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ギルドライバー“ハヅキ”  作者: 今井亜美
第三話 三人目の適応者と動き出す世界
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七章 女子高生、みつめあうと素直におしゃべり出来ない


…… そして ……




 時はあれよあれよという間に過ぎ、あっという間に放課後になってしまった。

 終業の鐘が鳴る中、私は心配で部活に向かう前に一声かけようと、葉月の席に向かう。


 葉月の様子は、あの昼休みの後からずっと変わっていない。

 背中を丸め、机にうずくまったまま、雪の日の子犬の様に震えている。


「葉月、本当に大丈夫? 唇が真っ青だけど……」

「だだだだだいじょ、だいじょ! ぶ。ま、まかせて、よ。あ、あはははは」


 うん、駄目みたい。

 頑張って絞り出してはいるけれど、声が上ずってしまっている。


「? どーしちゃったのーハヅキ? 壊れたマシーナみたいな声だして」


 妖精さんが不思議そうに顔を覗き込む。

 葉月は五月蠅そうに右手を振ってそれを追い払った。


「ううう、うるさい! ちょ、ちょっときんちょ、緊張してる! だけで」


 これはひどい。かなり重症みたいだ。


「……やっぱり、まだ他の人と話すのはやめておいた方がいいんじゃ……」

「シグレ、どーいうこと?」


 妖精さんの疑問はもっともだろう。

 私は、言うべきか少し迷ったが、伝えておくべきだと思い、口を開く。


「……葉月はね、実は、極度の人見知りなの。まともに話せるのは私と、家族とか、身内の人くらいで」

「そーなの!? 普段あんなにうるさいのに?」

「うるさいは……余計……」


 そうツッコむ葉月の声はとても弱弱しい。

 今にも消えてしまいそうだ。


「……あれ? でも、ボクとは初めからわりとまともに話してなかった?」

「……それは、元々完全に幻覚だと思ってたしそれに……」


「それに?」

「犬や猫には普通に接せるから」

「ボクはペットと同格なんだ……」


 妖精さんが悲しそうな声で、呟いた。




 私はそのまま、二人が教室を出ていくのを見届けてから部活に向かった。

 三十分程、遅刻をしてしまったがそんな事よりも葉月が心配だ。


(やっぱり、今からでも部活を休んで向かうべきだろうか?)


 道着に着替え、弓を構えてなお、そんな事を考えている。

 よくない。

 精神が乱れている。


 私の放った矢は、外側の黒い円──外黒、ぎりぎりに当たった。

 やっぱり、まともに狙えていないようだ。


「葉月……」


 何事もないと、いいのだけれど。




☆☆☆ ☆☆☆


 


「ふんふんふーん♪」


 スキップスキップ、足取り軽やか。

 明日は、ゆみみとあんみつあんみつ!

 

 楽しみだなああんみつ。

 いつ以来だろ? ああ早くあの甘味に会いたい酔いたい溺れたい……!


「じゅるり……」

 

 おっと思わず涎が。

 はしたないですね。


「なんのあんみつ食べよっかなー」


 早速今から脳内予行演習がスタート!

 お出かけの基本ですよね!


「やっぱり抹茶キャラメルあんみつかなあ?」


 濃厚な抹茶の苦みと絡み合ったキャラメルソースのハーモニーがもうたまらない一品。

 私のイチオシです!


「うーんでもコーヒーチップクリームあんみつも捨てがたい……!」


 前にゆみみが食べてるのを一口貰ったんです。

 あれもめっちゃ美味しかった!

 また食べてみるのも悪くないかも。


「いやいやでもやっぱり──」

「あ、あ、あああ、あの!」

「ひゃい!?」


 と、突然声を掛けられて変な声を上げてしまいました。

 脳内妄想を中断して振り向くと、女の子が立っています。


(東高の制服……? でも、タイの色が違う)


 東高では学年によって、タイの色は変わります。

 私達一年生は赤い色。


 二年生は青。

 三年生は紫です。


 この人のタイは青色。

 つまり、二年生ってことですね。


「あの、何か御用ですか?」

「…………う………あ……」


「えっと……?」

「わ、私! は、葉月、と、いいましゅ!」

「はあ……どうも、菫です……?」


 よく分からない自己紹介。


 それきり、葉月さん? 葉月先輩? は顔を真っ赤にしてもじもじと指をいじりながら、うつむいて何も言おうとはしません。


 ときおり、意を決したように声を発するけれど、すぐにぼそぼそと聞こえない位に小声になってしまいます。

 

(どうしたんだろう……?)


 こんなに顔を真っ赤にして、熱でもあるんですかねえ?


(あんなに真っ赤だと、まるで告白の前みたい──。…………はっ!!?)


 その時、菫の脳内に電流が走る。


 それはもう百万ボルトは下らない超高圧電流だ。

 

 菫の頭の中は、完全に焼き切れてショートし、たった一つの回答以外導きだせなくなってしまったのだった!

 

…… ……


 問1


 以下の数式のXについて答えなさい。


 もじもじした女の子+恥ずかしそうに顔を赤らめる+中々話が出来ない+放課後に待ち伏せ=X


…… ……


(告白だコレ……!!!!)


