身勝手
それはあまりにも身勝手な申し出だった
「あのさ、おれユリと別れて一年経つだろ
なかなかユリ以上の女に出会えなくって…
でも最近なんか人肌恋しいんだよね、年をとったせいか
俺、割りと真面目だから一晩限りの…ってのもなんかやだし
うっかり年収目当ての婚活女と付き合っちゃって、その後運命の人に出会ったりすると、ちょっと面倒なことになりそうだろ?」
「だからさ、お前俺と付き合ってくれない?
俺に好きな女が出来たら別れるという条件で
あ、もし俺が35までに好きな女ができなかったら責任とって結婚するからさ」
この男…
馬鹿か
私はあなたと同い年なのよ?
例えば34歳11ヶ月であなたが運命の人に出会ったら、私は34歳から婚活しなきゃいけなくなるじゃない
大手情報システム会社と大手コンサルタント会社の共同資本の会社に勤めるこの男は、私の友人の彼氏だった
そこそこやり手風の風貌に高給取りのこの男が友人の彼氏だったとき、私は羨ましさを感じた
この男の友人も含めて私たちは何回か一緒に遊んだ
海外旅行も一緒に行った
語学が堪能なこの男が海外ではより一層輝いて見えた
なんとなく気が合ったし、ちょうどその日食べたい食べ物も一緒だったりしたので私はユリがこの男と別れたあともたまに会ってる
友達として
私がこの男に恋心を抱いていたことは否定できない
だけど!
今のこいつの発言でその恋心は吹っ飛んだ
私、バカは嫌い
ああ!駿身勝手な申し出を、今、してくれてありがとう
実は…会社の先輩に交際申し込まれて迷ってた
特に好みじゃないし、あんまり出世も見込めそうもないし、何より着ている服がダサい
あなたみたいにシュッとしてない
けど彼は新入社員のときから私を好きだったと言った
あんまり話したことないけど、何年も前に言った私の一言を覚えてくれていたりした
見かけは良くないけど、心のある人
危ない危ない、あなたに執着を感じて、あの人からの誘いを断っちゃうとこだった
「え〜うれしい、私も駿好きだったから」
「んー、でもユリに悪いかなぁ」
「ちょっと二、三日考えさせて?」
フフ、今日のこの店のお勘定はお願いしたいから、とりあえずそう言っておく




