四章 第二回、女子高生会議
…… 二日後の土曜日 ……
『黒森家 リビング』
「第二回、『女子高生会議』!! どんどんぱふぱふー!」
「イエーイ!」
「い、いえーい……?」
「違うでしょ菫さん! もっとお腹から声出して! 折角の『女子高生会議』何だから!」
「す、すいません葉月先輩っ!」
「そうだよスミレ! そんなんじゃあ甲子園(?)は夢のまた夢だよっ!」
「先生……!!」
「いいんだよスミレ。本当の事を言ってごらん!」
「会議がしたいです……」
「♪世界が終わ────」
「葉月、待って。それ以上は危険」
ノリノリで歌おうとした私は時雨に口を塞がれる。
「ぶー……何で止めるのさ!」
「ご近所迷惑だから」
確かにっ!!!
☆☆☆ ☆☆☆
「という訳で、今回新しくスミレがギルドライバーに加わったからね。ハヅキが復活した事で、戦えるギルドライバーも三人になった。今回は情報共有というよりも今後の戦いの方針について話し合っていこうと思う」
「その事なんだけど……ちょっと、いい?」
すっ……と時雨が手を上げる。どうしたんだろう?
「私に一つ提案……というよりもお願いがある」
お願い……? 嫌な予感が頭を掠める。時雨はこういう時自己主張をほとんどしない。
こいつが『お願い』なんて言葉を使う時は決まって自分の為じゃなく、他人の為。
だから、今回のお願いも多分────。
「暫く、葉月に戦いをさせるのは控えさせて欲しい」
ほーら。嫌な予感が当たった。
「待ってよ時雨! 私ならもう大丈夫だってばっ!」
私の言葉に妖精も頷く。
「シグレ、戦力は貴重なんだ。正直三人でもまだまだ足りない上に、スミレのジョブは本来戦い向きじゃない。ハヅキを戦力から抜いて欲しいと言うなら、それなりの理由がないと……認められないね」
「分かってる。本当は、もう二度と戦ってほしくないけど……でも現状が苦しいのも分かるからせめて、暫くは戦わないでほしいと思ってる」
葉月ちゃんはいい加減時雨のこの過保護っぷりに腹が立ってきましたよ。
「だから、その理由は何?」
結構きつめに詰め寄ってみる。
時雨は、言い辛そうに顔をしかめて……諦めた様に首を振って言った。
「葉月は今……ちょっと……『おかしい』、から」
「おかしい? ……人の事を異常者みたいに言わないでよ……失礼な奴め!」
「葉月、気付いてる?」
「なにさ?」
「…………何で、ずっと笑ってるの?」
「……え?」
「こないだからずっと……ずーっと笑ってる。ふざけてる時だけじゃなくて、何でもない時とかもずーっと笑ってる。その笑いも……なんというか、ちょっと、おかしくて。今の葉月は……『狂ってる』」
『狂ってる』
『狂ってる』
『狂ってる』
『狂ってる』
『狂ってる』
『狂ってる』
『狂ってる』
『狂ってる』
『狂ってる』
『狂ってる』
『狂ってる』
「違うッ! 私は狂ってない!」
「私は狂ってないっ! 私は狂ってないッ! その証拠に私は笑ってる! いつもみたいに笑えてる! 笑えるから私は狂ってない! 笑える私はおかしくない!」
あはは。うん! 我ながら完璧な理論だね! なのにねえ。なんでそんな顔するの?
時雨も妖精も菫さんまで、なんでそんな目で私を見るの?
言ってよ。その通りだよって言って。
葉月はおかしくないって。
狂ってなんていないって言え!
狂ってるとしたらそれは────。
『こ の 世 界 は 狂』
「……う」
私は急激な吐き気に襲われて口元を抑える。
時雨が咄嗟にゴミ箱を持って駆け寄ってくる。
そのまま背中をさすられて、何度か胃液を吐き出した。
ピンク色のプラスチックで出来たゴミ箱。中に詰まったティッシュに胃液が染み込んでいく。
私は吐き気が収まるまでの間、呆然とそれを眺めていた。




