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ジェシーと俺はレベル上げをするためにまた、あの森に戻って来ていた。
今回はジェシーが居るから、あまり目立たないように、急所は狙わずに普通に戦うことにする。
その方が、攻撃の回避力が上がるから、自分の死ぬ確率が格段に下がるだろうし。
と言うかやっぱり酷いよ。防御力1って。紙装甲にと程があるだろう。
でも、俺は一人じゃない。ジェシーが居るから、援護に期待をしておこう。
あ、でも取り敢えずジェシーに一言は伝えておかないと行けないな。
「ジェシー、ちょっと良いか?」
「どおしたの?」
「俺は職業上の関係で一撃でもいや掠りでもすればすぐに死んでしまうから」
「どういうこと!?」
ジェシーが目を見開いて驚いて居るが、そう言うことです。
「よし、じゃあ行くぞ!」
「ちょっと~。ちゃんと説明してよー」
俺が誤魔化すように先に森に入っていくと、ジェシーが慌てて俺の後を追ってきた。
森の中を歩くこと数分、俺の【気配察知】に2つのモンスターの気配が引っ掛かった。
多分だが…
「ジェシー、この先ちょっと行ったところにゴブリンが2体いるはずだ」
「分かったわ」
それから俺とジェシーは気配を消して反応が有ったところに行くと、俺の予想通りにゴブリンが2体で会話みたいなのをしていた。
「ジェシー、1体は任せても良いか?もう1体は俺が相手するから」
「ええ、分かったわ」
話し合いを終えて、ジェシーが弓を構えて、矢を引き始めてから俺は少しずつ気配を消して背後から迫った。
幸いにも、ゴブリンたちは俺達にまだ気づいて居なかった。
ヒュっ! ドス!
「ギァア!」
ジェシーが矢を放つと、寸分違わずにゴブリンの目に矢が突き刺さった。
いきなりの襲撃に驚いて固まっている、もう一体のゴブリンに俺は頭を手で押さえて、首を切りつけた。
すると、ゴブリンはポリゴンと化して消えてしまい。ジェシーの方を見ると、残ったゴブリンにもう一本矢を反対の目に向かって放っているところだった。
もちろんのこと、この矢もゴブリンの目に突き刺さり、ゴブリンはポリゴンとなって消えてしまった。
後はそこにゴブリンのドロップ品が落ちているだけだった。
ゴブリンの牙《素材》
ゴブリンの牙。色々な素材に使える。
ゴブリンの耳《素材》
ゴブリンの耳。防具の素材として使える。どこで使うかは鍛冶師次第だ。
【腕力上昇】lv.1
力が上がる。
おっしゃー!
二つ目の使えるスキルだ。俺はすぐに【体当たり】からさっきとったスキルを入れ換える。
俺はジェシーの所に戻りながらさっきの戦闘のことを思い出していた。
今のところの俺のプレイスタイルって死神と言うよりアサシンじゃね?
後ろから気配を消して忍より、命を刈り取る…うん。どう考えてもアサシンだ。
「お疲れ。ジェシー」
「うん。アリエスもお疲れ」
ジェシーを労うと、労い返された。
別にそこまで疲れては居ないんだけどな。
「よし、次行くか」
「うん。そうしよう」
ジェシーと一緒にもう少し森の奥に行くことにした。多分だが、森の敵は奥にいけば行くほど強くなっていくと思う。
それに、ジェシーと始めてあったのはここよりもう少し行った所だったしね。
「それにしてもジェシーは流石の一言だったな」
「そお?」
「ああ動いて居ないとは言え、30メートルくらい離れていたのに余裕で目に当てるんだからな。初心者だったらそこまで上手くいかないだろう」
周りに【気配察知】で警戒しながらジェシーと談笑しながら森の奥に進んで行く。
「やっぱり慣れかな。私も最初は生き物に矢を放つなんて初めてだったから少しだけ緊張したし、躊躇ってしまったよ」
そういうもんなのだろうか?俺はあまり躊躇いはしなかったけどな。
緊張はちょっとだけしたけど。
「それでもやっぱりすごいよ」
「そうかな?褒めてくれて有り難う」
ジェシーが謙遜するが俺が「すごい、すごい」とれんこすると、遂には照れて顔を少し赤くしながらモジモジしていた。
少し、可愛いなと思ったが内緒だ。言ったら言ったでさらに顔を赤くするだけだと思うけどな。
