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ギルドライバー“ハヅキ”  作者: 今井亜美
第三話 三人目の適応者と動き出す世界
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九章 女子高生、女子高生を押し倒す VSワーム その2


「さ、さっきの……葉月先輩……?」

「な、な、なんで……菫さんが、ここに……?」


 私の身体に突如抱き着いて、胸をまさぐってきた不審者。

 さっき、私が説得しようとした橘菫さんで間違いない。


「私は……女神さんに連れてきて貰ったんです」


 そう言って、菫さんが妖精を指さす。


「はーい! 女神さんでーす!」


 一瞬、女神……? って思ったけど、そういえばそんな事言ってたねこいつ。

 いい機会だから腹黒妖精に改名しようよ。おぼえやすいし。


「……ってそんな事はどうでもいい! ここは危険だよ菫さん! 早く逃げて! 妖精も何で連れてきて──」


「キシャアアアアアアアアア!」

「!」


 ワームが喉を軋ませて醜悪な叫び声を上げる。

 顔の前面……多分口の部分を大きく開けたと思うと、身体を震わせる。


 あの体勢……マズイ!


「っく!」


 私は、咄嗟に、菫さんを地面に押し倒し、右手を前にかざす。


 ワームの腹がぼこっ! と膨れ上がった、次の瞬間。

 口から、緑色の体液を伴った霧がこちら目掛けて勢いよく射出される。


 ワークベンダーの情報によれば、こいつの体液は強力な毒を含んでいる。

 ギルドライバーの私はともかく、生身の菫さんはマズイ。吸えば即死だろう。


「吹き荒れろ……シップウよ!」


 霧が目前にまで迫る中、私は右手に力を集中。

 呪文を唱えて魔法の風を起こし、霧を吹き飛ばす。


「あぶなかった……大丈夫、菫さん?」

「あ、は、は、はい。だ、大丈夫、です!」

   

 ? 何で、そんなに顔を赤らめて……? 


 あ。


 今、私の体勢。

 菫さんの上に乗っかっていて、傍から見てるとまるで、私が襲い掛かってる様な、かなりヤバイ状態。


「ご、ごめ! い、今すぐどくから!」

「あ……」


 やばいやばいやばい。あー恥ずかしい。

 いや、自分のした事が間違ってるって言いたいんじゃないんだ。


 もう一度同じ場面が来たら、迷わず押し倒すし、誰がなんと言おうと彼女をかばおうとした私は間違ってない筈。


 でも、でもね?


 恥ずかしいものは恥ずかしい!

 

 前に弓さんの身体に触れた時は、気絶してたからまあまだ何とかなったけど、今回の菫さんは普通に意識がある。ばっちり目が合っちゃったからねー。


 あー顔から火がでそう。心臓ばくばくだよお。くそう。


「ハヅキ! ふざけてる場合じゃないよ。追撃が来る前に、とっとと倒しちゃってよ!」

「う、うるさい! 分かってるよ!」


 くームカつく妖精! こっちの気も知らないでさ!

 

 まあいいや。気持ちの切り替えは確かに大事だし!

 てことで、私は剣を構える。


 距離は十分。一足飛びに攻撃を仕掛けられる。


「やっちゃえハヅキ! ワーム斬りだあああ!」

「はああああ!」


 ワームが吐いてくる毒弾を躱し、懐に飛び込む。

 気合いを込めて、剣を奴に叩きつけた。


 ぶにゅ……と鈍い感触。

 刃が、ワームの表皮を切り裂き、傷をつくる。

 傷口から、緑の液体がどろりと地面を汚していく。


 ……それだけ。

 剣は、あくまで表面だけを傷つけるにとどまった。

 奴の肉を断ち切りきれない。


「やっぱり、駄目だ……!」

「キシャアアアア!!!」


 傷を付けられて怒ったワームが、身体を揺らす。

 今までの鈍い動きが嘘の様に、俊敏に身体をくねらせる。


 ワームが一回転するのと同時に、叩きつける様に尻尾の一撃が私を襲う。


「うっ……く……!」


 剣を盾にするも、当然、尻尾にも、刃が通らない。


(まずい……! 潰れる……!)

「うああああああ!」


 私は力を振り絞って、ワームを一瞬跳ね上げると、転がるようにして、何とか攻撃から逃げ切り、距離をとる。


「はあはあはあ……! ぎりぎりセーフ……!」

「もー! なに遊んでるのさハヅキ! なんであそこで斬らないの?」


「いや、さっきの見たでしょ!? こいつ剣が効かないんだって! 妖精、さっさと弱点を教えて!」

「……え? 剣が効かない?」


「? そうだよ! だから弱点を──」

「…………ハヅキ」

「なに!?」




「“ワーム”の弱点は、『斬撃』だよ」

「……え?」


 うそだ。いつもの冗談でしょ? そんな、だってもう、何回も試したのに、なんで……。


「ハヅキ。前に、現実世界のモンスターなんて出涸らしみたいなものだって言ったよね? それに、こいつはユニークモンスターですらない。今のハヅキなら、問題なく倒せる筈だよ。なのに、斬れない。それなら、答えは一つ」


 妖精は、透き通るような青い瞳で、まっすぐにこちらを見据えて、言った。


「ハヅキ。キミはもう限界なんだよ」


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