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No.8




 No.8




 センチュリアの町に入り。先ず奴隷館に向かい。そこで奴隷となった男性を引き渡す。

 そこではいくらかの手続きがあっただけであっさりと終わった。

 そこの主人が唐突に出てきて、「当館の奴隷はご入り用ではないですか?」等と言った話はないし。美少女な奴隷や曰く在り気な奴隷との邂逅もなかった。

 その男性の奴隷金の半分を貰って、アルヒロともそこで別れた。

 実はあの村で起きたことは夢だったんじゃないかと言うくらいに、本当にあっさりとした終わり方であった。


 「ここからは一人か……。宿は向こうにある地域が、少し割高だが良質な宿だって言っていたな」


 アルヒロから聞いた情報で、まず宿の確保をすることにした。が、歩いているとやけに人の目線が自分に集中することに気がつく。


 「なんかおか、ああ、服か。どこかで変えた方がいいな」


 自分の着ているスーツが目立っていたようで、急遽宿の前に服の調達をすることにした。

 通りを歩いている人に服屋を知らないかと尋ねるが、誰も言葉が通じない。


 「くぅッ……言葉が通じないって辛い」


 通りすぎる人に話しかけても困惑した表情を見せ、すぐ立ち去ってしまう。

 幾人かに話しかけた後、アルヒロが冒険者か魔法使い。もしくは貴族や商売人関係は言葉が通じると言うことを言っていたのを思いだした。

 俺は鑑定を使い。早速探しだしたが、冒険者の連中は情報欲しければ金を寄越せと、強かな要求をして来て。持っていた銅貨ぽいっモノを一枚手渡すも。

 「向こうに行けばあるかもな」とか。

 「あっちの方角にはある」とか、ふざけた回答しか言ってこない。

 これは駄目だと思い。魔法使いと貴族は見かけなかったので商売人を探す。特に露店を開いている者から商人と言う職業持ちを見つけたので聞き込みをする。

 ここでも幾らかの出費があったが、冒険者のようなふざけた情報を寄越してくることはなかった。


 「こっちは信頼と信用と言う意味をきちんと理解してるな」


 冒険者の連中はどうも自分がいま得するならば後の事など知ったことか、と言った考えがあるらしと、露店の人から教えて貰った。 

 逆に商売人の人達は一期一会を大事にする人達が多いようで、こちらはそれに見あったモノを出せば、きちんと同等のモノを返してくれる。


 「服屋は新品なら向こう。古着ならこっちか」


 聞いた話から先ず古着屋から見ることにした。収入が無い今は、出来るだけ抑えたいからである。

 古着屋に到着。服が店頭に飾られてると言うことはなく。全部店の中にあった。


 「盗難防止かな?」


 治安が良い所ではないと無人で置いとくことなど出来ないかと、ここの治安のレベルが日本とは違うと言うことを知り。気を引き閉めることにした。


 「いらっしゃい。アンタのような人が来るような所とは思えないけどね」


 やる気の無さそうな感じで話しかけてくる男性店員。

 多分この服を見て、何処かの金持ちが来たと思ったのだろう。

 取り合えず一般的に買われる服で、奇抜でない服装はあるかと尋ねる。


 「その辺にあるのがそうで、全部同じ値段だよ」


 山となってる服を指差す。


 「二着分。上着。ズボン。上下の下着も込みで、ここだといくらになる?」


 聞くと店員は暫く考えてから「640リーエン。銅貨六枚と鉄貨四枚」と答えた。


 「ひとついくらだ?」

 「100リーエンだよ。銅貨一枚」


 8×100=800

 800×0.8=640


 値引き効果20%減少の効果は効いてる。

 しかしひつと百で、どうして四十と言う数字が出てくることに疑問に思わないのか、甚だ不思議だが。向こうは疑問にも思わないようだ。

 それともうひとつ。俺が持っている銅貨と銀貨のほかに、鉄貨と言うのが在ると言うことが分かったこと。

 奴隷館の所では銀貨を十枚渡され。その時に金貨でなくて言いかと聞かれたから、金貨が在ると言うのは分かってたが、その下の貨幣数がどれだけあるかと言うのが知らなかったからな。それが少し分かっただけでもありがたい。


