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1日目 その一

ゆっくりと短めに書いていきますので、のんびりと読んでいただければ、と思います。

 青年が目を覚ますと見慣れた天井が見えた。

 どうやら自分の家のようだ。昨日の記憶は曖昧にしか思い出せない。

 時計の針は6時半を指している。布団から起き上がり、部屋のカーテンを開けた。昨日の雨雲はどこかへ行ってしまったようだ。

 爽やかな日の光が部屋へ差し込んだ。

 青年が伸びをしていると、視界の端に見慣れない黒い影が見えた。


「あれ、猫が居る・・。」


 白い毛に黒いブチ模様の猫が一匹、塀の上で目を瞑ったまま座っている。心なしかこちらを見ているような気がするが、目を閉じているせいで正確なことは言えない。

 青年は窓を開け、猫に近づこうとした。

 ブチ模様の猫は青年の姿が見えるや否や、薄眼を開け、にゃんむ、とひと鳴きする。

 青年は昨日のことを思い出して問いかける。


「お前は昨日のことと関係があるのか?」


 猫は答えない。そもそも猫は何を尋ねられても、にゃあ、ぐらいしか答えないだろう。しかし、昨日 猫又(かみさま)に出会った青年は、頭の片隅で「猫は頑張れば言葉を話せる」と思っていたのかもしれない。

 猫は青年の問いかけを無視して顔を拭い始めた。


 その時であった。涼しげな10月の風が彼の頬を撫でた瞬間、猫の首から紙切れがチラと覗いた。

 今まで白い毛に埋もれていたせいか今まで気がつかなかったが、メモのようなものを首から下げているようだ。

 青年は猫に近づいた。人に慣れているのだろうか、猫は逃げない。

 頭を撫でつつ猫の首からメモを外す。メモには一見子供の落書きのような字で単語が書いてある。


『かんしやく』


 かんしやく?青年は考えた。30秒ほど悩んだ後、ひらめいた。

 ああ、監視役か。


「って事は、猫又(かみさま)の使いってことか・・?昨日のあれは夢じゃなかったのか。」


 猫は言葉を理解したのかは分からないが、頷いたように見えた。

 すると猫が喋りだした。


「どうも、青年殿。私は本日監視役を務めさせていただく猫でございます。監視役と言っても特に何をすれば良いのかは聞いておりません。私も気ままに時間を過ごします故、どうぞ気にせずに探し物を行ってくださいませ。」


 青年は昨日のように驚きはしなかった。猫の割に丁寧な奴だな、と思っただけであった。

 ブチ柄の猫は前足を折りたたみ、寝の体勢に入る。


「私の言語力も猫又(かみさま)から力を一時的に授けて戴いただけなので、効果が切れれば普通の野良猫に戻ります。しかし、人の言うことは面白いですね。私たちを見つけては「猫」だの「猫ちゃん」と呼び、次には私たちの鳴き真似をしてくる。まるで定型文のようですね。」


 猫は目を閉じながら言う。

 青年は「まあ、一々名前を付けてても次はいつ会えるか分からないしな」とだけ言うと、窓を閉めようとした。


「今日は何を探す予定で?」


 猫は聞く。


「何を探そうかねぇ。とりあえず、学校に行ってから決めるよ。」


 青年はそう答えると窓を閉め、身支度を始めた。





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