No.21
No.21
「はんにゃらはらはらうんはった。うんけんぱらりんたらさいぱぁ」
護摩壇のようなものの前で一心不乱に呪文らしきものを唱えるオババ。
「どんぺりくらくらたかかったー!」
木屑のようなものを投げ入れると、ボッと火の手が舞い上がる。
火の手の向こう側には横に寝かされている数人の者達。
その誰もに体に黒い模様が浮かんでいる。
中には体の半分ほど黒く染まったものも要る。
オババは必死に祈祷を続ける。
「ぽんぴんぱらりや。いってちょー! はいやー! はっ! はっ! はっ~!」
オババは横たわる者達の周りに行き。踊りながら火に投げ入れていた物と同じものを、横たわる者達に掛けている。
「……どうだオババ。治りそうか?」
後ろで見守っていた村の者達。その中から代表して俺が儀式めいた行動を終えたオババに尋ねる。
オババは首を横に振り。
「ダメじゃ。とてつもない強い力が働いておる。いまは進行を緩やかにし。死を遅らせることしかできぬ……」
口惜しいと言うように言うオババ。
オババのその言葉に俺はそうかと、何ともやり切れない思いの籠った。溜め息にも似た言葉を吐き出していた。
オババが手に負えないのであれば、あとはセンチュリアの町から来る救援の者が頼りだ。
しかしそれもいつ来るかと。それまでの間一体幾人の村の者が死んでいくのだろうと。絶望に押し潰されそうになりながら、俺はセンチュリアから来る救援の者の到着を待ち望んだ。
しかしその待ち望んでいた声が思ったよりも早く聞くことになった。
「すいませーん! こちらエルタ村ですかー! センチュリアのギルドから来ました! 配達の者です!」
村の入り口の方からアブラクト語を話す話者の者の声が聞こえてきた。
俺はセンチュリア。しかもギルドからの人間と言うことで、飛びようにしてその声の所へと向かった。
村の入り口のところでは、大きな檻を担いだ少年とおぼしき人物がいるだけだった。
「センチュリアのギルドの人間が来たと聞こえたが?」
「ああはい。俺がそのギルドから来た配達の者です」
「配達? 私らが頼んだのは治療士だが」
期待していたモノではなかったと落胆すると。
「ええ。ですから治療士の方を配達しに来ました」
ほらこの通りと、背中に背負っていた檻の中身を見せる。
始めは何を言ってるんだこの少年はと思った。
何よりなんであんなバカでかい檻を背負っているのか不思議だった。
しかしその檻に何かが入っていることに気が付き。よく見ると人だった。
檻の鉄格子にしがみつくようにして、白目を剥いて気絶している男性だった。男性の下半身部分は湿ったような跡があるが、そこは見なかったことにした。
「この人がセンチュリアの町で有名、だと思う。治療士のカルヴァンさんです」
「治療士……っ!? そうか! 治療士を連れてきてくれたのか!」
治療士と言う言葉に檻の男性は何故気絶してるのとか。手紙を出してまだ数刻しか経っていないぞ。どうやってここまで来た? とか。もうそうした些細なことは気にしなくなっていた。
「こっちだ! こっちに病に倒れた者がいる! 来てくれ!」
「カルヴァンさん。だそうてすけど行けそうですか? うーんダメか。途中は平気そうだったのにいつの間にか気絶してんだもんな」
何かぶつぶつと言っている少年に急いでくれと急かす。
少年は檻を背負ったまま着いてきた。
「退いてくれ! 治療士が来た! 倒れた者の治療をする! みんな道を開けてくれ!」
俺の言葉に村の者達が一斉に道を開けていく。
その表情は待ちに待った人物が来てくれた。と言う表情ではなく。
何故檻を背負った少年が来ているのか? と言うような顔をしていた。
そんな村の者達に説明をして要る暇はなく。檻を背負ったままの少年を、先程オババが祈祷をしていた場所。その祭壇場所へと案内した。
「この者達だ! よろしく頼む!」
「……ええっと、生け贄の人達ですか?」
「違う! 病に倒れた者達を村に住む祈祷士のオババに治療を頼んだのだ。だがオババの力ではこの者達を救うことが出来ないと」
「誰が救うことができないじゃ! いまは救うことが出来ないと言うただけじゃ! このオババが本気を出せば治療士の出番なんぞないわ! さあ帰れ帰れ!」
オババが少年を手で追い払うように仕草をする。