 取り合えず良さそうなものを選んで買うことにする。

 そして探しているなか。


 「おおっ!? これカンフー服に似てる! これにしよう! 黒! 黒色はないか!? アッチョー! の人とお揃いにしよう!」


 服の山からカンフー服ほい物を二点選び。そして下着類も丈夫そうなものを選んで店員に持っていき。


 「銀貨しか無いがいいか?」

 「釣りが多くなるよ」

 「構わない」


 清算後青銅貨と呼ばれる青っぽい丸いコインが九枚。銅貨が三枚。そして鉛色の丸いコインを六枚受け渡された。

 どうやら銀貨が万の位で。青銅貨と言うのがあって。それが千の位。銅貨が百の位で。鉄貨が十の位のようだ。

 そして貨幣の呼び名が『リーエン』で計算の仕方が十進法が使われて要ると言うことだろうか。

 買った服はここで着替えさせて貰い。着ていたスーツを店員にこれをいくらでなら買う? と尋ねると。


 「うーん、悪いけど、こいつはうちでは引き取れないね」

 「物が悪いか?」


 オーダーで作った二十万近くはしたスーツなんだけとな。最も今じゃぶかぶかのスーツとなったけどな。


 「逆だ逆。うちじゃ良すぎて金が払えない。買い取って欲しければ、上町に行った方がいいよ」

 「上町?」

 「アンタらはそう言わないのかい? アンタらみたいな金持ちが住む様な地区のことさ。ここの住民が住む地区を中町。外から来る奴ら用の地区になると下町って呼ばれてるよ」


 なるほど。地区によって住み分けがされてるのか。


 場所は店員から聞き、礼を述べる。

 そして服を入れる為のバックも買ったが、こちらは二割引の効果は無かった。


 「複数品買わなければ効果がないと言うことか……」


 残りの金額が銀貨が十枚に青銅貨が八枚。銅貨が十枚以上に鉄貨が二枚。十万八千ほにゃらら二十円と言ったところか。物価が高いのか安いのかまだ分からないところだが、どちらにしても心持ともないな。

 しかし何気にバックが一番高かった商品だった。こっちに値引き効果を働かせればよかった。




 その後は上町にあると言う服屋を目指す。

 一度スーツが幾らくらいで売れるかを確認するためである。


 安く買い叩かれるようなら、タンスの肥やしとしておこう。


 場所はいくらか迷ったが、目的の場所に着けた。

 中に入ろうと思ったが、門構えから高級感溢れる場所のため少し躊躇する。


 「こんなところでスーツを買い取ってくれるのか?」


 不安もあるが駄目なら駄目だと、意を決して扉を開ける。


 「いらっしゃいませ。本日はどの様なご用件でしょうか?」


 開けると待ち構えていたかのように、店員が近寄ってくる。

 服装から店に合わないから出ていけとかは言われなかった。


 そこまで高級店と言う訳じゃないのか……。


 俺は店員に古着となるが、服を買って欲しいことを告げる。


 「どの様なお召し物でしょうか?」

 「これなんですが」


 バックからスーツの上着を先ず取り出すと。


 「これは……!? 大変仕立ての良い物でございますね。大変申し訳ございません。きちんとした確認を致したいので、あちらまで宜しいでしょうか?」


 スーツの出来があまりにも良すぎると言うことで驚く店員。勧められるままに店内からは死角となっている商談スペースへと案内される。

 そこで上下スーツにネクタイ。Yシャツの四点を見せる。

 店員は上着を手に取り。「『特技(スキル)・其の秘めし物の源の、価値あるモノをここに示せ・《物品鑑定》』」と呟いた。


 「これはッ……!? 仕立ての良い物だとは分かっていましたが、改めて驚きました。スキルによる製作で作られた物ではなく。完全なる手作業による品物なのですね」


 機械も使ってるから全部が全部手作業ではないと思うぞ。

 しかし今の言葉は鑑定系の能力か? 物品と付いていたから品物しか鑑定できないタイプか?


