第6話
「うわぁあああああん」
「マスター……」
朝から俺のテンションはだだ下がりだ。
ゴロゴロと床を転がる。
「にいちゃん、大丈夫なのかい?」
「はっはっはっ、お構いなく」
ちきしょう!
「なんだよっ! スタミナ回復チケットってよお! なんのスタミナだよっ!」
「マスター、お気を確かに」
「本当に大丈夫かい?」
「はっはっはっ」
☆☆☆
「お呼びでしょうか、おじ様」
「もう、大丈夫かい?」
「ええ、お見苦しいところをお見せして申し訳ございません」
「いや、ええよ、ええよ。そんことより今ね、商人さんが来とってね。あんたらが退治してくれたレッキスの毛皮を売って欲しいって言っとるんよ」
「商人?」
「村にね十日にいっぺんくらい来るんよ」
「あのうさぎはおじ様にお譲りしたものですので、毛皮の代金もおじ様がお受け取りくださればよろしいのに」
「いやいや。そいじゃもらいすぎだで。それに街に行くなら金はあんたらが持ってた方がええ」
「……おじ様」
☆☆☆
「いやー、こいつは上物だよ。ぜひ売って欲しいんだが…… ん? 大丈夫かい?」
「はあ」
「マスター! すみません。ちょっと体調が優れないみたいで」
「そうかい? お大事に」
やる気が出ない。
目の前のまだ若い商人(?)は怪訝な表情で俺を見てる。
はあ。
「それでだね。値段なんだが売り上げの一割でどうかな?」
「それでいいよ」
「え?」
「マスター! すみません。商人様にお任せいたします」
「ほ、本当に大丈夫かい? あとでやっぱりナシとか言わないよね」
「はっはっはっ、心配無用だよ。それより商人殿に少し頼みがあってね」
「頼み?」
「ああ、街まで護衛として雇わないか?」
「護衛か…… 確かにこのあたりは山賊が出るらしいからなぁ。ちなみに護衛料はいくらだい?」
「金はいいんだ。商人殿の馬車にマスターを乗せてもらいたいんだ」
「彼を? 気を悪くしないで欲しいんだが、そんなに悪いのか? 病気なら移ったりしないよね?」
「はっはっはっ、マスターは病気ではないよ。なんというか心労がたたってね」
「そうなのかい…… まあ彼一人ならいいかな」
「交渉成立だね」
☆☆☆
空が青い。
行商人の馬車に腰掛け空を見上げる。
見送りにきたおっさんとおばさんの声が聞こえる。
ノエルは少し涙ぐんでるみたいだ。
涙もろいのかな?
「体に気をつけてな」
「はい。おじ様も」
「ああ」
そろそろ出発らしい。
商人のにいちゃんが合図を出してる。
「おーい、馬車を出すぞ」
「はーい。それでは行って参りますね」
「ああ、気いつけてな」
「あんた」
俯くおっさんと笑顔のおばさん。
「おば様もお元気で」
「ええ、行ってらっしゃい」
馬車が出ても、おっさんとおばさんは見えなくなるまで手を振っていた。