捏造の王国 その11 サイバー攻撃国家じゃねーかニホンはby米ロ中印、その他大勢
総務省のトンデモ調査に再びお茶の時間を台無しにされたガース長官。海の向こうの白い家の方まで怒らせてしまい…
「今日こそはお茶を楽しむぞ」
曇り空に雪がちらつく午後三時。官邸にある自室でガース長官はお茶の準備をしていた。
「いままで緑茶を飲もうとしたから不味かったのだ。今日は趣向を変え、冬によいという熱々のロシアンティーを飲む。ロシアと領土交渉を行っているようにみせかけていたのがバレたし。それを誤魔化すゲン担ぎも含めてな」
と、フカフカのティーコゼーを淹れたての紅茶が入ったティーポットにかぶせる。
「これで総理のロシア土産のジャムをいれれば、最高のロシアンティーに」
と、アベノ総理の訪ロ土産の高級ジャム瓶を取り出す。ニホン国庶民には成果ゼロいやマイナスの訪ロも総理関係者にはちょっとだけ良いことがあったようだ。
「これで本国会を乗りきれ…」
言いながら、いままさにティーカップにお茶を注ごうとした途端、スマートフォンが鳴った。
慌ててポットを机におくガース長官。
「ふうふう、なんとかこぼさずにすんだか」
なり続けるスマートフォンを取り上げガース長官は
「なんだね、一体」
不機嫌に答える。と、出たのはニシニシムラ副長官。
「た、大変です、例の総務省の調査の件で」
「ああ、総務省がIT接続機器に無差別に侵入を試みるというアレか。庶民どもが騒いで一時中止になったはずだが、結局やっていたのか。で、どうした野党の大物でも引っかけたのか」
「大物すぎます!アメリカの民主党コメコメ元長官に」
「な、なんだ、まだ」
「中国の、と、とにかく一度こちらへー」
電話の向こうで軽いパニック状態に陥っているニシニシムラ副長官。ガース長官はしぶしぶ部屋を出て行った。
リーン、リーン
「あ、申し訳ございません、こ、これは調査で」
「“我が国の大使館関係者の警備システムに侵入を試みるとはニホン政府はテロ国家か”。いえ、わが国はそんな」
「犯罪政府、それは、その。あくまでも情報の漏洩などは。“ニホン政府では文書偽造、不正統計調査が横行しているのに信じられるか”って」
総務省“セキュリティの穴を探すために無差別に侵入しちゃうぞ調査”問い合わせ室では、ひっきりなしに電話が鳴りまくり、ニホン国民のみならず、各国、グローバル企業、NGOなどからクレーム、非難の雨あられである。
「こんなことになるなんて、思ってなかった」
と、窓際のソファに腰かけた総務大臣イシダダは打つ手もなく、ただ無意味にうろたえていた。
なにしろ野党のみならずジコウ党からも疑問の声があがっていた“セキュリティの穴を探すために無差別にIT機器に侵入しちゃうぞ調査”を断行した結果が大問題を引き起こしたのである。
ホントーに無差別に侵入した結果、G7の企業との取引がある会社のパソコンだの、世界的な非営利団体の代表のスマートフォンだの、果ては各国の大使館関係者の自宅の警備システムにまで入り込んでしまった。侵入に気が付いた関係者は、犯人がニホンの総務省調査チームだと知って怒り心頭で電話をかけまくってきたのだ。
「各国の政治家だの企業につながりのある個人だのニホンの会社だのに侵入するとは、諸外国からクレームや非難の嵐です。サイバー集団アンノニマスにまで逆に”政府のシステム侵入して報復措置をおこなう”と言われてます」
「大臣、これは責任問題になりかねません」
厳しい表情で傍に立つガース長官とニシニシムラ副長官
(バカじゃないのか本当に。無差別に侵入したらマズイところにつながる恐れだってあるだろう、なぜ調査チームはあらかじめ調査対象を選別しなかったんだ!)
