方は自由。身体的接触も可。

  ※但し、危険行為は厳禁。

 ・この時、笑ったり、照れたりなど反応した方がそのゲームの敗北。

  ※どちらも笑ったり、照れたりなど明確な反応をしなかった場合は、引き分けとなります。

  ※ここまでを1ゲームとします。なお、1ゲームは30秒まで。なお攻撃側が30秒経過後も「愛してる」を伝えられなかった場合、照れているとみなし、攻撃側の敗北となります。

 ・1ゲーム終了後、先攻後攻を入れ替えて次のゲームに移行します。

 ・決着はタイブレーク方式。連続で勝った方がキャットファイト王となります。


 以上!




☆☆☆ ☆☆☆




 負けられない……ここまできたら絶対に負けられないっ!


 だって前編だけで10000字近くも戦ってるんだよっ!? 当初の予定通りそのまんま投稿してたら過去最長だよっ!? 長すぎたせいで急遽前後編またいだんだよっ!? 誰だよこれがショートって言った奴はっ!?


 何で外伝で一番長くなるんだよっ! おかしいだろどう考えてもっ! 

 こっちに力入れるならもっと本編の投稿早くしろよっ!! 

 

 ────という厳しいお叱りの言葉を受けない為にも、私はもう絶対に負けられないんだ。

 私はこのエキシビジョンマッチに……女としてのプライドの全てを賭ける!


「いい気迫だな杠……! だが、私とて女だ。プライドを賭けられたら、負けられない!」


「白銀さん……いいや、白銀志保っ! ここで決着をつけてやる! いざ────!」

「尋常に────!」


「「────勝負!!」」


『さあ、始まりました最終決戦“愛してるゲーム”! 泣いても笑ってもこれが最後ですっ! 第一ゲーム、先行は葉月選手から』


「先手必勝っ!」


『おおっと、いきなり立ち上がった葉月選手! これは早速仕掛けてくるのか!?』

『……賢明な判断。立った方が動きの幅が多い』


 私は勢いよく立ち上がり、椅子に座った白銀さんの目の前に仁王立ちする。

 白銀さんは警戒する様に私を睨んでいる。一挙手一投足を見逃さないつもりなのか、最大の注意が身体に注がれている。


 大切な初手……だからこそ、相手の警戒も大きくなる。ならば、それを最大に利用させてもらう!

 私は着ていた服に両手をかけて、一気にそれを脱ぎ捨てた。


「ぅうりゃああっ!」

「な、何ぃ!?」


『こ、これはぁ!? 葉月選手まさかの服をキャストオフ! し、下着丸見えっ! 乙女の柔肌さらけ出しっ!』

『…………っ!?』


「しゅ、羞恥心とか無いのか!? お前は!?」

「かかか、関係ないねっ! か、勝つ、勝つため! だ、だもんっ!?」


「身体ガッタガタじゃないかっ!? ていうかこれもう恥ずかしがってるだろっ!? 負けじゃないのか、ルール的に!?」


『確かにもうアウトに見えますが、色々面白いんでOKですっ!!』

『あり寄りのありっ……!』


 へ、へへへ……流石は菫さんに凛音さん、話の分かる奴らだぜ!

 予想通り、白銀さんの視線は私の胸に釘付けだ……!


「ゆ、杠……お、お前……!」

「ふふん、どーだ! これでもう私にメロメロでしょ!?」


「下着のセンスも無かったんだな……」


 は?


「ハヅキ……何で下着の柄が孔雀なの?」


 は? は?


『よくそれで時雨先輩の事、動物のシャツ(笑)とか言えましたね?』

『……ダサい』


 く、孔雀の何が悪いのさ!? 

 孔雀はね、求愛行動でその綺麗な羽を広げるんだよっ! 

 

「だから下着にピッタリなの! アイシテルのサインなの!」

「あ、愛してる!?」


『おっと……! ギャグに紛れてしれっと葉月選手仕掛けたか!?』


「え? あ────ち、ちがっ!? 今のは違くて!? そういうんじゃなくてぇ!? いやゲーム的にはそうなんだけど、そうじゃなくて私は!?」


『分かりやすい程取り乱しております! これは葉月選手の判定負けかぁ!?』 


「ふふ……杠……愛してるなんて……」

「う……あぅぅ……!」


『志保選手は余裕の微笑みを見せている!! これは決まっ────』




「ありが、あり、あ、あり、ががががが!」




『────ってない!! 決まってない!!! こっちもダメだった! こっちもクソザコでした!!』

『よ、弱すぎる……!』


「アアリギ、ガガガガガガガガ!」

「へあへあふぅふぅあぅううううう……!!」


『何という事でしょう! まさか、まさかのどっちも最弱というオチ!! 最弱の矛VS最弱の盾! かつてこれ程弱い戦いがあったでしょうか!? 一体どっちが勝てるんだ!? 逆の意味で目が離せなくなってきた決勝戦っ!!』


