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馬鹿ね ◇
2021.11.9 に書いたものです。
いつか見ていた
夢の欠片
指の間すり抜けて落ちた
すべてがもう
崩れ去ってしまった
今ではもう
この手は届かないけれど
それでもただ
求め続ける
馬鹿ね
誰かがそう言うのを聞いて
馬鹿よ
私もまたそう返す
それでもなお
夢を見ていた時間は確かに
この胸の内に
残り続けている
すべてが黒か白かなら
少しは簡単だったのでしょう
きっと……
いつか見ていた
夢の欠片
今ではもう
この目で見ることすら
叶わない
すべては終わった
私たちにはもう
夢を見る資格もない
馬鹿ね
それでもいいと
笑いあえた頃の愛しさ
馬鹿よ
そう
私たちは馬鹿だった
それでも確かに
幸せもあった
馬鹿げているとしても
それでも
その場所に輝きは確かにあった




