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ギルドライバー“ハヅキ”  作者: 今井亜美
第七話 パニック&サマー・バケーション
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六章 増える仲間 VS人工モンスター その1


『ショッピングモール“SeeON”白百合島店 屋上』


 白百合の中心に位置するショッピングモールの屋上の駐車場。

 その一角から、下で戦う彼女……菫を眺める。

 

「神よ、悪しき闇を照らし給え!」


 呪文と共に生まれた閃光が槍となって菫を囲むモンスター達を貫いていく。

 二体が息絶え消滅し、一体が呻き声を上げてひるみ、動きを止めた。

 しかし、彼女の周りには依然と敵が存在している。

 島中のモンスターがここに集まってきているのだ。


「ここで油売ってていいの、リンネ?」


 ふと、頭上から声がする。

 見上げれば逆光の中に、見覚えのある小さな生物の影。

 その見た目は伝説などでよく言われる『妖精』に似ている。


「“ユウシャ”を見るんじゃなかったの? それともそんなに“ソウリョ”が気になる?」

「…………別に」

「相変わらず愛想が無い……ま、いいけど」

「あなたほどじゃない……クーちゃん」

「クーちゃんじゃない、クーデリア! 何度も言ってるでしょ!?」


 暴れるクーちゃんを無視して視線を再び下へと移す。

 菫がまた魔法を唱えて、巨大な虫が一匹死んだ。

 だがその後ろからゆっくりとトカゲ型のモンスターが近付いている。

 彼女は目の前の敵に気を取られて気が付いていない。

 トカゲが大きく爪を振り上げる。

 鮮血が道を汚し、苦痛の声が辺りに響く。

 

(……こんなものか)


「行くの、リンネ?」

「うん」


 答えるや否やそのまま空中へと身を投げ出す。

 全身で感じる浮遊感。

 風を受けるままに二度縦に回転し、着地。


 横目で周囲の様子を確認する。

 残存敵戦力は六体。大した脅威ではない。

 

「え!? 凛音!?」


 こちらに気が付いた菫が、驚愕の声を上げる。


「な、なんでここに……駄目! すぐに逃げてっ!」


 どうやらまだ事態を理解していないらしい。

 背中から血を流しながら、必死に立ち上がろうとしている。

 

「……心配はいらない」

「え?」

「自分の身は自分で守れる」


 私は一枚のカードを取り出して、菫に見せる。

 桃色のラインが入った、白いカード。

 真ん中に小さく文字が刻まれている。


「それ……ジョブ・パスポート!?」

「…………“変身”」

『スキャン完了! 変身<ジョブチェンジ>! “ケンジャ”!』 




…… 一方その頃 ……

『東京』




「葉月、後ろっ!」

「分かってるっ!」


 時雨の声に合わせて、真上に飛び上がる。

 大きな破壊音と共に、先程までいた地面のアスファルトが砕け散る。

 頭を下に、逆さまになって地上を見ると、地面を壊した犯人────オークが悔しそうにこちらを見上げている所だった。


「今更オークなんて……およびじゃないっての!」 


 背中から素早く剣を抜く。

 剣の重さを利用して空中で身体を捻り遠心力を生み出し着地際、袈裟懸けに斬り捨てる。

 

「よし……!」

「葉月、大丈夫?」


「うん、まだまだいける。そっちは?」

「私も平気」


「結構斬ったけど……東京はもう終わりかな?」

「うん……ワークベンダーにもこれ以上の反応はない」

「そっか。じゃあ、ここで一旦別れて──」


『ウウウウウウ!!!! ウウウウウウ!!!!』 


「──え?」

「っ! 葉月、これっ……!?」 


 突然、周りの空間が歪んでいく。

 ぐにゃりとめくれ上がる様に。

 これは……以前見た事がある。


 ────モンスターが出現する時の光景だ。


 私達の周囲を囲む形で、モンスターが次々と現れる。

 ワークベンダーが狂った様にモンスターの情報を吐き出し続ける。

 ドラゴン、オーク、ワーム、スライム……見覚えのある奴や、初めて見る奴もとにかく、色々。

 咄嗟に背中合わせになり、死角を消して臨戦態勢を取る。


 パッと見で十体以上はいる。これをまた倒していったら、また時間がかかって、時間がかかればそれだけ別の場所の被害が増える……。

 