『……とりあえず、一回戦は引き分け。攻守交替で仕切り直し』




 ……… 第二回戦! ………




『さあ始まりました第二回戦! 今度は志保選手の攻撃になります」


 始まる第二回戦。(服は着た。)

 今度は私は座ったまま、白銀さんの攻撃を耐えなければならない。

 

 白銀さんはさっきの私と同様に開始早々立ち上がった。

 頬を赤く染めつつも、キリッとしていて鋭い瞳。

 

 白銀さんは背の高さもさることながら、顔つきも凛々しくてイケメン度が高い。

 攻められれば並みの女子なら簡単に攻略されてしまうだろう。


 そんな白銀さんが、私をジッと見つめながら、こちらにゆっくりと近づいてくる。

 私も恥ずかしさから、顔が赤くなっていくのを感じる……!


(い、一体どうやって仕掛けてくるんだっ……!?)


 ゴクリっ……と飲み込んだ生唾の音がハッキリと辺りに響いた気がする。


「ゆ、杠!」

「っ!」

 

『早速仕掛けるか!?』


「あ、あ、あい、あいし……あいしてててて!!!」


『が、ダメっ……! 言えないっ……! たった五文字っ……!! 愛してるの言葉が言えないっ……! 遠い、余りにも遠いキミとの距離っ……! 目の前にいるのにっ……届かないっ……! 伝えられないっ……! これは、そう、本当に愛しているからこそっ……! 言う事が出来ません志保選手っ……!!』


 ほほほ、本当に愛してるぅ!?


「ち、違うぞ!? それは橘が勝手に言ってるだけだ!!」


「じゃ、じゃあ愛してないって事……? 白銀さんは私の事嫌いなんだ……?」

「ほわぁ!?」


 あ、なんか涙出てきた……。

 そ、そうだよね……ちょっと、仲良くなれてきたかもとか……私の思い込みだよね……?

 私みたいな三日同じパーカー着てる様な女は嫌で当然だよね……!?


『泣き落としだぁ!! 葉月選手、天然の泣き落とし! 痛烈なカウンターが炸裂したぁ!!』

『……メンヘラ』


「ちちち、違うっ! わ、私はっ……き、嫌いじゃなくて……その!」

「い、いいんだよ? 別に……。私、ほんとに気にしてないからっ……! 白銀さんに嫌われるのも、当然だなって思えたからっ……!」


「き、嫌いじゃない! 嫌いじゃないぞ!? ただ、私は、えっと、あの、その……あ、あい……し……て……やっぱむりぃ……!?」


『ここでタイムアーップ!! 志保選手、時間切れでこのラウンドは葉月選手の勝利だぁ!!』 

『……次勝てば、終わり』


『凛音の言う通り、次に葉月選手が勝てばそこで決着となりますっ! さあどうする志保選手!? ここで終わってしまうのかぁー!? 勝負は運命の三回戦へ移行します!』



 ……… 第三回戦! ………

 



 さ、三回戦……次は私の攻撃だ。

 さっき気付いたら勝っていてラッキーだったけど、逆に言えばどんな戦略が有効だったのかが分からないって事だ。


 正直一回戦で行ったあの下着見せは私的に究極の必殺技だったんだけど、うっかり私も照れすぎたせいで引き分けになってしまったからなあ。あそこを取れなかったのはやっぱり痛かった……。

 

 でもどうしよ? あれ以上の作戦じゃないと勝ちはもぎ取れないって事だよね……でも悲しいかな、何も思いつかないや。


『葉月選手、長考です……しかし、制限時間は僅か30秒! その間に策を練り、愛を伝えなければなりません!』

『……残り17秒』


 くそっ時間が無い! 1ゲームの時間は僅か30秒……告白する覚悟を決めるには余りにも短すぎる時間が(倒置法)っ!


 考えている暇はないっ! このまま何もしなければ私の敗北となるっ!

 えーいこうなれば一か八か……あの奥の手を使うっ!


