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男の方にも、嘘と秘密はあるようですわ

 ハトゥーシャの都へは、ウイラード隊長の息子さんが付き添ってくださるそうです。

「ユーグとお呼びください、リーナ様」

 ユーグさんはルロワ将軍の従者ではなく、補佐、会社で言えば秘書のようなものだそうです。

「事務屋ですが、少しは剣も使えますから、安心してくださいね」

 体育会系の文系なのですね、ユーグさん。

「馬には乗れますか?」

「上手ではありませんが、足手まといにはならないと思います」

 得意なのはロバですけど。

「凄いな! では夜になったら出発することにしましょう」

 ルロワ将軍には、ガスパール騎士団が有事に備えていることを伝えています。

 そして、リシャール副隊長に伝令としてトーリ様に会うようにと手紙を持たせました。

 ルロワ軍とガスパール騎士団が手を組み、宮殿に囚われているという先帝の皇子と共にハトゥーシャをぶっ潰す。

 当初はその予定でした。

 けれど皇帝陛下はどうも噂とは違う人物のようなのです。

 ハトゥーシャの中で何かが起こっているとしか思えないのです。

 リーナ様も心配です。

 ルロワ将軍によると、命令は全て神官が皇帝陛下の言葉を伝えるという形で下されるとのことなのです。

「誰もおかしいとは思わなかったの?」

「元々、陛下はご自分の姿を気にしておられまして、衝立や扉ごしに人とお会いになられていましたので。身の回りのお世話をするほんの一握りの者しか直に陛下の顔を見た者はおりません。それに、気に入らないとすぐに……」

「まさか、首を斬る……?」

「ええ、はい」

「それは解雇という意味ではなくて、本当に?」

「ええ、首を刎ねておしまいになるので」

「でも、ルロワ将軍……、どうも納得がいかないのよ。将軍の話を聞くと、皇帝陛下はただの不器用な人にしか思えない、むしろ愛情深い人のように思えるの。でも、実際は自分の感情にまかせて残酷なことを平気でできる人、なのでしょ? 二重人格なのかしら……まさか」

 ユーグさんと将軍の顔色が変わります。

「皇帝陛下が二人いるってこと……?」

「私たちもそれを疑ったことがあるんですが……、少しでもそんな素振りを見せた者は処刑されてしまうので」

「陛下が人と会うのを拒み始めたのはいつ頃からなの? というか、自分の姿を気にしているってどういうこと?」

「お小さい頃に酷い皮膚病に罹られまして。病気は完治したのですが、顔や体に痘痕が残りましてな。それで人前に出るのを嫌がられている時がありました。でも、そうだ、結婚されてからは随分と明るくなられて、良かったと思っていましたが」

「妻殺し、なのね?」

「はい、皇后を亡くされてからは前よりずっと人に会うことを避けられるようになってしまって」

「あの時には、近習も随分と粛清されましたね、将軍」

「その時に入れ替わったとしたら……、でも聖女様を大切にしているのよね。入れ替わった人も聖女様には優しいのかしら。うーん、わからないわねえ。それに、ウイラード隊長は先帝の皇子がハトゥーシャの未来を託すには相応しい方だと言っていたわ。だからガスパールとその方とで協力してハトゥーシャを潰そう、と思っていたの。先帝の皇子ってどういう方なの?」

「陛下の従兄になります。先帝は酷い恐怖政治をしいた方でしたので、陛下が先帝を失脚させ、現皇帝となられました。先帝の皇子とは思えない穏やかな方なので、陛下の方が先帝の子どもではないのかとよく言われましたね」

「その皇子が本当は先帝と同じで酷い人間だったとしたら? 陛下を貶めるために、良い人の振りをしていたとしたら?」

 将軍もユーグさんも首を傾げます。

「ケレム様がそのような人間だとは思えないのですが」

 けれど、私にはどうしても今の陛下がそんな酷い人間のようには思えないのです。

 何か、秘密があって、陛下は従兄に逆らえないのではないでしょうか。

 それは『妻殺し』に関係があるように思えてならないのですが。


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