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最強と破滅と運命と  作者: シェイフォン
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第三章

 バスで島の中央まで運ばれた僕達。

 途中、隔離政策の名残なのか有刺鉄線や見張り役、そして地雷原まで用意されている。

 僕達魔法使いは普通の高校生として認識されているはずだ。

 うん、絶対そう。

 だからあんな凶悪な犯罪者の脱走を阻止するような設備は偽物だろう……ね?

「なんやかぐらん、随分辛気臭い顔してんなあ?」

 何故か能天気な堺さんは僕の背中を叩く。

「これから晴れの入学式やで。もっと喜ばなあかんで?」

 ……入獄式の間違いではないだろうか?

「ほら、見てください二人とも。校門に何か書かれていますわよ」

 ああ、あれか。

 今はまだ遠いからよく見えないけど、近づいてみたら驚くよ。

 何せ書かれてある内容が『この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ』だからね。

 どこの地獄編だよ。

 なんで校門にそんな言葉を刻むのか。

 思いついた奴と実行した奴、出て来い。

 殴ってやる。

 さて、そんな絶望の門をくぐった僕達新入生は全員グラウンドに集められる。

 一学年百人前後、三学年合わせて三百人を収容できるグラウンドというのは中々広い。

 けど、新入生を取り囲むように二年と三年がごちゃ混ぜになって並んでいるのは何故だろう?

 もし、これで登板した人物が人を何人も殺したような強面の男だったり、鞭を持ったグラマラスな女性だったら完璧入獄式だったけど。

「えー、私が学長の羽柴裕次郎です。これから三年間よろしくお願いします」

 出てきたのは好々爺のような男性だった。

「良かった」

 思わず涙が溢れ、周りにどんびかれたのはこの際気にしないでおこう。

 で、僕はこの後の展開をある程度予想していた。

 とりあえず校則について説明し、僕達に長話という催眠術をかけた後、解散してどこかに貼られたクラス分けを探しに行く。

 それがスタンダードな流れ。

 そう、その考えは間違っていない。

 一般の高校ならそれで合っている。

 だが、僕は失念していた。いや、無意識に目を背けていた。

 --この学園は別名狂騒学園と異名を取っている事実に。

 学長が長々と喋っており、まだまだかかりそうだと思った矢先、視界の端から弾丸の如き速度で何かが学長へと迫り--弾き飛ばす!

 学長は全く表情を変えずに吹き飛ばされる!

「「「「……」」」」

 そのあまりの出来事に僕を含め、全員が目を丸くしているのをよそにその人物がマイクを取った。

 幼女だ。

 小学生としてランドセルを背負っていても違和感ないほど幼い幼女だ。

 ピンクの長い髪をツインテールにし、体内から永久機関でも搭載しているんじゃないかと思わせるほどエネルギー溢れた幼女。

 果たして学長を吹き飛ばした幼女の正体は?

「私が第ゼロ学園の名誉学園長! 夢宮翼よ!」

 学長の上に立つ名誉学園長でした。

 名誉学園長ってなに?

 初めて聞いたんだけど?

 と、そんな僕の疑問など無視して名誉学園長は話し始める。

「みんなー! 新入生が来たよー!」

「「「おおおおおお!!」」」

 何故か周りにいた在校生が応える。

「みんなー! 何をしたいー?」

「「「あれをしたいー!」」」

 あれってなに?

「そっかー! あれかー! うんうん、分かったよー!」

 いやいや、勝手に納得しないで。

 まず僕達新入生に説明して。

「じゃあ始めようかー! 網をよーい!」

 名誉学園長の言葉で掲げられる篭。

「篭!?」

 なんでそんなものが用意されてんの?

 ボールとか何もない。

 あるのは--

「まさか!?」

 と、僕が慌てた声を出すと同時に。

「じゃあ始めよう! チーム別対抗新入生歓迎会、一番多くの新入生を篭に入れたチームに食券一万円分を贈呈だー!」

「はああああああ!?」

 僕は大声を上げて叫んだ。


 まず確認しておこう。

 魔法というのは中学三年から高校三年までの間で急激に伸びる。

 いわば一年違えば実力は全くの別物となる。

 そう、だから。

 新入生と在校生では子供と大人程の実力差があるんだよ!

「よっしゃー! 三人ゲットー!」

「きゃあああ!?」

 僕達新入生が宙を舞い、用意された篭に落とされる。

 これだけもみくちゃにされれば命の危険もありそうだけど、それがない。

「在学生のみんなー! ケガさせたら減点一だよー!」

 名誉学園長がそう言い含めてあるのに加えて。

「くそ、いいようにされるか!」

 当然何人かの新入生は魔法で抵抗するが。

「おおっと。ん~、可愛いねえ新入生ちゃんは」

 在校生は鼻歌交じりにレジスト、放った新入生の襟首を捕まえて網に放り投げる。

 間違いない、在校生は愉しんでいる。

 僕達の必死抵抗を見て感じて悦んでいる。

 その面が気に入らない。

「ふざけるなぁぁぁぁ!」

「うお!?」

 僕は咆哮と共に近くにいた在校生二、三人を吹き飛ばす。

 いくら大人と子供ぐらいの力量差があっても、百人に一人ぐらいは大人に対抗できる子供がいるんだよ。

 そしてその一人に僕が入っている。

「お前達もくらえぇぇぇぇ!」

 お返しとばかりに僕は在校生を近くの網に投げ飛ばした。

『おおっと、そこの新入生やるねえ。そうでなくちゃ面白くないよ』

 こっちは全然面白くないよ!