そんなやり取りをしているとまた、【気配察知】に反応があった。今度は4体だ。
「ジェシー。この先に4体反応があったが、どうする?迂回するか?」
俺がジェシーに相手するかどうか訊くと少し考える素振りを見せてから、
「いや、倒そう」
「分かった」
倒すそうだからまた俺達は気配を消して、反応の会った方に行くと、ウッドパペットがいた。
ちょっと分が悪いかな。
何故なら、ウッドパペットの4体の内2体が弓矢を装備していたからだ。
残りの2体は剣だったが。
「どうする?」
「うーん…私が離れた所から弓矢で援護するからアリエス、なんとかしてくれない?」
おい。結局人任せかよ。
俺がジェシーをジト目で見ると、ジェシーは顔を逸らしながら乾いた笑いを浮かべた。
「はぁ…分かったよ。援護は任せたぞ」
「うん。任せて!」
ジェシーはあまり無い胸を反るように張って偉そうに言った。
相手は先生だがちょっとだけイラッとしたからこの後頭グリグリの刑に処そう。
「じゃあ、行ってくる」
「頑張って!」
イラ。
うん。まじで後でしよう。
俺はもう、目先のウッドパペットより後でジェシーにお仕置きをするという気持ちの方が大きかった。
さっきのゴブリンの時と同じように気配を消しながらウッドパペットの背後をとり、まずは弓矢を持ったやつから倒す。
いきなりの奇襲に驚いていたが、俺がもう一体に攻撃する前に我に返り、剣を持ったやつが切りつけてきて、後一歩の所で攻撃できなかった。
その隙に弓矢を持ったやつには逃げられて、距離を取られたが、ジェシーがなんとかしてくれるだろうと思い、目の前の2体に集中することにした。
今回は2対1と初めての経験だが、これも良い練習になると思い、あえて、一撃で倒さないことにする。
俺は立ち回りをしっかりと考えて、相手を全員しっかりと視界に入れるようにする。
少しずつ、相手との距離を詰めて、一気に詰より、攻撃を仕掛ける。
が、剣で受け止められて、その隙をついてもう一体が剣で攻撃してくるがすでに離れていて当たらなかった。
それを皮切りに、ウッドパペットが2体同時に俺に攻撃をしてきた。
しかし、それをすべて捌くかかわしていた。
数十回と打ち合っている内にジェシーが弓矢を持ったやつを倒していて、やっと俺の方にも援護が来た。
そのあとはジェシーの援護もあり、楽に2体とも倒した。
と言うか、今回は結構疲れた。やっぱり慣れない内は複数対1はするもんじゃないな。
俺は一撃も食らってはいけないからなおさら気を張らないといけないし。
「アリエス、大丈夫?」
俺がその場に座り込んでいると、ジェシーが近付いて来て、心配そうに訊いてきた。
「ジェシー、ちょっと来てくれ」
「え?何々?私に出来ることなら何でも言って?」
俺が笑顔で手招きしてジェシーを呼び、俺の目の前で目線をあわせるようにかがんだ所で俺はジェシーの頭をグリグリとした。
「アリエスっ、痛い、痛いよ!」
「援護には感謝しているが罰だ」
「何で!?」
少しの間、ある森で若い少女のような悲鳴が聞こえてきていた。
お仕置きをして、ある程度スッキリした俺は頭を押さえて涙目で踞っているジェシーに声をかけた。
「いつまでそうしている、早く行こうぜ?」
「ぐすっ。誰のせいなのよ」
訂正、ガチ泣きしていた。
顔だけを上げて、俺にジト目で睨んでくるジェシー。流石に泣かれるとは思わなかったから少しだけバツが悪そうな顔をしながら俺は頭をかいた。
「それは、俺が悪かったよ。謝るから泣かないでくれ」
「な、泣いてないもん!目から汗が出ているだけだし」
乱暴に目を拭ってから子供みたいな言い訳をするジェシー。
「はいはい、泣いてないよー」
「絶対にバカにしているよね?」
「そ、ソンナコトナイヨー」
俺は顔を逸らしながら少し片言になってしまった。ジェシーが更なる磨きかかったジト目で俺を見てくる。
「よ、よし。次に行こう!」
「誤魔化した」
俺は誤魔化すように前を向いて歩き始めた。
だから俺はジェシーがクスクスと微笑んでから俺の後をゆっくりと追いかけて来ていることに気付いて居なかった。