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プロローグ
まさか、東の果てに来てまでも、アヤカシ退治に明け暮れるとは。
自分を産ませた張本人と対峙するために、みんなの反対をよそにして、わざわざ海を越えてきたのに。
シャオは苦笑したくなる気持ちを抑えて、その時を待っていた。
真夜中。空に月が浮かばない、新月。淀んだ空気はまるで真夏のように空気が淀んでいる。沼と言っていいのか、池といっていいのかわからないような水をたたえたほとりで彼女は立ち尽くしている。
じっとりとした湿気は、故国のそれと同じように思える。ただ、西洋諸国の要素をごちゃまぜにした空気とは違う。草木の匂いしかしない。
内地に赴いた時のことを、なんとなく思い出すような。
アヤカシを退治するには。
向こう側で何度も言われ慣れてきた言葉は異国の地でも鮮明に思い出せる。
獣と対峙するときのように、一辺の隙も見せないこと。
「わかっていますよ、師匠」
母国語で独りごちた彼女は、ちりちりとした違和感がだんだんと大きくなってきたことを感じていた。