序章
「え?」
御神楽圭一は担任の口から出た言葉に耳を疑う。
「あの、申し訳ありませんが先生。何かの間違いでは?」
「残念ながら事実だ」
御神楽の懇願を無視するかのような先生からの断定。
「御神楽圭一、お前は魔術師養成高校の一つである第ゼロ学園を受験することが決まった」
「可哀そうに」
「まさかあんなとこに行かされるとは」
「私、御神楽君のこと一生忘れないから」
「ああ、御神楽は良い奴だった」
「葬式には必ず行くぜ」
……なんか友人が僕を死んだことにしているが制裁は後回しだ。
「あんなところに進学希望など出していないはずですが?」
絶対に行きたくない拒絶進路なら迷うことなく書いているけどね。
「御神楽……」
先生は今まで見たことのない優しい眼差しで。
「お前を受けさせないと俺の夏のボーナスがカットされるんだ」
「なにそのふざけた理由!?」
たかが数十万のために生徒一人の人生を棒に振らせる気か!?
と、僕の憤りは無視して担任の先生は続ける。
「お前、今年と昨年の魔術師大会中等部で優勝しただろう」
「はい、しました」
自慢ではないが、全国大会に二度優勝した僕。
恐らく全国で一番強い中学生かもね。
「それでな。政府のお偉いさんがお前に目を付けたんだ」
「……希望は伝えたはずですが?」
絶対に嫌だと。
僕は都内にある魔術師養成学校の第一学園に入りたいと面と向かって言い放っていた。
「ああ、俺もしっかり覚えているぞ。おかげで危うく俺と校長の首が飛びそうになったこともな」
担任曰く、上からどんな教育をしているんだと叱責を受けたらしい。
「嘘は嫌いなんです」
魔法で延命が可能かもしれないけど結局、死からは逃れられず、遅かれ早かれ人は死ぬ。
だったら言いたいことを言って死んだ方が良いじゃないか。
「素晴らしい信念だ。巻き込まれない限りは称賛しよう」
事なかれ主義者め。
やれやれ、家族とか護るモノがあるものは弱くなって仕方ない。
「話を戻すぞ御神楽。合格しろとは言わん、とにかく受けろ。そうすれば後で御神楽が志望している第一学園への推薦状を手配しよう」
「え? いいの?」
それだったら何とかなる。
良かった。
奈落の底に突き落とされた気分だったけど、天から延びる蜘蛛の糸を見つけた気分だ。
「断わっておくが絶対バックレるなよ。白紙でも無言でもいいから時間通りに受けろ」
「はい、わかりました」
一礼する僕。
さて、当面の課題は片づけた。
あとは--
「君たち……」
勝手に死んだことにした友人に制裁を食らわさなければ。
「やばい、御神楽がキレている」
「お、俺何も言ってねえぞ」
「御神楽君、暴力は何も生まないわ」
戯言は無視。
「いいからそこに並べー!」
僕は机を蹴り飛ばし、最も近くにいた友人に掴みかかった。
そして巻き起こる喧噪、狂乱。
クラスはあっという間に無秩序状態になった。
そんな状況を見ながら先生はぽつりと零した。
「……やはり御神楽は一番あの学園に合っているぞ」




