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次に見てたのは当り一面が真っ白な空間だった。
「ここは、キャラクター作成的なことをするところか?」
そうあたりをつけ、回りをキョロキョロと見渡してから少し動いてみた。
動けたことから別にそこに縛られている訳ではないらしい。
『遅れてすみません』
「うぉっ。ビックリした」
いきなり声を掛けられてビックリした。
「君は?」
『はい、私はAIのリリィと言います。ちょっと、用事があり遅れてしまいました。スミマセン』
「謝らなくていいよ」
リリィが頭を下げてくるが、慌てて頭をあげるように伝える。
『それではキャラクターエディットを始めます。まずは容姿を決めて下さい』
リリィがそういうと俺の前に現実世界での容姿が写し鏡のように出てきた。
それを見て改めて思う。
俺って髪の毛長いなぁーっと。
そこに写っている俺は、身長163㎝と平均男性の身長より低く、そして顔の半分くらいが前髪で隠れてしまっている。後ろも肩より少し長いくらいだ。
しかし現実では髪が目に入るのが嫌だから普段は眼鏡をしている。
髪を切れば?って思われるかも知れないが、何故か悠と姉さんと母さんに「切ったらダメ!」と言われて切れないでいた。
理由は聞いても教えてくれなかった。というか母さんにもそう言われるとは思わなかった。
だから俺は、せめてゲームのなかだけでもと、前髪は目にかからないくらいの長さにして後ろは今より少し長いくらいにして、色は銀髪で目の色を紅色にしてそれ以外は弄らなかった。
『次にキャラクター名を決めて下さい』
リリィがそういうと俺の目の前に半透明の入力画面とパソコンのキーボードのような物が出てきた。どうやらこれで入力するらしい。
さて名前だが、もう決まっている。
『かしこまりました、次は種族を決めて下さい』
この『ANOTHER WORLD』では人間、獣人、魔族、エルフ、ドワーフ、魚人、神族、天使、悪魔と十種類の種族に別れている。
しかし、その中で神族と天使、そして悪魔はランダムをして運が良くないと当てられないと言われている。
種族による違いは容姿だけだ。まぁ、もしかしたら他にもあるかもしれないけどな。
その中で俺はランダムをする。だって、その方が面白そうじゃないか。
『かしこまりました、種族は"神族"に決まりました』
マジで?
俺は自分の運の良さと驚きで固まってしまったが、リリィはそんな俺を置いて先に進む。
『では次にジョブを決めて下さい』
その言葉で俺は我に返った。
この際種族はもういいや、次にジョブだがジョブはゲームの中の職業で、普通のRPGのような剣士や魔導師などといったものからレアジョブとして勇者や賢者があり、ネタジョブとして無職、花屋、酒屋のマスター等が全部で500種類以上あるらしい。
そして、一つ一つのジョブには必ずしひとつは固有スキルが付く。たとえば剣士なら【剣術】又は【二刀流】、などといった剣士特有のスキルが付く。
運がいい人は2つから3つ、最高で5つ付いていたらしい。(と、周助が言っていた。)
それで俺はまたランダムをする。
『かしこまりました、ジョブは"死神"に決まりました』
なん…だと?
本日二度目の驚愕。
あれ?俺ってこんなに運とかって良かったのかな?
絶対に死神ってレアジョブだよね?