「どおりゃあああああ!!」

「へあ!?」 


 私は白銀さんの身体を思いっきり抱きしめる様に体当たりをぶちかました。

 二人で勢いのまま椅子から転げ落ちる。


 今回のゲーム……肉体的接触は禁じられていない!

 つまり、私の奥の手とは……!


 『見られてダメなら身体で惚れさせろ! ダイナマイト☆ぼでぃーぷれす大作戦』だっ!!

 

「いったた……ゆ、杠、何を────むぐぅ!?」


 相手の反撃は許さない! 私は白銀さんの頭を胸に抱え込んで口を塞ぐ。

 そのままぎゅっっっと抱きしめて密着しながら。


 恥ずかしくて、小さくて、吐息交じりになりながら。

 ────耳元でその言葉を、甘く、囁いた。


「……あいしてるよ」

「!?!?!?!?!?」


 しぃー……ん。


 一瞬、空気が固まる。

 あんなに騒がしかったのに。


 静かに流れる時間の中、白銀さんの頭を抱えながら、私は恥ずかしさやらなんやらで段々不安になってきた。


(だ、だめ? だめだった……!? めっちゃ恥ずかしぃ〜けどこれで負けてたらもっと恥ずぃぃ……!)


 お願い……! お願いだから、神様! 私に勝利をぉぉ……!(「ボクを呼んだ!?」 ←黙れ! 人の思考に入ってくんな!)

 

 私が必死にお祈りを捧げていると……。


 ボシュゥゥゥゥゥウウウウ!!!


 と、煙が蒸発する音が、私の腕の中から響き渡る。

 白銀さんの頭から大量の湯気が溢れ出したのだ。

 

 少し離してよく見てみると、その顔は真っ赤に染まり、目がぐるぐると回っていた。

 完全に脳がオーバーヒート。ノックダウンって感じだ。


「これって……」


 私の呟きに


   「ああ」


      と妖精が答える。




「ハヅキの勝ちだ」




☆☆☆ ☆☆☆




『えー……という訳で第一回女子力王決定戦、勝者は……“白銀志保”選手でーす! おめでとうございまーす!』

『……最強の女』


「ああ……ありがとう!」


 ………………。


 …………………………。


 ……………………………………。


 ………………………………………………あっるぇー???


 え? 私勝ったよね? え?

 そりゃ確かに負け越しだったけど、最終勝負で決着付けるって話だったよねぇ?


 何で負け? 何で? なんで?


『そりゃ、相手のセコンドからクレームが入ったからですね』

「時雨が!? なんでさ!?」


「……当たり前、だよ」


 突然だけど、肝が冷えるって表現があるじゃん? めっちゃ怖いよーって意味だ。

 あと、声が冷たいって表現があるじゃん? こっちはめっちゃ怒ってるよーって意味だね。


 つまり何が言いたいかというと……今、私の背中から聞こえた時雨の声は、めっちゃ冷たかったし、それを間近で聞いた私の肝は心底冷え込んだって事。


 声だけで人って恐ろしいって感じられるんだなぁって……勉強になりながら、ゆっくりと振り返ると……そこには……いつもより三倍増しぐらいのジト目の時雨がいた!


(ひえっ……!)


「な、何が、当たり前なのかなぁっ!?」


 怖くて声が裏返りながら必死に虚勢を張る。

 時雨は淡々とした口調で告げていく。


「三回戦でのタックル。二人共派手に椅子から落ちたね。白銀さんなんて後ろからだった。どう考えても危険行為だよ。頭を打ってたらどうするの?」

「ヴ!?」


「子供じゃないんだから、分からなかったじゃ済まされないよ。白銀さんが受け身を取ってくれたから二人共無事で済んだけど、葉月自身も怪我をしてた可能性だってあった」

「ヴェエエ!?」


「ルールにもあったよね。危険行為は厳禁だって。だから、葉月の負けだよ」

「あばばばばばば!?!?」


 な、なんてこった……これは一部の隙もない完全な論理……!

 こ、これを覆すのは例えナルホドウな弁護士であったとしても不可能に近い……!


