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深夜学級

作者: 霧摩 黄泉

初の短編です。どうぞ暖かい目で見守り下さい。

 僕の名前は月城つきしろ 悠磨ゆうま。怖いのは大の苦手で皆には臆病者と言われている。お化け屋敷に入った時なんかは怖すぎて逃げ出したくらいだ。

 そして、これから話すのはそんな僕と友達が体験した身の毛もよだつような話。


 *


「今夜、皆で肝試ししようぜ」



 ある日の昼休み、そんなことを突然言い出した奴がいた。佐伯さえき 真弘まひろ。彼は社交的で誰とでも話せる。僕が転校してきた時、真っ先に話しかけてくれたのも真弘だ。


 だが、1つ欠点がある。それは好奇心旺盛なことだ。別に何ら不思議ないかも知れないが彼の場合、好奇心旺盛過ぎて皆が振り回されるということが多々あった。

 この時も皆、(またか)と声には出さないが思っていたに違いない。今までもろくな事にならなかった。


 キンコーンカーンコーン


 チャイムがなり、皆席に戻ろうとすると真弘が皆を呼び止めて一言言った。



「じゃあ、今夜11時に校門集合な」


 *


 その日集まったのは結局5人だけだった。俺、真弘、インテリ系の瑞季、見るからにがさつな陽子、物静かな楓、以上の5人だ。

 まぁ、一番よくつるむ5人だ。いつものメンバーといえばそうだろう。



「よし、じゃあ行くぞ」



 真弘が仕切って門を超えて深夜の学校に侵入する。



「皆一緒に行こう、ね」



 楓の提案に僕は真っ先に賛成した。真弘以外は全員賛成のようだ。



「たく、わーったよ。悠磨、お前は俺の傍にいろ」

「なんで?」



 意味がわからなかったがとりあえず真弘についていくことにした。深夜の学校は真っ暗でとても不気味だ。今にも何か出てきそうな感じだ。

 階段を上り2階に着く。真弘は暗い廊下をどんどん先に行ってしまう。



「真弘、もうちょっと遅く歩いた方がいいと思うよ。ほら、後ろも……あれ、いない」



 先ほどまではちゃんと気配がしていたのだが後ろを振り向くと暗闇しか見えなかった。そこまで早くはなかったと思うが……。不安がより一層、恐怖を煽る。



「皆いないよ。引き返そうよ……」



 キャーーーーーーーーーーーーーーーー!


 僕が恐怖で真弘の袖を引っ張っていると突如背後から悲鳴が聞こえた。



「あの声は、楓か!行くぞ、悠磨!」

「待ってよー」



 真弘は来た道を折り返し走っていく。僕も遅れないようについて行く。暗闇の廊下を走っていくと階段が見えてきた。

 そこに人影が見えた。楓が壁に寄りかかって涙目になっている。



「楓、大丈夫か!?何があった!?」

「ぁ…………」



 楓は無言で3階の方を指さす。ふと、瑞季と陽子がいないことに気づいた。



「……行くぞ」



 楓が指差した3階へと向かう。一歩一歩慎重に登っていく。

 階段を上りきり、廊下を進もうとしたその時、ふと背後から視線を感じた。後ろをチラ見するとこちらを凝視する二つの目があった。



「ねぇ、真弘。早くここから出た方がいいんじゃないの?」

「何をそんなにビビってんだよ!」

「だって、後ろ……」

「後ろがどうしたっていう……」



 真弘が後ろに振り向き、僕もつられて向いてしまう。そこには白いワンピースを来た髪の長い女性がいた。全身血塗れで足がなかった。



「「ぎゃーーーーーーーーーーーー!」」



 僕と真弘は恐怖ですかさず走り出していた。どう見てもこの世のものではない。誰が見てもそう思うだろう。

 何故か外は月光も街灯もなく真っ暗だ。瑞季達も見つからない。



「こっちだ!」



 真弘に手を引かれ、教室の中へと入りドアを閉める。



「はぁ、はぁ、なんなんだ、あいつは」

「さ、さぁ。それより、これからどうするの?」

「とりあえず、机の影に隠れてやり過ごそう」



 僕達は窓側の机に隠れる。恐怖で心臓が止まりそうだ。


 バタン


 教室のドアを開ける音が聞こえる。一つ一つ確かめているようだ。


 バタン!