(いまだに運営がうまくいかず、情報漏れまくりのマイマイナンバー担当もやってましたからね、イシダダ議員。同じ調子で多少不備があっても大丈夫かと思ったようで)
(それにしたって、調査チームに頭のあるやつはいなかったのか)
(いたらしいですが、そこまでする必要はないと主張してサイバーセキュリティ大臣のあの方がやめさせたらしく)
(もう、わからないなら黙っててくれればいいのに。口を開けばロクなこと言わずに毎回騒ぎだけ起こしおって。なんで自己顕示欲だけは強いんだ、あの人も。大工仕事だけは一流ならそれだけやっておいてくれれば)
(と、とにかくなんとかしないと)
(ああ、各国のお偉方が火を噴いている、とくにあの白い家の…)
トンデモナイ事態の収拾に頭を痛めるガース長官らであった。
海の向こうの真っ白い家、ならぬ大統領のおうちでは
「たく、壁のことでこっちは頭でいっぱいなのに」
と一人ぼやくドランプ大統領。
「アベノ総理の子飼いのバカ大臣がまた何かやらかしやがって。“我が国の政治家がかかわる団体にあろうことか友好国(属国の)ニホン政府からサイバー攻撃を受けるとは国家的危機。こんな時に議会を開かない大統領は無能!このことにこそ、非常事態宣言を”って、こっちまでとばっちりだ」
ブツブツ言いながら暖炉の薪をくべる大統領。そばには家族どころかペットすらおらず、聞いているのは部屋に置かれている歴代大統領の銅像だけだ。
「お、俺が一人でこんなに耐えているのに、ビンゾーの野郎はあちこち遊びやがって、そのうえ、こんな厄介な、うん」
鳴っているのはロシアからのホットライン回線。
「ああ、プータンか、あ、あの阿保ビンゾーのとこの侵入騒ぎか、こっちも被害者だ。いや、俺は知らん、あんな犯罪者のような真似をそれもおおっぴらにやるわけないだろう、そこまでバカじゃないぞ」
冗談とも本気ともつかないことを口にするドランプ大統領。
「ええ、ああ、そうだな、これをネタにまた搾り取るか。そっちは南グリル諸島だっけか。こっちに貢がせる金も残しといてくれよ。あ、ドヨタ自動車にニンタチなんぞはアメリカがとるからな」
ニホン企業と領土と金の分割構想を語るドランプ大統領にプータン大統領が水を差す。
「え、シュー主席やドイツのメルメルも被害者?賠償がわりにニホンの会社か金をよこせって。うわ、本当にあたりかまわず侵入か。それほど無知無能なのか、ニホンの総務省は。はあ、ネット社会でどこがどうつながってるかわからないのに、迂闊すぎるだろ」
まさに“ネット上で、匿名で暴言吐いたら、相手が怒り裁判沙汰、情報開示されたら取引先の関係者でした、懲戒免職に離婚、金も家族も仕事も失いました”という都市伝説を地でいくニホンの総務省。せめて内閣調査室で秘密裏にやればいいのに、さすがというか、やはりというかオツムはアベノと同程度と、ドランプ大統領はニホン総務省の面々をあざ笑っていた。
「インドやブラジル、イランもねえ。カッコクレンの議会で抗議するか。それとも個別にやるか、もちろん連携はするよな。安心してくれ、へんな侵入はしない」
ま、侵入してもニホン総務省のせいにできるしな、とニヤニヤするドランプ大統領。(これでノンデル平和賞の推薦状もFFTA交渉も思いのままだ)と、ドランプ大統領は、久しぶりに機嫌よく話をつづけた。
「はあ、はあ、ようやく何とかしのげた」
緊急謝罪記者会見を開き、マンゲツ記者ほかフリー、外国人特派員でさえ“遺憾に思う”の連発でなんとかしのいだガース長官。が、さすがに今回はかなり落ち込んでいた。
「遺憾だけでは通じないだろう、被害にあったという個人、企業、国に補償、その交渉からして大変なのに、賠償金の金額やら。しかし、下手をすれば外交問題に。ああ、頭が、胃が」
と、あちこちに手をやるガース長官。
「そ、そうだ今こそロシアンティーで温まるぞ」
と、ポットに手を伸ばすと
「す、すっかり冷めて」
ティーコゼーをかぶせるのも忘れ、何時間も放置していたティーポットはすっかり冷たくなっていた。
「こ、これではアイスティー、いやもう一度温めて、ジャ、ジャムを」
と、瓶をよく見ると
「メイド、イン、コリア。あああ、韓国の例のイチゴのジャムだと!そ、総理、なんでこんなものを」
おそらく土産を買い忘れ慌てて手に取ったのだろう、ロシアにあるからロシア産だろうと原産地の確認せずに買ってしまったのだろう。うっかりものによくある失敗である。
「冷めた紅茶にロシア土産の韓国産イチゴジャムとは」
一気に米俵ほどの重い疲れがのしかかるガース長官であった。
ロシアンティーにはジャムをいれるということですが、ある程度糖度の高いものであればイチゴでなくてもいいような気がします。
個人的には甘くしないでピロシキをお茶請けにしたいですね。