 これ少女漫画でやったやつだ!


 ちょうど昨日読んだやつだ!


 女の子同士の恋愛なんておかしいかなって苦悩するけど、我慢できなくて想いを伝えにいっちゃって、でも本人の顔を見ると声が出なくて、それでも頑張って勇気を振り絞って『好きです!』って伝えて、『桜の想いは届くのか!?』って編集のアオリで次号に続いたやつだコレ!!!!!


(ま、間違いない……! こ、こ、告白……! 人生初の告白!)


 どどど、どーしよう!? 人生初の告白が、ま、まさか女の子からだなんて!!?

 う、受ける? 断る?


 正直、私の性的欲求は完全に男子(※ただしイケメンに限る)に向いているし、女性が相手だなんて考えた事もないし、先日も謎のドラゴンから助けてくれた王子様にハートを奪われちゃって、また会いたいって思ってるし……!


(断るべき……なんだろうけど)


 ああ……頭の中に昨日読んだ少女漫画がチラつく!

 あの後、桜の想いが涼子に伝わらなかったなんて思いたくないいいいい!


 あああ、どうする!? どーすればいいんだ私!?


「あ、あの!!」

「ひゃいいいいい!?」


 葉月先輩は完全に心を決めたようだ。


 決意に満ちた眼差しで懸命に私をみつめている。


 ああそんな眼で私をみないでくださいいいい!

 まだ、どうするか決めてないのにいいい!?


「実は……伝えたい、事があって」

「は、はい!」


 心臓の鼓動が爆発しそうなくらいに強く鳴っている。

 頭の中は真っ白。もう何も考えられません!


 先輩の口がゆっくりと開いていく……その瞬間。


 ビクリ! と、先輩の肩が飛び跳ねた。

 信じられないといった様子で、左手の腕時計をみつめている。

 

「嘘……なんで、こんな時に! 場所は……? 近い……!」

「あの……?」


 どうしたんだろう?

 腕時計を見てるって事は、ひょっとして、お時間があまりなかった?


「ご、ごめんなさい! 私、行かなきゃ!」

「あ──!」


 先輩はくるりと背を向けるとそのまま振り向かずに走って行ってしまった。


(い、一体何だったんだ今のは)


 私のこのドキドキはどうしたらいいんでしょうか、先輩?!


「はあ……ん?」


 その時、足元に何かが落ちている事に気が付く。


「……カード?」

 

 拾ってみると、今まで見たことない様な、不思議なカードだった。

 白い板に緑色の線が走っている。


 中心には小さく、“ソウリョ”と刻まれていた。


「僧侶……お坊さん?」


 うーんよく分からないですけど、葉月先輩がいた場所に落ちてたって事は、葉月先輩の物なんでしょうか?


 追いかけて、渡してあげた方がいいのかなあ……でも、どこに行かれたか全然分からないしなあ。


「ハヅキに会いたいなら案内してあげようか?」

「え?」


 声のする方を向いた私は、首を傾げる。

 

「……誰もいない?」


 おかしいですね。確かに可愛らしい声がしたと思ったのですが……。


「こっちだよー。こっちこっち」


 また声がします。こっちって……上?


「上になに……が……」

「やっほー。初めましてだね! スミレ。ボクは“女神”。異世界から──」


「……疲れてるのかな、私」

「……ああ。ハヅキと同じパターンね。やれやれ」


「だってそんな、いるわけないし……こうやって目を擦れば……ほら、消えてる!」


 ああよかった。私の見間違えだったみたいです。

 まあそりゃそうですよね。


 宙に浮く妖精なんて、流石に、漫画の読みすぎっていうか。


 まあさっきあんなに衝撃体験しましたし。

 きっとまだ心が動揺してるんでしょう。

 だから、あんな幻影をみて──。


「幻影じゃないってば」

「触ったああああああああああ!!!! わぎゃああああああああ!!!」


「キミも随分騒がしいねえ……まいったな、話をしていいかい?」


「駄目に決まってるでしょうが! なんで当たり前の様に妖精が話をしてるの!? ……ん? 妖精? 妖精は……話をする生き物だから……話すのは、いいのかな?」


「キミ達人間はなんでボクを妖精って呼ぶのかなあ? ちゃんと“女神”って名乗ってるのに……」

「女神なら話すのは──! ……女神? 女神は、話をする生き物だから……いいのかなあ?」


「うん。で、話っていうのは──」


「いいわけあるかあああああああああ!!! なに? 誰? なにこれ!? ドッキリ!? そういうテレビの撮影なの!? カメラは!? どこ!? こっち? こっちの方にあるの? ていうかこれなに!? 「痛いやめてそこ掴まないで──」 何で出来てるの!? どういう原理で飛んで────」




…… 暫くお待ちください ……




「はあはあはあ……」

「そろそろ、落ち着いた?」


「はい……落ち着きました……」

「ボクが幻影じゃないって信じてくれた?」


「はい……信じました……」

「一緒に戦ってくれる?」


「はい……戦います…………………………た た か い ま す ?」


「じゃあ今日からキミ、ギルドライバーね。はいワークベンダー」

「え?」


「じゃあモンスターの所案内するから、ついてきて」

「え? え?」


 え?


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