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No.3




 No.3




 『管理人』と呼ばれる人物に、名も無き異世界に呼び出された百余名の地球出身者達。

 その中の一人。二メートルを越える身長に筋肉ムキムキなマッスルボディ。

 運動や格闘技を得意とするような体のわりには、趣味は漫画やアニメと言ったインドアなオタクな趣味を持つ独身社会人。神崎統真(カンザキ・トウマ)

 彼らは『管理人』から自らの(願い)を叶える為にスキルなる力を授かる。

 そんな中トウマは、そんなスキルを漫画やアニメからの傾向で深読みし、自らの(願い)ではなく。与えられた能力()を操る設定(もの)へと選んだのであった。

 だがそんなスキルを選んだトウマであったが、選んだスキルを使ってみると。何となぁ~く、微妙なスキルであった事にがっかりした。

 しかも決めた以降は変更も出来ないと知り。気分が更に落ち込み。そんな気分を変えるため、子供の頃に習った天地武神流なる名前の謎の気功術の呼吸法をとる。

 するとなんと不思議なことに、己の内から摩訶不思議な力が沸き上がってくるではないか。

 トウマはその力を何であるかを瞬時に理解する。

 それは己が子供の頃より放送されているアニメ。『竜の勾玉』の主人公が扱う『気』と呼ばれるエネルギーであると。

 子供の頃から憧れ。いつか使ってみたいと思っていた超パワー。

 そんな超パワーをトウマは、そのアニメの主人公が使う必殺技を己の内から沸き出る『気』()を使い。出来るかどうかを試す。

 結果はまさに。アニメと同じ現象が起きたのであった。

 トウマはそれに感無量と咽び泣いたのが、前回の話である。

 そして『気』が扱えることを知ったトウマは、と言うとーーー。


 「いっっっっっやっほうううううううううう!!!!」


 己の体に『気』を循環させ。その力の様を実感するように果て無き道(草原)を爆走していたのであった。


 「すごい! すごいぞ!! これが『気』の力か! 五キロ以上全力で走っているのに、全く疲れる気配がしてこない。それにーーー」


 トウマはホップ。ステップ。ジャンプと跳ね上がると、高く。高く飛び上がっていく。

 五十メートルは優に越えているであろう。


 「高い! そして着地をしても全く衝撃を感じない! すごい! すごいぞ! 『気』の力! わっはっはっはっはっ!」


 『気』が扱えることを知ってからトウマは、ずっとハイテンションのままだった。

 道無き道を走っていくトウマ。そんな彼の目に、遠くで村の様な場所から黒煙が上がっているのが確認できた。


 「火事か……いや、なにか違う気も……」


 所々から黒煙が上がっていることから一般的な火事ではなく。戦場で見られるような所々から火の手が上がる火災の様にも思えたのだ。


 「まさか!? これはいかん!」


 ファンタジー漫画でお馴染みの村が何者かに教われている。そう判断したトウマ。

 テンション上がりっぱなしで、普段なら絶対に出もしない正義感が、この時ばかりはアドレナリン全開と共に湧き上がってきた。

 全力ダッシュで駆けていくトウマ。

 いまだにその高いテンションは下がる気配すら見せなかった。


 「いまいくぞおおおお!」




 ☆★☆★☆




 「準備を急ぐのだ!」


 初老に差し掛かった男性が声を張り上げ周りに要る村の者達に指示を出す。

 その男性の指示に従い。村人達は右往左往しながらも懸命に動いていた。


 「……なんとか間に合いそうだな」


 村人達の動きを見ながらそう呟く初老の男性。

 村のあちこちには櫓が組まれており。そこから火の手が上がっている。見方によってはキャンプファイアの様にも見えた。


 「村長、これで雨が降ってくれるんでしょうか?」

 「……呪い師が言うにはこれで良いそうだ」

 「降ってくれると良いですね」

 「そうだな……降って貰わねば困る」


 ここ最近この村付近では雨量が減り。その為か井戸の水が減り始めていた。

 このままでは飲み水が確保できなくなり。村人の生活がままならなくなると。初老の男性、村長は呪い師に雨を降らすことは出来ないかと相談を持ちかけた。

 そこで呪い師から大量の木々を使い。火を起こし。雨雲を呼ぶ儀式を教えてもらい。それを試していた。