「く……悔しいけど、分かった。今回の決闘は私の負────」




「────諦めないで!」

「!?」


「ハヅキ、諦めるのはまだ早いよ!」

「よ、妖精!? で、でも時雨の論理は完璧だよ……!? 百人に聞いたら百人が葉月の負けって言うよ!?」


「なら百人と一女神に聞いてみなよ? ボクが言ってあげるさ……キミの勝ちだってね☆(キメ顔)」

「わ、私の勝ち……!?」


「妖精さん、それは聞き捨てならないよ」


 ゆらり、と時雨の目が怪しく光る。


「どうしても今の勝負、『葉月の勝ち』だって言うのなら、その“証拠”を出して」

「しょ、“証拠”って……よ、妖精!? どうするのさ!? 私、自分が勝ってる証拠なんてそんなの持ってないよ!?」


「大丈夫! ハヅキ、キミにも分かる筈だ! 必要なのは、発想を“逆転”させる事だ!」

「“逆転”……?」


「そう、つまり……キミが勝った“証拠”を提示するんじゃない。キミが負けてない“証拠”を提示するんだ!」


 私が負けてない証拠……!? でも私はさっきの時雨の理論によって敗北になった筈……?


「その理論がムジュンしていたとしたら……? “証拠”は、既にキミも持っている筈だよ!」

『なんか面白そうな話になってきましたね?』


 にょきっ。と擬音が出そうな程、首を伸ばして菫さんが会話に参加する。

 

『こうなったら勝利者インタビューはここで終わりですっ。そして私がサイバンチョ役をしましょう! 杠葉月さん、私に『葉月が勝った』という“証拠”を見せて下さい!』


 にっこりと笑って菫さんが私に言う。その裏で凛音さんがボソッと『サイバンチョ……私もやりたかった……』と呟く声が聞こえた気がしたけど、今はそんな事考えている場合じゃない。


『おっと、“証拠”の提示は一回まででお願いしますよ? 失敗=敗北ですっ!』


 い、いきなり一回だけ提示って!?

 き、厳しすぎるけど……何とか時雨のムジュンを示すしかない!


 妖精が教えてくれたヒント……さっきの時雨の完璧な論理。

 私が勝った証拠ではなく……負けてない証拠……ハッ!? そうかっ!?


「分かった……私が提示すべき“証拠”は……これだっ!」


 くらえ!!


 → 愛してるゲームのルール


『こ、これは……!? ゲームのルール、ですか?』


「そうだよ。思い出して欲しいんだ、私がどうして敗北になったのかを」

『それは……葉月先輩が危険行為をしたからですよね?』


「うん。さっき時雨が言った通り、『危険行為は厳禁』とルールには明記されている」

『? じゃあ、葉月先輩の負けじゃないですか?』


「いや、そうじゃないよ。だって『危険行為は厳禁』としか書かれてないからね?」

『え……ああっ!?』


「菫さんは気が付いたみたいだね……そう、ルールには『危険行為は厳禁』とは書いてあっても、『危険行為をしたら敗北になる』とは書いていないっ!! よって、私の敗北は無効となる!!!」ドヤぁ…


 決まった……! これが私の導き出した結論。

 最後の最後、崖っぷちでの大逆転。


 妖精も満足そうに後方師匠面して頷いている。

 

 勝利……! 杠葉月、圧倒的勝利……!!


『いや、そのりくつはおかしい』

「ひょえ?」


『そんな子供の言い訳みたいな理屈が通じる訳無いでしょ? 裁判舐めてんの?』

「つ、ツッコミが辛辣すぎる……!?」


 で、でも書いてある事が全てだもんっ!

 悔しかったら最初からそういうルールを制定しておけばよかったんだよーっだ!! ばーか! ばーか!


『うわぁ……あ、もういいです、じゃあ。今ので信頼度が0になったんで』

「そういう心にくる言い方やめて!?」


『……私は、彼女の言う事にも一理あると思う』

『り、凛音……w?』


 珍しく、凛音さんが私を肯定してくれた。

 手元にあるルールが記載された紙を眺めながら、彼女は頷く。


『子供の様な理屈だろうと、ルールはルール。制定されてないのが悪いと言えば、それ以上は何も言えない。これは、大会運営側である私達の落ち度』

『いやいや……流石にこんなの想定出来ないって────』


『それでも。私は、彼女の主張にも理があると考える(ルールの穴をついて勝つのって、なんかカッコいいし……!)』


 凛音さんの力強い言葉が、私の背中を押してくれる。

 私は改めてみんなの顔を見た。


 菫さんは渋い顔をしている。白銀さんは呆れた様に笑ってる。凛音さんは私をジッと見つめて、妖精は目が合った瞬間ウィンク決めてきてムカつく。


 そして肝心の時雨は、目を瞑り、何かを考える様に顎に手を当てている。

 これは……もしかすると、もしかするかもしれないぞ!?


 あの時雨を口で言い負かす日が遂に訪れたのか!? 苦節16年、今までの数々の敗北は今日、この日の為にあった!!