 いまいち理解できないが、自分が持つ鑑定とはまた違うのかと考えるも、今はその事を頭の隅に留めることのみにした。


 「……悪いものですか?」

 「とんでもございません! 今時の品物は全てスキルによる製作のもの。お陰さまで個人に合わせて作ると言う手間が無くなりました」


 個人に合わせる? つまりサイズフリーと言うことか? それでも体の大小の違いが出てくると思うが。


 「こうした手作業のモノは装備品の効果が付かず。個人専用となってしまうため、その体格に在った方以外は着られなくなってしまいますが、しかしこうしたモノが良いと言う方もいらっしゃいます。

 しかもこちらは手作業であるにも関わらず、縫い目もしっかりとしていて、生地をきちんと生かしきれた作りとなっております」


 ??? いまいちよくわからんが、例えるとあれか。RPGで装備品をパーティーメンバー内で着回ししても、現実だったらサイズが合いませんから着れませんとかそう言うのがなく。誰でも着られるシステム的なモノがあるのと?


 もしこの考えが正しければ後で試せばわかるかと、今は黙って聞きに徹することにした。


 だけどもしそうなら、ファンタジーの世界と言うよりは、本当にこの世界はゲームに近い世界となるんだよな……まっ、今さらか。


 「それでこちらの品は幾らぐらいで買い取って頂けますでしょうか?」


 店員の説明を聞き覚えておく。だが問題はこのスーツが買い取って貰えて、尚且つ幾らに為るかだ。

 店員はスーツをよく見。そして考える。


 「……そうでございますね。手製の品と言うことも考え、こちらの品ーーー」

 「今こちらから手製の品と聞こえたが、この店には手製の品が置いてあるのか!?」


 商談の最中、目隠し用のパーティションを無理矢理開けるようにして入ってくると、豪華そうな衣服を身に纏った、相撲取りのように体格のいい男が乱入してきた。

 その男はこちらを気にすること無く。テーブルの上に置いてあったスーツを手にする。


 「ほうぅ、見事な手触りだ。気に入った! これをもらっていく」


 そう言って小間使い風の首に首輪をした男にスーツを手渡し持ち去ろうとする。


 「お客様!? お待ちください! それは私どもの商品ではございません!」

 「なに? ではなぜここに置いてある」

 「そちらの品はこちらのお客様のご相談の品でして……」


 持ち去ろうとしていた男を店員さんが慌てて止め。事情を説明すると、やっと男は俺の存在に気がつく。

 そして胡乱げな表情でこちらを観察した後、鼻で笑い。侮蔑した表情で。


 「貴様のような凡夫がなぜこの様な品を持っているかは問わん。これを俺に献上せよ」


 超上から目線で寄越せと言ってきた。

 店員さんは止めに入りたいが、相手が身分の高い相手なのだろう。強く言い出せず。おろおろしている。

 俺が黙っていると男は肯定と取ったのだろう。去ろうとしたので。


 「相手の了承も得ず。持ち去ろうとするのは泥棒とならないのでしょうか?」

 「なに? 俺を賊呼ばわりするか!? 貴様ッ!」


 相手が興奮した様子でこちらに振り返る。そんな相手に俺は平静な面持ちで、相手を諌めるような言葉を言う。


 「まあ、泥棒呼ばわりしたのは謝りますが、そう思われても仕方がない行為を今、貴方は為されたのですよ」

 「どう言うことだ? 何も言わなかった貴様は、これを持っ行っても良いと言うことであろう」


 幾分落ち着いた様子だが、まだ興奮気味の男。

 そんな男の行為を俺は順を追って話す。


 「私がここへ来た理由は金策をしに来たと言うのがひとつです。その服を手放すのは少々惜しいですが、無い袖は振れない身分。売ってお金に変えようとした矢先。商談中にも関わらず貴方が乗り込み。私の了解も得ず。金銭も払わず。持ち去っていく。これを泥棒と言わずなんと言えば良いのか、私の語彙少ない知識では浮かばず。適切な言葉があれば貴方に教えて頂きたいのですが?」

 「ーーーッ!」


 かなり慇懃無礼な言葉で言うと、相手は苦虫を潰したように押し黙る。

 そして顔を真っ赤にして怒り出す手前で更なる言葉を言う。


 「まあ、と言うような理由はさておき。スーツ(それ)が欲しいと言うのであれば、買い取って頂ければ構いません」

 「ならば始めにそう言えばよかろう!」

 「聞かずに行動をしたのは貴方です。これが高貴な身分の方達の間であれば、貴方の行動は一体どう思われていたでしょうか?」


 俺にやり込められて憤怒の表情。店員さんは頭を抱えこちらを見ないようにしている。


 さて、これ以上やると「手打ちにしてくれる!」とか言われたら敵わないからな。もうやめておこう。

 しかしこれで激怒か……。商社マンならいくら腹に据えても、顔には絶対出さないんだけどな。日本人の精神力が高いのか。こいつが低いのか。

 それと……なんで面倒事を避けたいのに、俺はこいつをこんなに煽ったんだろうな?


