1日目 その二
読みにくかったらゴメンなさい。
テレビのニュースを聞きながら支度をする。
どうやら雨の心配は無いようだ。
朝食を食べ、身支度をする。
「いってきます」とだけ伝えると家を出る。
ニュースの通り今日の空は青く透き通っている。
アスファルトには昨日の雨の跡が残り、いつもより一層黒みを増しているように見えた。
今日は何を探そうか。
駅に着くまでの道程で青年は考える。
今の所、探し物の選択肢は4つである。絵、玩具、手紙、御守り。
一番探しやすそうなものは玩具であろうか。
しかし、どれも仕舞った場所は正確に思い出すことは出来ない。
絵に関しては父が自分に見せたことがあっただろうか、というレベルである。
そうこう悩んでいると駅に着いてしまった。
ここからの40分間は電車に揺られることになる。
朝の電車は学生が多く混み合うため、考える暇は無いに等しい。
電車がやって来る。
いつものように右足から踏み出し、電車に乗った。
今日は幸運だ。席が空いている。青年は空いた席に座ると再び4つの在り処について頭を働かせようとする。
電車のドアが閉まりかけたとき、電車内で声が上がる。続いてカメラの音。猫の鳴き真似。
青年は声の上がった方をチラと見やる。
そこにはさっきのブチ柄の猫がいた。
監視役の仕事としては当たり前のことなのだろうが、正直猫を見くびっていた。
家からずっと付いてきていたのだろうか。全く気づかなかった。
猫、恐るべし。
学校の最寄駅に着くまでの40分間、猫に対しての黄色い声は絶えることはなかった。
猫に向けられる黄色い声に遮られ、考える余裕など全くと言っていいほどなかった。
何の成果も上げられぬまま、気づけばすでに学校である。
いつものように朝礼が始まる。今日の授業は特に楽しみなことは無い。
午前中には詰まらない授業が4つある。
学生は勉強することが仕事だ、と祖母が言っていた。
確かに勉強をするために入った高校なのだから、いくら詰まらないからと言って投げ出すことは出来ない。
正確には投げ出すほどの勇気が無かったのかも知れない。
授業中、ふと窓からグラウンドを眺めてみる。
やはりブチ柄の猫がサッカーゴールの近くで寝ている。
学校に拘束されている自分とは対照的であった。
授業を終え、帰りのクラスルーム活動をして解散する。いつもの流れだ。
この後には自分が唯一所属する部活動がある。
青年はテレピン臭い美術室へ入っていく。
すでに数人が活動を始めているようだ。
青年もイーゼルを立て作業に入る。
学校ではこれが一番の楽しみと言っても過言ではない。
青年は花の絵を描く。
赤い、青い、黄色い花の咲き乱れる花畑。
1時間程が経過した頃、顧問の末田がやってきた。
白髪交じりの髪が年齢を感じさせる。
この学校の教員では1,2を争うほどの年長者だ。
「お、花描いてるのか。いいなぁ、色鮮やかで。」
末田が言う。
青年は一度頷くだけで構わず作業を続ける。
末田は続けていう。
「お前のその静かなとこ、お前の親父にそっくりだな。」
末田は自分の父に会ったことがあるとは意外だな、と思った。
高校に入ってから授業参観に来たことはないハズだが。
あれこれと考えていると思考に末田が割り込んできた。
「あ、ちなみにお前の親父は俺の教え子だぞ。お前と同じように美術部だったからな、よく覚えてる。」
は?青年は唖然とした。
一番難題に思っていた探し物の手がかりを一番初めに見つけるとは思ってもいなかった。