八章 ヘイそこの女子高生! ちょっとだけ戦闘してかない? VSワーム その1
『ウウウウウウ!!!! ウウウウウウ!!!!』
「モンスターは……はあ、はあ……こっち……」
今ほど、普段からもっと運動しておけばよかったなって思う事もないだろうね。
ほんのちょっと走っただけなのにもう息が上がっちゃって……。
体力不足を実感する葉月ちゃんなのでした。
「! いたっ!」
前方、道路をずりずりと這いずる、不気味な巨大生物。
間違いなく、モンスターだ。
「なんてゆーか……シンプルにキモい」
見た目は、完全に芋虫。
違うのは大きさで、横幅三メートルはあるんじゃないかってくらい大きい。
紫色の毒々しい体色がまたなんともいえない。
動きもブヨブヨの身体を揺らしてのそのそっと地面を這いまわっていて、虫嫌いの人が見たら卒倒しそうである。
「ワークベンダーによれば……“ワーム”っていうのか」
妖精によればワークベンダーは日々少しずつアップデートされていくらしい。
今回はモンスターのサーチ機能と種族判別機能が追加されたみたい。
画面を軽くタッチすると、液晶が空中に映像を投射して、モンスターの情報を映し出すのだ!
……どういう原理なのかは考えるだけ無駄である。どーせ“魔法”の一言で済ませられるからね。
「とにかく、やるしかない! せっかく私があんなに勇気を振り絞って……! 後一歩で説得完了って場面を潰した罪は、重いんだからね! ……“変身”!」
『スキャン完了! 変身<ジョブチェンジ>! “ユウシャ”!』
☆☆☆ ☆☆☆
「イヤです! ムリです! 絶対ダメですううううう!!!!」
「そんな事言わずにい……ちょっとジョブパスをかざすだけだってえ。先っぽだけでもいいからさあ」
「誘い方が卑猥!?」
皆さんこんにちわ。橘菫です。絶賛、女神さんにナンパされて困ってます。誰か助けて。ホントに。
「ちょっと変身して戦ってくれればいいからさあ」
「戦うなんてムリ! あれでしょ!? 最近テレビでやってる怪現象のやつでしょ!? 私知ってるもん! 一回見たもん! 誰も信じてくれなかったけど、でもドラゴン本当にいたし! ムリムリあんなの勝てる訳ないって!」
「大丈夫だってー。ハヅキもなんだかんだ言いながら、頑張ってるし。それにキミが戦わないと、世界が破壊されるよ? いいの?」
「そ、そんな事言われたって……私、普通の女子高生で……」
戦うなんて言われたってそんなの、喧嘩もした事ないのに無理に決まってます!
「キミが持ってるジョブ・パスポート……“ソウリョ”は後方支援を主にした力だよ。だから、最前線で戦う訳じゃないんだ」
「そ、そうなん……ですか?」
「そう。なんだったら立ってるだけでも活躍できる」
「立ってる……だけ……」
「どうかな? 一度、ハヅキ達の戦いを見るのは? 参加はしなくていいからさ」
「ま……まあ、見るだけ……なら……?」
「こいつハヅキよりちょろいわ……」
「? 今何か言いました?」
「いや、別に?」
☆☆☆ ☆☆☆
「ああ、いた。あそこだよ」
「あそこって……うええ!? なにあの巨大芋虫!?」
女神さんが指さす先を見てみると、紫色の巨大芋虫がいました。
身体についた切り傷から、ドロッとした緑色の体液がこぼれだしていて、地面を汚しています。
「キモ……」
思わず言葉にでちゃいました。正直直視するのかなりキツイ……鳥肌が……うう。
「ハヅキーお待たせー! どう首尾は?」
女神さんが私の傍を離れて、飛んでいきます。
その先にいらっしゃるのは青い服に赤いマントを羽織った方……どこかで見たような……?
「よ、妖精……ちょっと来るのが遅いよ! 早くこいつの──」
「ああああああ!!!!! あ、あ、ああ、貴方は……王子様!」
「へ?」
思い出しました! あの日、ドラゴンから私を助けて下さった王子様です!
私はもう夢中で、王子様の胸に飛び込み、力強く抱きしめます。
「まさか、こんな所で再開できるなんて! 私、橘菫って言います! おぼえてませんか!? 前に、助けてもらって……ってあれ?」
何か違和感があります。
王子様の胸のあたり。
「ちょっと失礼します」
「……ん!?」
許可を取って、触ってみます。
手の平の中でふにゅ……と形を変える。確かに感じる、ほのかに柔らかくあたたかい、感触。
「あ、お、おねが……やめ……て……」
むにゅむにゅっと吸い付く様に手に収まる双丘。ショートケーキの上に鎮座するイチゴの様に、人を惑わす先端の突起。
こ、これはまさか……。
「お、女の人!?」
驚いて顔を覗きこみます。
よく考えてみたら、服装から王子様だと思っただけで、お顔をよく見たことはなかったです。
私の目に映ったのは……恥ずかしそうに、耳まで真っ赤に染まった女の子。
…………物凄い、見覚えがあります。
「さ、さっきの……葉月先輩……?」