 と、叫びたい。

『ん~、ちょっと新入生に諦めが入っているかな? これじゃつまんないから餌を上げよう。もし在校生十人を網の中に放り込み、その上で私のところまで来ればなんでも一つ叶えてあげよう。例え別の学校に転校でも構わないよ』

 え? それは本当?

『もちろんさぁ。けど、気を付けて。例えば五人放り込んだ新入生を網の中に放り込んだら五人分カウントするよ』

 ゲームらしくなってきたな。

 俄然やる気になった僕は近くの上級生に掴みかかる。

 スキルはまだ使わない。

 中堅以上の上級生を避け、下位なら相手になれる。

「ほら、大人しく捕まれ」

「え? きゃああ!?」

 僕は躊躇なく上級生の女生徒を網に放り込む。

 レディーファーストだとか紳士対応だとかそんな甘っちょろいことは言ってられない。

 戦場に来た以上、女性だろうが弱者だろうが平等に扱うぞ?

「この生意気新入生が!」

「悪い、君の相手はパス」

 誰を倒しても一人分なのだから強者を選ぶ必要はない。

 この状況において最も重要なのは時間だった。

「よし! これで十人!」

『おおっと! わずか五分で上級生十人を網に叩き込むとは! これは歴代最速! 後で表彰してあげよう新入生!』

 そんなものくれるぐらいならここから出せ!

 僕は第一学園に入学したいんだよ!

 そんな心の叫びはさておき、あの名誉学園長はいらないことをしてくれた。

 あんなことを言えば狙ってくださいと言っているようなものじゃないか!