「時間差での出現……それに、この出現位置……まさか本当に人為的に引き起こされてる……?」

「何それ……! 罠に嵌められたって訳?」

「分からない……でもそうだとすれば敵の戦力が分からない以上、ここでどれだけ戦っても……」


 時雨の懸念も分かる。

 こいつらを倒してもまた出現されればひたすらに消耗するだけ。

 でも……ここで私達が諦めて戦うのをやめるなんて、そんな事出来ない。

 そんな事が出来るぐらい賢ければ、はじめっからギルドライバーなんてやってないっての。

 それは多分、時雨も同じ筈。

 

「時雨、パス貸して」

「……葉月?」

「あるかも分からない何かに怯えて、このまま流される位なら……やれる事は全部やっておきたいんだ」

「……分かった」


 後ろ手にパスを受け取る。

 振り返りはしなかった。背中越しに感じる体温で、確かに繋がってるって信じられるから。


「アサルト・フォーム!!」

『デュアルスキャン! “アサシン”! フォーム・チェンジ! “アサルト”!』


 その瞬間、世界が確かに止まった。

 ドラゴンが吐く炎が、マシーナが撃つ弾丸が、オークの肉体の脈動が、ワームの微弱な震えが。

 超スローモーションで再生される動画の中で、私だけが生身で動いている様に。

 はっきりと見えるんだ。


(遅い──ッ!)


 私は、どれぐらい速かったんだろう?

 敵に近づいてもこちらを見もしない。

 全く見当違いの方向に攻撃を繰り出そうとしている。

 苦も無く、一体、二体と動きを止めず流れる様に全て斬り裂いて、時雨の元に戻った時。

  

『フィニッシュ! チェンジ・オーバー!』

「……?」


 ワークベンダーの歌と共に、世界が再び動き出す。

 慌てて服装を見てみると、アサルト・フォームの鎧から、ユウシャの恰好に戻っている。

 周囲から同時に聞こえる断末魔。どうやら、モンスターはきちんと倒せていたみたい。


「凄いスピード……! あれが、アサルト・フォーム?」

「う、うん。でも、あれ? 解除したつもりなかったんだけど……」


「身体は? 何ともないの?」

「身体……?」


 言われて初めて、それがリスクのある行動だった事を思い出した。


「大丈夫。全然平気だよ」


 なんだろう。

 前も思ったけれど、デュアルスキャンは……反動があるどころか、むしろ、こう、安心するんだよね。

 届かなかった何かに触れられているみたいな、何か温かいものと魂が繋がっているーみたいな感覚。


 なのに。


(なのに、どうして勝手に終わっちゃうんだろ?)


 そんなの嫌だ。

 もっと、もっと傍にいてほしいのに。

 どうして一緒にいてくれないの?

 こんなに……こんなに?


(何でこんなに切なくなるんだろう……?)


『ウウウウウウ!!!! ウウウウウウ!!!!』


「またっ!?」

「これは……! やっぱり敵の罠……!?」

「だったら、何度でもやってやるっての!」


「────いや、ここは私に任せて貰おう」

「──え?」


 聞き覚えのある凛とした声色。

 振り向くと目に飛び込んでくる、スラリと伸びた体型。ピンとした背筋。整った前髪。大人びた色気のローポニー。

 

「し……白銀さん!?」


 間違いない。例の転校生、白銀志保だ。


「千葉と神奈川でも東京同様にUMAが観測されている。杠、黒森、お前達二人はそちらを頼む」

「ちょ、ちょっと待って! 一体、どういう──」

「────話は後だ。今はこの状況に対処するのが先だろう? 迷えばそれだけ被害が増えるぞ! 私の事なら心配ない……戦える」


 白銀さんが胸の内ポケットから何か銀に光る板のような物を取り出した。


「スマホ……?」 


 時雨が思わず呟く。

 確かに、あの銀の板には液晶がついていて、一見ただのスマホ……にしか見えない。


「────生体認証【白銀志保】……MOBドライバー、始動」


 スマホに向かって喋り出す。

 機械の駆動する音が周囲に響いていく。


『System boot. Start MOB drive. -----Please say "Transform" when you are』


 電子的な女性の音声。

 白銀さんが着ている黒いスーツの左腕を捲り上げる。

 そこには同じく黒いリストバンドがあって、特殊なホルスターが付いていた。

 ホルスターに、スマホをセットする。

 そして、声高らかに叫んだ。


「“変身”!」


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