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「っ痛っ…」

思わず、呪符から手放すシャオ。

だからといって、絡まったそれが骸骨から剥がれるはずはなかった。

だが。

紫色の炎のようなものがどこからともなくあらわれ、骸骨を包む。

紫炎に焼かれたような姿となった骸骨。

それを縛っていたはずの呪符ですら呑み込んだ紫煙が、晴れると、そこには無傷の骸骨。

「嘘、でしょう?」

紫の炎がシャオの呪符を焼いた。それができるのは、よほどの術者か。

(よほどの怨みを、強い念をこの世に抱いた、亡霊)

まさしく、目の前にたつそれ。

かしゃかしゃと、身体の歪みを治すように、身体全体をむち打つように波立たせる骸骨。

あらぬ方向を向いていた髑髏が、きりきりと、まるで南蛮渡来のからくり細工のように動く。

暗い眼窩がすっぽりと、シャオにむけられて。

とても、とても、まずいことになったと。

シャオは対峙して、初めて、後ろずさる。


戦意を燻らせたシャオを見逃す骸骨ではなかった。

ネズミを追い詰める猫のように、己を退治しようとした人間を追い立てる。かまいたちのような剣筋は、無茶苦茶なように見えて、筋だっている。

曲芸師のような身のこなしで、かわしていた彼女ですら、段々と牙の餌食になりかけていた。

呪符を用いて、悪意の塊と化した刀から身を守る。

性質が真逆に近いそれらは、触れる前に反発する。

両断したはずの手筋なのに、はねのけられたような奇妙な感覚を骸骨は覚えたはずなのに、惑うことなく次の手筋を繰り出す。

(そりゃあ、骸なわけだし。考えることもやめてるよね)

だから、こそ。亡霊に成り下がったそれは躊躇うことはない。

忘れてしまった目的のために、ひたすらに突き進む。

骸骨にしてみれば、それは立ちはだかる障害を切り捨てること。

一つ覚えのように繰り出す刀身に再び呪符をあてる。

縮んだ空気が元に戻るような圧力が二人にかかる。

よろける骸骨と対象的に、シャオは体勢を立て直す。

(こっちにきてから、なるべく節約しようと思ってたのに。呪符ひとつ記すのに、どれだけ時間がかかるか)

己がしようとしていたことが、泥沼なのかもしれないと、ようやく悟ったが、だからといっておめおめと故郷へ戻る気はない。

目的を達するまでは。

(私が私を許さない、から)

袖の内側に隠していた呪符を掴み、一気に引き出す。

ふわりと浮かんだ呪符の束が骸骨の周りをかこむ

シャオに向かおうとしていた骸骨に襲いかかるそれが、獲物をがんじがらめにする。

一度、やろうとして失敗して技。

やはり、骸骨に触れて瞬間にそれは紫炎をあげて、灰となる。

時間をかけて作り上げた呪符が一瞬で灰になる様。

それは、一瞬の間。

紫炎から姿を表した骸骨の失われた眼窩から、退魔師の姿は消え失せていた。

背後から音がする。

骸骨が振り向いたときには、すでに彼女は背を向けて、竹林へと逃げ出していた。

柄に朽ち果てた掌を持っていく。

骸骨はゆっくりと、鞘から刀身を引き出し、正面へ構えた。

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