 自分の予想外の行動に首を捻り。疑問を浮かべている間に男は怒り狂い俺を害してくるかと思ったが、予想よりも精神耐性が高かったようで、その間に荒い息で深呼吸して、平静を保っていたようだ。


 「ふっー。ふっー。ふっー。はあああぁぁ………貴様の物言い。頭に来る部分はあるが、俺にも非があった。それは認めよう」


 おや? この手のタイプの奴が、自分の過ちを認めるなんて珍しいな。この手の奴は強引に自分の意思を押し通すかと思ったが。


 「貴様のようなさもしい者に俺が施してやる。述べよ。幾ら望む」


 自分が上に立てる状況になったら再び上から目線。


 こう言う男は懲りるとか。反省するとか。そうした考えはきっと無いんだろうな。


 「スーツ(それ)が幾らなのか。それは私にも分かりません」

 「むっ? 貴様が望む金額を述べるだけであろう。さては、俺が貴様の望む金を払えぬと思っているな。金貨であろうが、白金貨であろうが払ってやろう。さあ言え!」

 「それでは私が得をするばかりで貴方が損をするでしょう」

 「貴様が得をするのであれば問題なかろう?」

 「それは私が望むべき結果ではありません。双方、いえ。この場合は三方両得な方法を取るのが良いでしょう」

 「三方だと…?」


 不正やら流失やらで相手から信用がなくなるような決して行為はするなと、さんざん言われてきた。

 そして自分が損をするのはそれは勉強不足と思い。それを甘んじて受け入れろ。そして次は絶対に無いようにしろとも言われた。

 ただし会社に損害を出すな。そして出来るなら利益を出せともな。

 だから敢えて自分自身だけが得するような行為は取らない。

 相手はバカなんだから黙って受け取っておけよこの間抜け。や、お人好しと、言われるかも知らないが、これが俺だ。変えようもない。


 「ここは専門家の意見を聞くべきでしょう」


 そうして、今だ頭を抱え震えている店員さんを見る。

 店員さんは自分に意識が集中すると「へっ?」と、言うような驚いた表情をする。


 「私自身。価格が適正であるならば売る覚悟です。そして高いものだけが価値あるもの、では無いと言うことは貴方も分かる筈。であるならば安く。良いものが手に入れられるならば、それに越したことではないでしょうか?」

 「むぅ……確かに」


 あ、これは高いものがすべて良いものだとしか理解してない奴の顔だ。

 高いモノには高いなりの理由があるんだよ。生産が極端に少ないとか。商品にするまでのコストがバカ高いとかな。

 だから高いものイコール良いものとは限らない。安くても良いものは沢山ある。

 まあでも、俺としてはそこに何かの価値を見いだしたなら、高い安いなんて価格(モノ)はその人が良ければ良いんじゃないかと思う。


 「なら私達の間に諍いはなくなりました。後は貴方はこのスーツ()をこちらの店から買い取れば良いだけだ。それをするだけで貴方は良識ある人だと、他者から称賛されることでしょう」

 「で、あるな。よし! お前! これはいくらだ?」


 俺の言葉に頷き。直ぐ様店員に聞く男に、俺は再び待ったを掛ける。


 「なんだと言うのだ? もはや値段を聞き後は私が買い取れば済む話なのだろう?」

 「まあそれはそれで良いのですが、ここはこのスーツ()を私が幾らで売ったのか。そして貴方がこのスーツ()を幾らで買ったのか。互いに知らないようにしたらどうでしょうか?」