くっ!? オババの悪い癖が! オババは祈祷士と言う職業を持っている。祈祷士は祈願。願うことで様々な奇跡を起こす事ができる力を持つ。
それ故なのかは知らないが、自分の領分に近い力を持つ職業の者がいると嫌悪する事がある。
特に今回は自分の力で村の者を救えていないと言うことがある。これでもしセンチュリアから来た治療士が癒すことができたら、オババのプライドがズタズタになると言うことなんだろう。
しかしいまはそんなことより村の者を救うことを考えて貰いたい。
「オババ! オババの力を信用してない訳じゃない。だが今は救える手段は多い方がいい。わかってくれ。今は倒れた者を救う方が大事なんだ」
俺は今は我慢してくれと。オババに頭を下げ頼み込む。
オババは苦虫を噛み潰したよう様な表情をしてから。
「センチュリアの治療士の力とやら、見せて貰うとするのじゃ」
何とも上からの言葉であったが、納得はしてくれたようだ。
俺は少年にずくに治療をと願うが、その少年がオババの方を見て。「……あの人は"赤い人"か……!?」と、よくわからない呟きをしていた。
少年に再度急かすと檻を下ろし。中に要る治療士を外に出そうとする。しかし。
「うおっ!? なんだこの人!? 気絶してるのにガッチリと格子を掴んでる!? 俺の力で引き剥がしても良いけど、下手すると腕とか引きちぎるかも!?」
……なんか物騒な言葉が聞こえてくる。
「……普通に起こせばいいんじゃないか?」
「あ、そっか。待っててください。今起こしますんで。カルヴァンさん! 着きましたよ! 出番です! カルヴァンさーん! 出番ですよー!」
肩を揺するようにするが、その肩が全く動いていない。まるであの治療士は目覚めたら最後、地獄が待っているから起きないと言うような、気迫のようなものが、なんか伝わってきた。
「ヒャッヒャッヒャッヒャッ! センチュリアの治療士も大したことないようじゃのう。待っておれ! このオババが今一度祈祷して、今度こそ病に侵された村の者を救ってやるからのう」
オババは高笑いしながら自分の家に向かっていく。きっと何かしらの道具を取りに行ったのだろう。
しかし困った。せっかく来てくれた治療士は起きない。オババの祈祷も確実に効くとも限らない。このままでは病に倒れた者がまた死んでしまう。
「……あの、そう言えば流行り病って聞きましたが、もしかしてインフルエンザとかですか? 俺って小学生の頃から病気とかした事ないんですっかり忘れてましたが。隔離とかしてなくて大丈夫なんですか?」
「小学生? 病気知らずと言うのは羨ましいな。インフルエンザ? それがどう言うものかはわからないが、この村で流行りだした病はどう言うわけか。常に人数が一定なんだ。一人死んだら次の者が病に掛かり。その者が死んだらまた別のものへと言うように」
「……なにそれ? それ本当に病気? 呪いの類いなんじゃ?」
「……かも知られない。オババは強い力が働いていると言っていた。だがそれが呪いなのか。病なのか我々では判断ができないんだ。だから治療士の者を頼んだのだが……」
その頼みの治療士が気絶していては……。せめて呪いか病かだけでもわかれば。また話は違ってくるのに。
「ええっと、つまり。病気か呪いかわかれば対処は出来るんですね?」
「対処の仕方が分かるだけで、治るかどうかはわからないが、それでもいくぶん希望がある事は確かだ」
こちらがそう答えると少年は何か思案するように考え込んだ。
「……一応、てすけど。俺も癒す力を持ってます。その力を使えば病気か呪いかぐらいは分かるかもしれません」
「ほ、本当かッ!?」
少年の思わぬ言葉に肩を掴み。確認する。
「ええ。ですけどそちらのカルヴァンさん程の力は思いますけど」
「それでもどちらか分かるかぐらいの力があるんだろう!? なら! 頼む! 村の者を! 救う事ができるかもしれない力を! その力を貸してくれ!」
藁にも縋る勢いで少年に頼み込む。
少年は少し躊躇した表情を見たが、最後には力を貸してくれると言ってくれた。
「じゃあ、やってみます。……すぅーーー」
少年が横たわる村の者近くへ行き。何やら呼吸を始めた。すると少年の体が薄く輝いて見えるように見える。
一体何をしたんだあの少年は!? 晶石を使ったわけでも。スキルの句文を唱えたわけでもない。ただ呼吸をしただけで、少年の雰囲気が変わったぞ!?
