0日目 その二
まだ書き方がよくわかってませんので、読みにくかもしれません。ごめんなさい
え?猫が喋った?
青年は驚いた。
猫は賽銭箱に腰を下ろして青年に言った。
「何を驚いておる、青年。儂の尻尾を見れば分かる筈じゃ。長い間生きていれば能力の一つや二つ覚えるものじゃ。」
青年は言われたように猫の尻尾を見た。
猫の尻尾は二つに分かれている。これは猫又、というものだろうか。
「見たように儂は猫又じゃ。もう100年は生きているかの。ずっとこの神社におった。皆からは『かみさま』と呼ばれておる。」
尻尾を揺らしながら猫又は言った。
続けて青年が言う。
「え、と、かみさま?でいいのかな?僕の願いをなんだって?」
猫又は手を舐めながら答える。
「だから叶えてやると言うておるんじゃ。お主の願いはそこの者から聞いておる。」
「僕の願い?」
青年は反復する。そして、続けて言う。
「僕に願い事なんて無いよ。僕なんか忘れてくれ。じゃあな。」
青年は「自分は疲れているのだ」と思い始め、いち早く家に帰ろうとした。
瞬間、声が聞こえる。
「それじゃよ。お主の願いは。」
青年は出しかけた足を引っ込めた。
猫又は続ける。
「お主の話は全部聞いておる。こいつも寝てるようで変なところはしっかりしておるからな。お主が他人との関係に悩んでいることも聞いておる。消えたい、忘れられたいと思っていることもな。そこでそれを叶えてやろうというわけじゃ。」
青年は考えた。確かに「消えたい」と思っていることも事実である。何より没個性を嫌っていた青年にはとても魅力的に思えた。
猫又に消されるなんて、そうそうあることでもあるまい。
「しかし、ただでとは言えん。儂は願いを叶える代価としてその者にまつわる物をお供え物として戴くことにしている。そうじゃな、お主には4つの物を探してきてもらいたい。1つ目はお主の父が書いた絵。2つ目はお主の母が作った玩具。3つ目はお主が書いた手紙。4つ目はお主が祖母にもらったお守りじゃ。」
猫又はそう言うとトラ猫と同じように丸くなった。
「4つ集めて持って来ればいいんだな」
青年は問いかけた。
しかし、猫又の答えは少し予想とは違っていた。
「いや、持ってくるのは3つで良い。4つ持ってきたら願いは取り下げよう。」
どういうことだろうか。供え物なら多い方がいいと思うのだが。
まあ、神様本人が言っているのだからそれで良いのであろう。
疑問を覚えつつ青年は言う。
「わかった。とりあえず3つ持って来ればいいんだな。」
「ああ、言い忘れておったわ。期限の話じゃ。そうだな。猫には9つの命があるという伝説があるそうじゃ。そこで猫になぞらえて9日間にしようかの。」
一度頷くと、青年は帰路へと着いた。