初めての集落
僕の犠牲による火山活動のおかげでアヴァル一族の暮らす洞窟周辺の寒さは緩和され、一年が過ぎる頃にはシカや猪などの獣の群れも戻ってきた。
おかげで飢えや寒さで命を落とす者もなく、流浪の旅を始めてから減少し続けていた人口は増加に転じたらしい。
暮らしが安定したことで、一年をかけて神の目モードで周辺を偵察してみたところ、火山の裾野にある大きな湖の先に高台となった場所を見つけた。
高台の脇には湖からの川が流れ、広大な低地が広がり、輸送や耕作にも適していた。
今や90人のアヴァルを率いる若きリーダー、ルムダに戻った僕はこの高台で集落を築く事をみんなに提案してみた。
安全な洞窟を出る事への不安の声もあったが、食糧事情も改善し、沢山の子供も生まれたことで手狭になった事もあり、大方の賛成を得る事ができた。
まあ、最後のダメ押しに『かの地に新たな村を築け、とユルズの声が聞こえた!』と言えば不安は消えた。
こうして僕の号令の元、アヴァルの一族は新たな集落を築くための準備を始めた。
本格的に移転する前に住環境を整える必要があるため、家族の数から建てる家の規模や数を算出して材料を集める事からから始める。
木材を集めるチームと狩りをして毛皮や骨材を集めるチームを作り、平行して女や子供達には木の実や薬草などの当面の生活物資を集めてもらう。
これまでは家族ごとに集まって必要分を確保していただけなので、つまりこの星初めての公共事業ってことだ。
家は木材と大型獣の骨で柱や屋根を作り、ドーム状に毛皮を結わえて作る。
そこで家一軒分の木材、毛皮、骨材の量を決めてそれぞれの1単位の基準を定め、15軒分の資材として木材15、毛皮15、骨材15を集めるように命じた。
これはこの先も資源の量を量る上での単位となった。
そして僕はリーダーのルムダに憑依して、狩りのチームを率いることにした。
シカや猪よりもやはり一度の収穫量が多い大型の獣を狙いたい。
そこで森の外の平原に群れているムデゥと呼ばれている四足歩行、毛むくじゃらの大型獣を標的に定めた。
見上げる程の巨大な体躯に長い鼻と長い牙が特徴的なムデゥを狩るのはかなり危険で、これまで何人ものアヴァルが命を落とした危険な相手でもある。
僕は2日かけて沢山の落とし穴を掘らせ、それを取り囲むようにかがり火の準備を整えた。
あとは大きな群れが落とし穴とかがり火の間に現れるのを待つだけだ。
そして二日後、朝靄の中にムデゥ特有の太い鳴き声がこだました。
パッと見たところ、30頭を超える大きなムデゥの群れが横切っている。
僕は茂みから立ち上がると、声の限り叫んだ。
「ユルズの加護あれ!!」
「「「ユルズの加護あれ!!」」」
掛け声と同時に30数名の屈強なアヴァルの男達が投げ槍を手にムデゥの群れ目掛け、横一線に大声をあげて突撃していく。
周囲にかがり火が灯され、大声をあげるアヴァル達に追い立てられたムデゥは次々と穴に落ちる。
穴の底に埋められた尖った杭に身体を貫かれ、狂ったように暴れるムデゥ達の眉間を槍で突いて止めをさしてゆく。
一番身体の大きいムデゥには少々手こずらされたが、死傷者を出すことなく12頭のムデゥを仕留めることに成功した。
これで相当量の骨材と食糧を確保できたはずだ。
木材に関しても、洞窟の周りは豊かな森が広がっていたおかげで、1週間ほどで集落を作るための資材や食糧を集めることが出来た。
それから輸送チームを編成して建設予定地に資材を運ばせた。
こうして準備が整い、いよいよ明日は一族全員で洞窟を出て新たな新天地へ向かう。