一体何をして。何を始める気だと戸惑う男。
しかしその戸惑いはその男だけではなかった。
「おい。大丈夫なのか? 任せて……」
「……わからん。だが今は任せる他ない」
何をするのか分からないが、どうか村のみんなを救ってくれ。
男は祈るように少年の行動を見守った。
そして。
「よし! 『気』で回復する! これ、もしかしたら呪いじゃなくて病気かもしれません!」
少年の言葉に村の者達が歓声を上げる。
男は治療する少年の側に駆け寄る。
そして後ろから少年の治療する行為を覗く。
少年の体が薄く輝く。手を原因不明で倒れた村の者に向けている。その手から輝きが村の者の体に渡り。村の者の体を蝕むようにあった黒い痣か徐々に小さくなっていく。
おおっ!? オババの祈祷でも無理だったものが治っていく!?
「……あれ? おらは……」
暫くすると意識を失っていた村の者が目を覚ます。
「ああ! 良かった! 助かったんだぞお前!」
「はあ? なんのことだ?」
自分に起きていたことをこれっぽっちも理解していない村の者に、男は涙を流し。笑顔で助かったんだと。それだけを連呼していた。
そんな喜びの声を上げている村人達の中で少年は倒れている村の者を一人。また一人と治していく。
そして最後の一人。まだ十代の、十二、三の少女の治療となった。
「この子で最後ですか?」
「ああ。そうかだが。あんた大丈夫なのか? これだけの人数を治療して疲れとかはないのか?」
「少し疲れてますけど。大丈夫です。最後の一人です。気合い入れてやり遂げます!」
男は驚異的な治療技術を見せる少年の体を労り。少し休むべきではないかと言うが、少年はあと一人の治療だ言うことで、休まずやることを告げ。その治療を再開した。
どうやって治しているのか分からないが、この少年が来てくれたことで村が助かった。あと一人だ。頑張ってくれ。
あと一人の治療。村の者すべてが祈るように少年の行為を見守っていた。だがーーー
「ーーーくっ!? どうしてだ!? 今までの人達は治ったのに、この子だけが治っていかない!?」
少年の焦る声が響く。
大丈夫かと男はそっと少年の後ろから治療行為を覗く。
その方法は今までと変わらない。うっすらと輝く体。その手を少女へと向けている。
輝きは少女の体に取り巻き黒い痣が消える。そう先程までと同じことが起こる筈だった。
しかし痣は消えるどころか少女の体に蔓延していく。
少しずつ。少しずつ。黒い痣がシミの様に広がっていく。
「おい!? 大丈夫なのか!?」
「くそっ! いったいどうして!?」
男の言葉に少年は反応することなく。現状の理解不能な状況に悪態を吐く。それほどまでに切羽詰まった状況になっていると男は感じだ。
少年が深く呼吸を繰り返すと輝きが増す。
しかし黒い痣の広がりは留まることを知らない様に広がっていく。このままでは全身に黒い痣が広がる。そしてそのせいで死んだ村の者みたいに、この少女も死んでしまうと、男は少年に告げる。
「駄目だ! 力が足りない! 何か! 何かこの力を押しきるほどの力がーーー」
切望するかのように少年が叫ぶ。だがその途中でその声が途切れる。
「ーー誰だ!?」
「誰? いったい誰のことを言ってるんだ?」
少年が誰かに呼ばれているかのように、首をあちこちに動かす。
「はあ!? なに!? 晶石? そんなもの持って、カルヴァンさんのバックの中? それと俺の武器? 『気』のことか? 違う? 骨だと? そんなもの……ダディーチャの聖仙骨のことか!?」
急に誰かと会話するかのように独り言を話す少年。そして。
「すいません! いま手が離せないのでお願いしたいことがあるんです!」
少年が男に頼み事をしてきた。
男は少年の真剣な表情にこれはただ事ではないと、理由を聞かず何でも言ってくれと答えた。
そして少年の告げたモノを走り用意する男であった。
「さあ次回はついに私の出番ね!」
「お姉さんお姉さん。残念なお知らせがあるんだ」
「あらなに?」
「作者からストックが切れたから次回からは不定期更新になるって話が」
「ちょっ!? 次回は私が本編に出るのよ!」
「ここでずっと出てたから良いじゃない」
「それはそれ。これはこれよ!この話を見ている皆さんにお願い!あの作者のやる気を出させるため。ブックマークや応援のメッセージを送ってください」
「それがやる気に繋がる原動力。みんなの応援待ってます」
「早く皆さんに会えるよう。作者に鞭打ってでもやる気出させて更新させますんで、それまで待っててください!」
「…それだと逃げるんじゃないかな?」