 勝てる!! 繋いだ!! 全員で!! ここまで!!




「────確かに理があるのは、認める」

「じゃあ────!!」


「でも、それなら考えないといけない事があるよね?」

「ひょ?」


 パッ、と時雨の目が鋭く開き、私を射抜いた。


「厳禁……つまり、禁止されている違法行為をした事は変わってないよね? 罪を犯したのなら、罰があるべきだけど……敗北が罰にならないのなら、葉月はどうやってこの罪を償うのかな?」


 え……っと、それはぁ……えーっと……せ、誠意を込めた謝罪を以てぇ……?


「後頭部を強打すれば、軽くても脳震盪、重ければ、脳機能に障害が残ったり、死亡する場合も考えられる。謝罪だけじゃあ、白銀さんも簡単に納得してくれないよ」


 理詰めが……! 理詰めが強すぎる……!

 こいつ、まさか!? ここまでの流れを読んでいたというのか!?

 私の逆転すら計画の内だったのか!?


「いや、私は別に敗北でもいいぞ?」


 白銀さ────!


「────納 得 し な い よ ね?」

「あ、ああ! うん! 納得出来ないね、全然!」


 ────この裏切り者ぉ!


『じゃあ、時雨先輩はどうしようって言うんですか?』

「確か、この決闘は妖精さんが白銀さんのお菓子やジュースを勝手に食べてしまった所から発展したんだよね?」


 えっと、そういえばそんな話だったね。

 いつの間にか白熱しちゃってたけど、私は妖精の代わりに出場させられた被害者だった。そうだった。私は悪くないね。もう済んだ事。あいつが全部悪い。私だって被害者なんだよ?


「その時は被害者でも今は加害者だから駄目だよ?」

「あ、はい」


「葉月の罰は、妖精さんが食べたり飲んだりした分の補填、という事にしよっか」

「へ?」


『成程! 確かにいいですね、それ!』

『……落としどころとしては妥当』 


「白銀さんもそれでいい?」

「あ、ああ。当人がそれでいいならな」


「や、やだ! だって結構な量あったじゃん! ただでさえ普段から妖精っていうタダ飯食らいの食費を抱えているのに、今回もなんて絶対にやだっ!」


「嫌なの? それならしょうがないね……ここは、私と“愛してるゲーム”で決着を付けるしか────!」

「白銀さん、幾らだっけ? 足りない分は後日でいいかな?」

「葉月………………」


 時雨のジト目力が更に増したけど、しょうがないね。

 コイツは当たり前みたいに人に愛してるって言える奴だからね。勝てる訳無いからね。

 勝負を受けて恥ずかしい所を晒すくらいならこのまま敗北した方がマシなのだ。


「はあ……」


 何でため息をつくんですかね、時雨さん?

 思い通りに行ったんだからいいじゃんね。


 それともまさか、そんなに私と“愛してるゲーム”がやりたかったのかな?

 思い返してみると、私と白銀さんが“愛してるゲーム”をやってる間、時雨は一言も喋ってなかった様な……?


 とするとこれは、時雨の小さな嫉妬、だろうか。

 察するに、『アイツばっかり葉月と遊んでいてズルい!』という独占欲からくる可愛らしい嫉妬と見た。


 だとすると、悪い事したなあ。絶対に勝てなくても、所詮遊びだし。

 時雨とも戦ってあげればよかったかな……。


 いや、でも流石に二連続“愛してるゲーム”は恥ずかしすぎて、私の心臓が持たないね。

 だから……私はそっと時雨の後ろに近づいて、耳元で囁いた。


「みんなの前だと恥ずかしいから……後で、ね?」

「!」


 時雨は、いえす、とも、のー、とも言わなかった。

 ただ静かに右手を伸ばしてきたから、私も左手を伸ばしてやった。

 心なしかちょっと嬉しそうな顔をしてる。現金な奴め。




 かくして、決闘は終戦を迎えた。

 第一回キャットファイト王決定戦、勝者は、杠葉月。ただしペナルティによって、妖精の食べたお菓子&ジュース代を失う。


 気付いたらもう遅い時間になっていた、という事で本日は解散となった。

 また今度、次は夏祭りで会おうねってさ。

 

 ……え、オチ? ないよそんなの。

 少なくとも私の話はこれで終わりだね……私の話は、ね。







『あ、あれ? 私のバイトの話はどこに……?』




 まくあいショート2『決闘代理人とシホとキャットファイト』 おしまい。

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