 しかし今度は呪い師や大量の木々を買うのに大金を使った為、村の財政が圧迫してしまったのだ。

 村の為に使った金だ。成功すれば良いだけの話。だがもし失敗でもしようものなら。

 村長は、村長としての責務を果たせなかったと言うことになり。その責任を取らねばいけない。

 それがどんな責任の取り方か、初老の男性は考えたくもなかった。


 「……失敗など、ありはしない!」


 これからも自分がこの村の守り続けていくのだからと、その言葉は飲み込み。儀式の最終段階へと入った。

 ーーーその時。


 「大丈夫かああ! 何があったああ!」


 村の入口からこの村では自分ともう一人以外は話すことはない。アブラクト語。

 そんなアブラクト語の話者の男の大きな声が響き渡った。

 何事かと皆が思いそちらを見ると、見たこともない服装を着た大柄な大男が村の入口に居たのであった。

 大男はあちこち見回してから。


 「むっ!? 火事のほうだったか! 早く消さねば! 皆火の手から下がれ!」


 そう大きな声を出して指示をしたのだ。


 「ま、まて! これは火事ではなくーーー」


 村長は大男が勘違いして火を消そうとするのを止めようとする。

 そう、本来はこの言葉を聞けば、消火する前に止まることが出来たのであろう。

 だがしかし。

 テンションアゲアゲ。上がりっぱなしの大男(トウマ)には、その言葉が耳に届いてなかったのだ。

 大男(トウマ)が独特な呼吸法をすると。その体がうすらぼんやりと発光し出した。


 ーーー天地武神流・気功闘法術・竜翔波ーーー


 大男(トウマ)の口から発せられた言葉と共に、大男(トウマ)の手が下から掬い上げるように天へと打ち上げられた。

 すると魔法を使ったかのように大男(トウマ)の近くにつむじ風が起こり。それが大きな渦を作って竜巻へと変化していく。

 竜巻はまるで意思在るかのように、組まれた櫓に向かって行き。櫓を破壊しながら煌々と燃え上がっていた火を根こそぎ消し去って行ったのであった。


 「…ああ……あああ、儀式が………雨乞いの儀式が……」


 男性の村長としての運命も賭けた大一番(儀式)

 その苦労と労力の結晶が、何処の誰とも知れない男に無惨に壊されていくのであった。

 壊されていく櫓は竜巻の力で天へと上がり。残骸と化して地へと落ちてくる。

 初老の男性はそれを呆然とした姿で見ることしか出来なかったのであった。


 「よし! 消火完了!」


 全ての火の付いた櫓の消火をし終わった大男(トウマ)の表情は、やりきった男の顔をしていたのであった。




 ☆★☆★☆




 「どうしてくれるんだ!」

 「あ、いや、その……」

 「お前が余計なことをしてくれたお陰でこの村が! 村長としての私の責任が×●¶※☆◎!!」


 途中からヒートアップしていく初老の男性の言葉は、未知の言語と化していった。

 消火し終わったあと、初老の男性がトウマに烈火のごとく怒りを顕にして詰め寄り。トウマに文句を言ってきたのだ。

 幸い男性は言葉だけでトウマに暴力的なことはして来なかった。本当は一発くらいトウマを殴りたかったに違いない。

 しかし近寄るとトウマの体のデカさに驚き。もし反撃されたらどうしようと、少しばかりそんな考えが過り。殴らずにいたのであった。

 そしてここに来て漸くトウマは、


 もしかして俺は何か不味いことをしてしまったんだろうか? 


 と感じ。ハイなテンションが急速に収まり。通常のテンションに戻っていったのである。

 トウマに怒り心頭を顕にしていた男性は息が上がり。怒りで血圧が上がったのか倒れてしまう。

 それを他の村人が介抱すると、初老の男性より十歳くらいは若い。一人の男性がトウマに話しかけてきた。


 「¶※▲〓◇¶※」

 「はあ? なんだって?」


 トウマが今まで生きてきて聞いたこともない言語が、その男性の口から出てきたことに驚きの声をあげる。

 男性はトウマの言葉に何やら納得するように頷くと。


 「失礼しました。アブラクト語の話者のお方でしたか。私はこの村で商いをしているアルヒロと申します。倒れてしまった村長に成り代わり。この村でしていたことのご説明をしたいのですが、宜しいでしょうか?」


 突然に丁寧な言葉で話しかけてきた男性に面を食らったが。今は落ち着いたテンションのトウマは、この村で何か催しをしていて、それを自分がぶち壊したと言うことは自覚していた。


