第16話
「ギルド協会って、なんか頭痛が痛いみたいな表現だよな」
「ギルドは寄り合いですとか互助会のような意味合いですから、そこまで変な表現ではないと思います」
「そうかぁ? まあ、組合の組合みたいなのは、実際あるからいいんだけど」
おっさんの店で朝飯を食べながら、今日の方針を決める。
関係ないが、おっさんが作る飯は意外とうまい。
強面だが家庭的な一面もあるよ的なパターンかと思ったが、聞けばギルド時代に遠征中の野営で飯がまともに食べられないことが多くて、街に帰るたびに旨い飯を求めていたらしい。
しかし、ある時気がついた。
自分で作ればいいと。
そうすれば野営の時でも、もう少しマシな飯が食えるようになると。
試行錯誤の日々を経て、ついにギルド解散のおり料理人への転身を決意したそうだ。
イイハナシダナー。
「とりあえず今日はその協会に行くか」
「おい」
「へ?」
急におっさんに声をかけられてびっくりする。
「誰でもいいから店の手伝いをおいていけ。金は出す」
昨日は忙しかったからな。
「じゃあ、ノーラは残っておっさんの手伝いを頼む」
「はーい」
ノーラが元気よく手をあげる。
今日は、男の客が多くなりそうだ。
☆☆☆
街のほぼ中央にあるギルド協会。
建物は大きいお屋敷という感じで、歴史を感じさせる西洋風の銀行がイメージとしては近いかな。
受付の対応は協会ということで、かなりお役所的な感じだった。
「それではこちらの申請用紙に必要事項を記入して、最後にギルドマスターのサインをお願いします」
「へい、パス」
「わわっ!」
受付のお姉さんからもらった紙をノエルに渡して丸投げする。
サインは俺の名前を書けばいいんだろうか?
漢字で書いて通じるだろうか。
「ギルドの名称はどうしますか?」
「あぁ、名前か…… 課金は家賃まで」
「マスターさすがに意味がわからないです」
「そうか。じゃあ、ガチャは悪い文明」
「えぇっと」
「マスター……」
「なんだよ! 端的に表していてこれ以上ないほど的確な表現だぞ」
「そういうことではなくて」
「わかった、わかった。それなら金のマーシュでどうだ?」
「キンノマーシュですか」
「まあ、それなら」
☆☆☆
「こちらがギルド・キンノマーシュのギルドカードです。それと」
渡されたカードは金属製でクレジットカードほどの大きさ、薄くて軽い。
「それと?」
受付のお姉さんの後ろから男が現れる。
「ギルド・キンノマーシュ?」
「ああ」
「私はギルド協会で監査員をしているダンという」
軽く会釈する。
「君たちのギルドなんだが、業態が冒険者となっているね?」
「おう」
「どんな仕事だい?」
「さあ?」
沈黙が重いな。
何か変なこと言ったか?
「君たちのギルドは何をしてるかわからない、謎の集団ということになるがいいのか?」
やっと口を開いたダンは当たり前のことを言ってきた。
「そんなもんだろ」
ダンは目頭を押さえる。
どうした、疲れ目か?
「質問を変えよう。君たちは何ができる?」
「なんでもできるぞ」
「わかった! こうしよう」
急に大きな声を出すなよ。
びっくりするだろ。
「君たちの力を試させてもらう」