 「それになんの価値がある?」

 「こうすることで私と貴方の金銭の差額を知らないで済みます」

 「ん? どうゆうことだ?」

 「そうですね。例えば私はこのスーツ()を金貨一枚で売りました」

 「ずいぶんと安く売るものだ」

 「今の私としてはそれだけでもありがたいことなのですが、その話しは置いておきましょう。

 そして貴方はこのスーツ()を金貨十枚で買われました」

 「まあ、まだ安いと俺は感じるが、安く済むのであればそれに越したことはないのであろう」

 「ええ、互いに納得できるのであれば結構なのですが。ここで一番に特をしているのが店員さんです」


 俺の言葉に店員さんが「私?」と言うように、呆けた顔をする。


 「なに?」

 「なにしろ元手はタダ。買ってくれる人もすぐ現れた。店員さんはこのスーツ()を買い取った金貨一枚の損をしましたが。すぐに金貨十枚で売れました。その差額から店員さんは金貨九枚の得をいたしました。もちろん商売人である以上儲けることは当たり前。

 しかしながら元手タダで手に入れた品から金貨九枚の儲けは、売った方も買った方もいい気分にはならないでしょう」

 「確かに。貴様そんなことを策謀していたのか!?」

 「いえ!? 私はそのような考えは微塵も……」


 俺の例え話に怒り出す男。


 以外に単純なやつなんだな。


 「落ち着いて。例え話です。ですがそうと分かると気分が悪くなりますでしょう?」

 「当たり前だ! その様な店、二度と来る気には起きん!」

 「ですので、いまこの場で、互いの金銭の売り買いの額を聞くのは止めましょうと言う話です」

 「なるほど。それならばわかる話だ。だがそうなるとこの男が、いまの話のように自分一人儲けていると言うことにならないか?」

 「なるかも知れませんし。ならないかも知れません。なにしろ私達は互いの金額を知らないのですから。知っているのはこの店員さんだけ。そう思えば怒りも出てこないでしょう?」


 俺の話しに男は考える。そして暫く黙ってから店員さんを睨み付け。


 「貴様……わかっていような?」

 「はいぃぃぃいいい!!」


 脅しに入っていた。


 気が小さそうな人だから止めてやれ。等と思っても口には出さないけどな。まだ交渉は続くんだから。


 「では、三方ご納得いただけたようなので、私は商談の続きをさせていただきます。貴方は、そうですね。そのスーツ()には飾りっ気がないので、それに見合う装飾品を選ばれたらどうでしょうか?」

 「おおっ! そうか! ならば俺は貴様の助言を聞き届け。この服に見合うものを選ぶとしよう」


 男はそう言って小間使いの男と共に店内の装飾品コーナーへと向かっていった。


 「あのぅ、私、了承してないんですが……?」

 「おや? 貴方が一番得となりうるこの商談を不意になさるおつもりで?」

 「それをしたら店の信用がなくなってしまいます!」

 「それは先程のように買い手が居たらです。居ない今。貴方がこのスーツ()を幾らで買い。そしてあそこの人に幾らで売るかなど貴方だけが知っていれば済む話し。さて、もう一度お聞きします。()()()()()()()()()()()()()()?」


 俺は笑顔で店員さんに問う。

 店員さんは脂汗を欠きながら目を泳がせ。必死に考えている。


 お人好しと言われる俺だけど。交渉は大分揉まれたからな。多少これぐらいはやらせてもらう。

 しかし交渉になれていない人にこれはやり過ぎたかな? でもお陰で胸がスッとーーーああ、そうか。そう言うことか。


 自分が何故、交渉の素人相手に強気で押していったか今わかった。

 俺は()()()()()()()

 訳もわからずいきなり異世界。ファンタジーもののひとつの定番とは言え。パニックの状態であれこれ必死に考え。ご定番の盗賊退治を、初めての人殺しをさせられ。まあ村でのお礼とかもあたふたしたがあれはあれで……。そうして、いつもと同じような交渉に入った時に思わぬ邪魔。自分でも知らずに溜まっていたストレスが爆発した、と。


 この店員さんが一番割に合わないとばちっりだったな。そうだな。最悪銀貨レベルの値段でも売ることにするか。














「うへぇ~…管理人さん。もうお話始まってるよ…」

「あら? もうそんな時間だったのね。こちらではそんなに時間が経たないからわからなかったわ」

「……ずっと自分のすごさを語られた僕は疲れたよ……」

「今回は『お金』『交渉』がメインの話だったわね」

「あれ交渉なのかな?」

「あれも交渉よ。そうした技術がこの世界ではまだ未熟と言うだけでね」

「なるほどね。次回は11月11日に更新されるみたいだよ」

「今日は短いわね。まあ良いわ。じゃあまた来週」

「「ばいばい~♪」」

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