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ギルドライバー“ハヅキ”  作者: 今井亜美
第八話 名探偵“ゆみみ” ~浴衣と花火とモンスター~
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一章 女子高生、ハブられてる


 じっくりと洋服を見る機会なんて、一体いつ以来になるだろうか。


 前回このSeeONに来た時は、私ではなく菫さんの服を見に来ていたから、純粋に私が買う目的で友人と来るのは、実に一年振り……中学の時以来なのではないか。


「あ、あのーゆみみさん……?」


 目の前に下げられている一着の黄色いワンピースに目が止まった。

 黄色。英語でイエロー。シアン、マゼンタと並ぶ三原色の一つ。

 はっきり言って着慣れた色ではない。

 だが、こんな時でないと一生買う事も無いだろうなと考えると、中々良いのではないだろうか。


「そ、その服よりも私はこっちのTシャツの方がいいと思うなあ……?」 

「あら? それはおかしいですね、菫さん。以前この服を私に薦めたのは貴方だったはず」

「うぇ!? そ、そーだったけなあ……? き、記憶にないなあ……?」


 特売特価、五百円のシャツを手に持つ菫さんを横目にワンピースのサイズを探す。

 Sサイズは……うん。まだ残っていたみたいだ。

 サイズを見る際に、チラリ、と値段が目に入った。

 ¥12000+税。

 

「12000ですって、菫さん」

「い、いちま……にせ……」

「じゃ、宜しくお願いしますね……お・か・い・け・い」


「お、お慈悲は……お慈悲は無いんですか!? ゆみみさあん!?」

「映画をすっぽかしたお詫びに何でも奢るって言ったのは貴方ですよ。自分の発言に責任を持って下さいね」


「うわああああん! 凛音えええ! 半分出してええええ!」

「……断る」

「何故じゃああああ!?」 

「約束したのは、私じゃない」

「ド正論だよチクショーッ!」




☆☆☆ ☆☆☆

 



「あはは……お財布……わー、からっぽだー……! あはははー……」

「凛音さん、喉乾きません? お茶にしませんか? 丁度ここに財布もいるし」

「殺す気ですか? ゆみみさんは? いたいけな少女を?」


 私の言葉に凛音さんが頷いたので、何やら喋る財布を無視してあんナデに向かう。

 ここは四階。あんナデは三階だから一つ下だ。途中呪詛の様な文言でお金だのバイトだの求人がなんだの高収入がどうだの色々聞こえた気がするが多分気のせいだろう。


 エスカレーターを下り、右に曲がる。

 あんナデはすぐそこだ。


「おーい、菫さーん!」


 ……? 何だ? 通路の向こう。誰かが財布の名前を呼んで、手を振っている。

 二人組の女性みたいだ。一人は見た事無い人で、この人が名前を呼んで手を振っているみたい。

 もう一人の背の高い女性は、見覚えがあった。あの流れる様な黒髪。女子高生離れしたスタイル。

 見間違える筈もない。


「あ、葉月先輩!?」


 菫さんが、お返しにと手を振りだす。

 小走りで、二人組の女性がこちらに向かってくる。


「菫さーん! おはよっ!」

「わあー葉月先輩! 時雨先輩も! めっちゃ奇遇ですね! 今日はどーしたんですか? お二人でデート?」


 いやいや……デートって、菫さん。お二人共女性ですよ。

 でも、まあ……あの人が噂の葉月先輩か。ならあながち間違っても無いんでしょうね。多分。きっと。


「うん」


 ほらね。予想通り、あっさりと答えましたよ、この女。


「ちょ、ちょっと時雨! 映画を見に来ただけでしょ!?」

「? 前に映画を見に行った時、『二人で来るとデートって言うんだよ!』って葉月が嬉しそうに言って──」

「いつの話かな、それ!?」


 痴話喧嘩が始まる一方、映画、という単語に菫さんの顔が引きつっている。

 何かを思い出してしまったのかもしれない。


「それで菫さんと、えっと……」

「あ、紹介しますね! 私の友達のゆみみです!」


「あだ名を紹介してどうするんですか……! ご紹介にあずかりまして、弓美春と申します。前に弓道部に所属していました。葉月先輩のお噂はその際に時雨先輩から色々聞いていますよ」

「あ、う……え……と」

「……?」


 ……なんだ? 急に喋らなくなってしまったが。

 私、何かしたのだろうか?


「あの……ご、ごめんなさい……」


 ……何が?


「葉月には美春の事、前に私から説明した。だから特に説明しなくても大丈夫」


 どこらへんが大丈夫なんすか?

 説明がいらないって言われても、むしろ私が説明してほしいのだが。

 ひょっとして、既に嫌われてしまっているのだろうか。

 

「それよりも先輩! 聞いてくださいよ! 昨日──」


 人の事を『それより』呼ばわりして、菫さんが喋り始める。

 そのまま、三人で仲良く話し出してしまった。


(あー……これは、完全にのけ者パターンですね)


 まあ、こういう事には慣れてるし別に構わない。

 それに今回は私だけじゃなくて凛音さんも一緒だし。

 凛音さんなんて紹介すらされてないし。流石にそれは可哀そうではないかとも思うのだが……。

 まあいい。丁度あちらにベンチもあるし、凛音さんを誘ってそっちで待っていようか。


「凛音さん、二人で向こうに座って待ってま──」


「──ね、凛音さんもそう思うよね!?」

「……思わない」


 !? 


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