第15話
「集めた薬草はポーションおババのとこに持って行ってくれ」
何だよ、ポーションおババって。
ひどいあだ名つけるな。
現代社会ならイジメ案件だぞ。
「すみません。そのポーションおババとは?」
「ああ、知らねぇのか。薬草からポーション作ってる錬金術師のおババがいるんだ」
「錬金術師様ですね」
おっさんがボードから紙を一枚剥がす。
「この依頼書を持っていけ。店の場所も書いてある」
「はい、行って参ります」
☆☆☆
ノエルが帰ってきたところで、おっさんの店でささやかだがお祝いすることにした。
おっさんの店は夜間営業が始まると、いわゆる常連と呼ばれる連中で席が埋まる。
そのため、俺たちは中二階にあるソファー席に追いやられてしまった。
こっちの方が高級そうなんだが、常連はこっちの席を使わない。
おっさん一人でやってる店だから、こっちの席は注文したものを運んでもらえない。
自分で取りに来いと言われるので常連ほどカウンター席に座るらしい。
「はあ」
「はっはっはっ、何か悩みかいマスター?」
「筋トレなら間に合ってるよ」
「はっはっはっ」
依頼が無事完了したことで、少しだがお金を手に入れた。
当分は細々した依頼をこなして、金を稼ぐことになりそうだ。
十円のような銅貨数枚を手でいじる。
潰れていたり、欠けていたりで古銭のようになってる。
「この金が使えたらなぁ」
「何にですか?」
「ガチャに決まってるだろ」
「召喚石が必要なのですよね? お金で買えるのですか?」
「買えるけど買えない」
「よくわからないですね」
くそっ、コンビニがあれば。
G○○glePlayカードが買えるのに。
「お金の代わりになるカードがあるんだ。それを使えば召喚石を手に入れられる」
「なるほど、さすがはベルント様です。そうだ! お金の代わりになるカードでしたら、ポーションおババ様がお持ちでしたよ」
「何!?」
☆☆☆
「ギルドカード?」
「はい、おババ様は錬金術師のギルドマスターでいらして、ギルドマスターは特殊なカードをお持ちなのです。初め依頼料をカードから支払いするとおっしゃられて、詳しくお聞きしました」
要するに電子マネーだな。
この場合、魔術マネーか。
ギルドを作るにはギルド協会に申請する必要があるらしい。
申請が受理されると、ギルドカードが発行される。
このギルドカードは、正規のギルドである証なんだが、付随する機能として金銭のやり取りがある。
ギルド同士の場合、扱う金額が大きくなることがあって、大金を持ち歩くには硬貨は不便なんだと。
そこで、協会を仲介に使う。
協会にお金を預けておけば、カードをかざすだけで決済が完了する。
この場合、電子マネーと違って物理的に硬貨が移動するらしい。
ファンタジーな力技だ。
ちょっと微妙なところだが、可能性はあるな。
「ギルドを作ろう」