 「私が何やらこの村の催しものを台無しにしたようで、申し訳ない」


 男性に対して説明の前に謝罪をするトウマ。そんなトウマに今度は男性の方が驚きの表情を見せていた。

 しかしその表情もすぐに引っ込め。この村で起きていた現状としていたことを話す。


 「本当~~~に、申し訳ない事をした!」


 秘技ジャンピング土下座。と言うようにその場で飛ぶように跳ねてから座り込んで頭を下げるトウマ。

 そんな土下座するトウマにどよめきの声をあげるは村人達。


 「我々のような平民にその様なことは、頭を上げてください」

 「いやそう言うわけにもいかない! どんな理由があれ。私があなた達の催しものを壊したことは事実なのだから」


 トウマが誠心誠意謝っていることを理解した村人達は、その謝罪を受け入れ。もう十分だからとトウマを土下座から立たせたのであった。

 そうして改めてこの村で行っていたことをトウマに語った。


 「雨乞い? こんな晴れた日に?」


 空は晴天。雲ひとつもない青空が広がっている。


 「この儀式をやれば雨が降ると呪い師が教えてくれたそうです」

 「いや、確かにいつかは雨が降るでしょう。ですがその方法で雨を降らせるのはかなり難しいと思いますよ」


 火を炊き上昇気流で塵を巻き上げ。上空の大気を不安定にさせればなんとかなるだろうが。それでもこの晴天の空の下で雨を降らせるとなると、山火事レベルの火が必要ではないだろうか?

 トウマは儀式をしていた村人にこの量の焚き火では儀式によって雨が降ったと言うよりは、自然によって雨が降った言ったことを説明すると。


 「それでもよかったのです。雨が降ってくれさえすれば……」

 「そうですか……。時にここの井戸はどこかの川の水か湧き水を利用しての井戸ですか?」

 「はい。山のから流れる水がこちらにも恵みを与えてくれているようでして。それがちょうど一月ほど前でしょうか。『地の怒り』が在りまして、そのとき以来雨もなく。水量が減っていき……」

 「地の怒り? それはどの様な?」

 「あの時は今まで感じたことのない。激しい地の揺れを感じました」

 「ええっと、それはこう。グラグラっとした感じてしたか?」


 トウマは自分の体を揺らすようにする見せると、まさにその通りだと男性が言う。


 「地震か。となるともしかして地中のどこかで、水源との道が塞がったのかな?」


 雨が降る降らないはともかく。自分が潰してしまった儀式。これをどうにかしてあげられないかと思い悩むトウマ。その脳裏に漫画知識から思いもよらぬ発想が生まれた。


 「そうだ! 『気』で相手を探るって言うのが出来るんだから、物でも出来ないだろうか!」


 そう思い至ったら行動が早かった。

 先ずもしかしたら自分がなんか出来るかもしれないからと男性を説得。

 そうして説得が完了すると。次に水量が減った井戸へと案内してもらい。井戸の底を確認。


 「大分底が見えますね」

 「このままでは村に水か行き渡らなくなってしまいます」

 「よし。やってみるか!」

 「あの、本当に大丈夫なんでしょうか?」

 「確証はありませんが、出来る気がします」


 任せてください。と、笑顔で語るトウマに男性は一抹の不安を覚えたが、この村に後がない以上はやって貰うしかないと考える。だがーーー。


 「やって頂けるのはありがたいのですが、この村にはあなた様に支払うだけの金銭は無く……」

 「いやこれは私が潰してしまった儀式の代わりです。何かを求めるつもりはありません」


 トウマのその言葉に何処かホッとした表情を見せる男性。


 「ではやりますので、離れててください」


 トウマの指示で数歩下がっていく男性。

 ある程度下がったところで、どの様な事をして水量を確保するんだろうと見守っていると。トウマは目を閉じ独特な呼吸法をやり始めたのだ。

 初めは魔法を使うための儀式的なものかと思っていたが。しかしトウマは魔法に必要なある()()を一行に使わないので訝しんだ男性。

 そして声をかけようとしたその時。


 「見つけた!」


 目をカッと見開いてある方向を見つめるトウマ。


 「水量が減った原因を取り除いてきます」


 それだけ言うとまるで突風が吹き荒れたかの様な風が巻き上がると、そこにトウマの姿は無かったのであった。

 そうして暫くすると、一月ほど前に起こった程ではないが地の揺れを感じた。


 「まさか!? また地の怒りが!?」














「は~い。こんにちは。私は『管理人』です。やったわ! 言質取った次から欄外だけど出番もらえました!と言うわけで! これから私と」

「本来僕がここの話に出てくるはずだったのに、「君じゃインパクト弱いから無しで」と、作者()に降板させられた。名も無き小動物が雑談話をしていきます」

「あら? あなた名前は決まってたそうよ」

「え? そうなの!? 何て名前!? カッコいい!?」

「カーバンクルって聞いたわね」

「おおっ! 有名なあれだ! 僕の姿がトカゲ型に額に宝石があるからだね!」

「いえ。なんかカレーが大好きな。黄色いウサギのような存在から取ったそうよ」

「なにそれ!?」

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