『では、次にスキルを決めて下さい。』
まだ、驚愕から立ち直っていないのにリリィが更に追い討ちをしてくる。
リリィさんもう少し時間を下さいよ。
それから少しして、「いいや!」という気持ちになりスキルを決めた。
俺が選んだスキルは【鎌】【回避】【高速思考】【隠密】【索敵】 だ。
【鎌】は死神といえば鎌というイメージの偏見からで【回避】は敵の攻撃をかわしやすくするためだ。
【高速思考】は少しでも戦闘に役立つかな?という気持ちから、【隠密】はこれも偏見だけど、死神って気配を消して背後から一瞬で命とか刈り取るってイメージがあるからだ。
【索敵】も敵の奇襲を無くすためということと敵を見つけやすくするためだ。
『かしこまりました。これでキャラクターエディットを終了します。それでは『ANOTHER WORLD』をお楽しみ下さい』
その言葉を聞いてから俺の視界が暗転した。
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いつの間にか、俺は街の噴水の前に立っていた。
俺はいきなりのことでビックリして回りをキョロキョロと見渡したけど、それから少ししてここが『ANOTHER WORLD』の中だということに気がついた。
そして、俺は実際にやってみて思ったことがある。それはーー
「現実と全然変わらないな」
そう、本当にゲームの中にいるのかわからなくなるほど忠実に再現されていた。
街の中の喧騒も肌に感じる微かな風もどこからか漂ってくる料理の匂いさえもリアルで本当にゲームの中なのか疑ってしまいそうになる。
「凄いな」
俺はいつの間にかそう呟いていた。
あれから少ししてから俺は噴水の前から動いて近くにあったベンチに座って、ステータスの確認をしていた。
俺のステータスはこうなっている。
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ネーム アリアス
種族 神族
ジョブ 死神
装備 死神シリーズ、死神の指輪、死神のネックレス、死神の鎌
スキル
【鎌】lv.1【回避】lv.1【高速思考】lv.1【隠密】lv.1【索敵】lv.1
固有スキル
【デス・サイズ】【必殺】【暗黒魔法】lv.1【影魔法】lv.1【カウンター】【透過】lv.1【神眼】lv.1
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…俺はもう驚かないぞ。
でも、わからないスキルがあったから説明が出ないかタップしてみた。
【デス・サイズ】
死神の固有スキル。これはどんな生き物だろうが命があるのなら必ず命を刈り取る事が出来る。クールタイムは24時間。
【必殺】
死神の固有スキル。急所に攻撃した場合、その生物は即死する。
常時発動。
【暗黒魔法】
魔法スキルのひとつ。暗黒魔法が使える。
【影魔法】
魔法スキルのひとつ。自分の影を操れる。
【カウンター】
カウンターができるようになる。常時発動。
【透過】
ゴースト系固有スキル。体を一時的に透明にする。その間、攻撃は全部すり抜ける。
壁、扉はすり抜けることは出来ない。クールタイムは一時間。効果は一分。レベルが上がると効果時間が伸びる。
【神眼】
神の眼。任意発動。
おい、最後!
説明がそれだけか!?説明だけ見ると一番使えないスキルに感じるんだが気のせいか?
まぁ、いいや。
他のスキルがチートだから一つくらいは【神眼】みたいなスキルがあってもいいと思う。
もしかしたら他のスキルのようなチートかも知れないが気にしない。
「というか、死神シリーズってなんだよ」
どこかで今の格好を見れないだろうか?
それと、気のせいだと思うけど、なんか周りの人にすごい見られているような気がするけど…やっぱり気のせいだな、うん。
「って噴水のところで見ればいいか」
そう思ったら即行動。
さっきの所に行き、噴水を覗き込んだ。
そこには、目深のフードのボロボロのローブを纏い、骨のような仮面を着けた俺がいた。
………はい?
ちょっと、待って…えっとこれが俺…だよな?というかこれが俺の今の装備だよな?
まだモンスターと戦っていないよ?なのに何でこんなにボロボロなんだ?
あれか?やっぱり、死神のイメージってボロボロのローブを着ているって思っているのか?
だったら全世界の死神さんに謝れ!
何処かに綺麗なローブを着た死神がいるわ!というかこれを装備するはめになっている俺に謝れ!
ハァ…ハァ…すまない、ちょっと取り乱した。
だってさ、スキルはあんなにチートっぽいのがオンパレードだったのに装備はこんなに貧相なんだよ?
取り乱しもするさ。それと、仮面についてはスルーでお願いします。
取り敢えず外しておきます。いつか着けるときがあるかもしれないからとっておくけどさ。
すると、さっきより周りの人にジロジロ見られるようになった気がした。
何でだ?
気になったからその仮面を凝視してみる。
死神の仮面 《死神専用装備》
死神が良く着けていると言われるお面。認識阻害の効果がある。
あ、なるほど、これをつけていたお陰であまり見られてなかったけど、やっぱりこれを外したせいなのか。
なるほど。…はあぁぁぁぁ!?
ちょっと待って、何?認識阻害って。何でちょっと凄そうな効果がこの装備についてんだよ。
あれだよね?これって生産職の人に頼んでたけてもらったり、中盤くらいに出てくる装備の効果だよね?
いいのか。こんな初期装備として貰っても。
それと、俺って【鑑定】って持っていないよね?何で装備の効果が見れたんだ?
…うん。分からないからいいや。見当は付いているんだけど、確証はないし。今はラッキーということにしておこう。
それから俺は噴水の前から移動して、道具屋で回復薬を3個買ってから街の外にレベル上げをするために出た。
回復薬は1つ300セルもした。
因みにこのゲームで最初に貰えるお金は1000セルである。だから残り100セルしかない。