 案の定、周囲の上級生のターゲットが僕に変わる。

 よし、良い頃あいだ。

 僕は満を持してスキルを解放する。

「条件! 『瞬発力を通常の三倍』」

 突如書き加えられた物理法則に上級生は混乱し、対する僕は冷静。

 一瞬の躊躇があれば良かった。

 僕は大地を砕かんとばかりに大地を蹴り、学園長の元へ向かう。

 あと少し、何もなければ条件達成。

 そう、何もなければね。

「はい、ストップ」

「え?」

 妙に艶やかな声が聞こえると同時、僕の体は反射的に止まる。

「御神楽君。やはり君が一番か」

 その声、聞いたことがある。

「まさか……有村さん?」

 僕は顔を上げる。

 名誉学園長を護るように立ち塞がる一人の女生徒。

 身長は百七十を超え、モデルのようなスレンダーな体躯を持つ女性。

「にゃはは」

 その仕草と笑いから猫を連想させる美少女だが、その外見に騙されてはならない。

「久しぶりだねえ御神楽君、東京大会以来かな?」

 元祖東京皇帝。

 一年の僕を叩きのめし、全国大会三連覇を成し遂げた歴代最強と謳われる東京代表。

 有村一花がそこにいた。

「にゃはは、御神楽君。最後の関門だよ、愛しい翼ちゃんと涙の再開をしたければ私を倒しなさい」

 色々突っ込みたい、名誉学園長をちゃん付けしたり、僕は怒りこそあれ、愛など持ち合わせていない。

 けど、それを指摘するのは愚の骨頂だろう。

「いやあ、有村さんだけはご免かな」

 我知らず一歩下がる。

 思い起こすのは三年前の東京大会一回戦。

 何もさせてもらえず一方的にぼこぼこにされたあの出来事は今でもトラウマになっている。

 有村さんの固有スキル--鏡からの報復。

 有村さんの領域において発動した魔法をコピーする--だけでなくタイムラグなし、倍の威力で扱える。

 そのスキルの性質上、先手を相手に譲ることになるがそれさえクリアすれば相手の魔法を倍増しで扱え、かつデメリットがないので僕の固有スキルに匹敵するチートスキル。

 相手からすれば放った魔法を倍返しにされるので恐ろしくて魔法を使えない。

 それゆえ有村さんは魔術師殺しとの別名があった。

「にゃあ。じゃあ大人しく網に入る?」

「いや、それもご免だ」

 だからといって不戦敗は僕の望むところではない。

「……やるしかないんだね」

 僕は覚悟を決める。

 怖いのは確かだが、有村さんを倒さなければ辿り着けないなら顔を上げるしかない。

 勝つ、それだけを考えろ。

「みーみー。御神楽君、三年間でどこまで強くなったのかにゃあ?」

 猫のような鳴き声と構えは挑発だろうか、それとも素なのか迷う。

 僕は首を回して全体を確認、躊躇っている時間はない。

「『神の領域』--発動!」

 条件はダメージ半減。

 目的の場所まで可能な限り無事でいなければならない。

「にしししし。つまんないね」

 途端に興味を失った有村さん。

「けど、それじゃあ結果は見えているよ」

 放たれた火球が身体に当たる。

 レジストし、かつダメージが半減していてこの威力。

 まともに当たった時のことなど考えたくない。

「ほらほら、魔法でも使ったら?」

「安い挑発だね」

 有村さんの前で魔法は厳禁。

 放ったら最後、倍返しにされる。

 そしてそれを防ぐために強い魔法を使い、それをさらに倍返し。

 防げば防ぐほどドツボに嵌ってしまう。

「まあ、それじゃあ何もできないよ?」

 その通り。

 このままではじり貧だ。

 しかし、それしか手がない。

 頼りになるのはレジスト。

 魔法耐久力に賭けよう。

「……まさか本当にそれで通すつもり?」

 有村さんの調子が変わる。

「それじゃあ、おっきいのをぶつけよう」

 速さに定評のある初級魔術から威力が高い中級魔術を選択する有村さん。

 しかし、それを黙って見ているほど僕は甘くない。

「ファイアアロー」

 炎系初級魔術--ファイアアロー。

 矢程度の大きさで、当たれば熱い。

 この程度の威力なら跳ね返されても対処できる。

「やってくれるねえ」

 放った一本のファイアアローが命中し、有村さんの詠唱をキャンセル。

「少しは成長したにゃ?」

「三年も経っているからね」

 あの敗北以来、僕はレジストの効果を高めてきた。

 同じ失敗を繰り返すほど僕は甘くない。

「さあ、どうする有村さん?」

 中距離から至近距離へ移行。

 五メートル以内での戦闘ならば有村さんのスキルの威力が低くなる。

「御神楽君、女性相手に手を上げるのは褒められないにゃあ」

「残念ながら僕は平等主義だ、相手が誰であろうと一切手心は加えない」

 その言葉と同時に僕はスキルを解除。

 五分五分の条件に持ち込む。

「御神楽君、私の攻略方法は接近戦に持ち込むこと」

 有村さんはふふんと笑う。

「この状況なんて数え切れないほど経験してるにゃあ!」

「なるほど」

 だからといって戦法を変更する気は毛頭ない。

 最後まで行かせてもらおう。

 僕は風を生み出すと有村さんは土で防御。

 有村さんが炎で攻撃すると僕は氷の壁を出現させる。

 攻撃、対応、反射、対応、回避。

 レジストがほとんど意味をなさない至近距離で互いに魔法を放つ。

 当初は有村さん有利だったが、時間が経つごとに形成が僕に傾く。

「アースアロー!」

「にゃあ!?」

 そしてついに僕の魔法が有村さんを捕えた。

 高速の石つぶてが有村さんに命中し、彼女はたまらず片膝をつく。

「……御神楽君、もしかして接近戦は得意分野なのかにゃあ?」

「いや、得意分野も何も接近戦でこんなに長く戦ったのは始めてだ」

 僕は正直に述べる。

 中学時代、接近戦が得意な相手と手合わせすることもあったが、大抵は一、二合で終わっている。

 僕といい勝負をする相手が接近戦にはいなかったんだ。

「失礼かもしれないが聞こう。僕は接近戦の才能があるのか?」

 何度も戦ってきた有村さんなら分かると思い、聞いてみた。

「……天才」

 有村さんは暗い声でつぶやく。

「本当に御神楽君は憎たらしいにゃあ、あれだけの動きをしておきながら素人? 初めて? センスといい、スキルといい、神様はどれだけ御神楽君を贔屓するのかにゃあ?」

 有村さんは本気で悔しがっているようだ。

 全てをそつなくこなす僕という存在が羨ましくて憎らしくて仕方ない。

 だったら僕の返す答えは一つ。

「そうか、有村さんがそう思うのならそう思ってくれても構わない。僕はそれら全てを叩き潰すだけだから」

 恨みでも羨望でも何でも抱いて構わない。

 いつも僕がやっていることだ。

 正の感情だろうが負の感情だろうが僕は平等にねじ伏せ、己が道を進むだけだ。

「にししししし、御神楽君。私は勝負に負けたけど、戦いには勝ったにゃ」

「え?」

 有村さんの言葉。

 僕は周りを見渡して--理解した。

「僕だけ?」

 気が付けば僕以外の新入生全員が網に納められていた。

 在校生全員が僕を何重にも包囲している状況。

『さあ、天才御神楽君! この絶望的な状況をどう切り抜けるかなあ?』

 名誉学園長め、分かってて言っているだろう。

 絶 対 無 理 !

 そう思った次の瞬間、僕は有村さんに捕えられ、網に放り込まれてしまった。

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