 徐々に大きくなってくる。確実に近づいてきてる……!


 バタン!!


 音は隣からした。もうすぐそこだ。今すぐにでも逃げ出したい気分に駆られる。

 だが、僕達がいる教室が開く気配はなかった。



「行ったか?」

「みたい、だね」



 音は一切聞こえなくなった。ほっとした僕たちは腰が抜けてしまい壁に寄りかかる。



「本当、なんだったんだろうね」

「まぁ、とりあえず一安心だな」

『みぃーつけた』

 「「うぁぁぁーーーーーー!」」



 足元から声がして、そっちを見ると先ほどの女性がのぞき込んでいた。

 僕はその場から逃げ出そうと立ち上がったが、真弘は一切そんな素振りを見せなかった。それどころか何かに引きづられているようだった。



 「ゆ、悠磨……!」



 真弘の足の方を見ると真弘の足首を白い手が掴んで引っ張っていた。向かう先は暗闇、無だ。



 「俺は、いいから、逃げろ!!」

 「真弘!!」



 僕は必死に手を伸ばす真弘の体を引っ張った。



 「今助けるから!!」



 力一杯引っ張るがビクともしない。それどころかもう連れ込まれる寸前という所だ。



 「もういい!手を離せ!でなけりゃ、お前も――!」

 「嫌だ!絶対に離さない!」

 「でも……!」


 「嫌だといったら嫌だ!真弘は、転校してきたばっかで誰とも話せなかった僕に真っ先に話しかけてくれた。僕にとっては親友も同然なんだ。だから……真弘から離れろーー!!」



 最後の力を振り絞ると白い手は消え、暗闇も消えた僕の声が通じたのかな?ってそれは流石にないか。



 「もうここから出よう!」

 「おう!」



 僕は真弘の手を引き、必死に走る。階段は上から血の滴や髪の毛などが落ちてきたりした。髪の毛はまるで生きてるかのように僕達を追ってくる。2階にいたはずの楓もいつの間にかいなくなっていた。

 

 あちこちにシミなどが浮かび上がり、まるで学校その物が生きているような……。



 「出口だ!!」



 玄関にたどり着き、急いで扉を開けようとする。が、押しても引いても開かない。鍵もっと締まっている様子はない。

 それに外も先ほどと何ら変わらず真っ暗だ。校舎だけ、別の空間に取り残されてしまったかのような。



 「ちょっとどいてろ」



 真弘が僕をよけて玄関に体当たりをする。が、何度やっても扉が開く気配はない。

 そんな時、天井から水滴が落ちてきた。



 「冷たっ!」

 「どうした?」

 「いや、なんか水滴、が……」



 手で拭ってみると真っ赤な液体だった。水滴じゃなく血の滴だ。気になって天井を見上げる。真弘も同じ感覚を感じたのか、天井を見る。


 そこには長い髪を垂らした血塗れの女性が天井にぶら下がっていた。長い髪はどんどん伸びてくる。先ほどの滴はこの髪からたれていたようだ。



 「「うぁぁぁーーーーーー!」」



 記憶はそこで途切れた。

 翌日、学校で昨夜の件を真弘が皆に話していた。生憎、楓達は昨夜の記憶がないらしい。それどころか行ってないという。

 もしかして、あの楓達も……。


 *


 あれが夢だったのか現実だったのかは定かではない。だが、僕と真弘の仲が深まったのは確かなようだ。


 僕も昨夜の件で変われたのかもしれない。あの時は真弘を助ける事に集中して自分が臆病なこともすっかり忘れていた。


 後で聞いた話だと、この学校で昔1人の女生徒がイジメで亡くなったらしい。



 「今度、近所の寺で肝試ししようぜ」



 真弘の好奇心は相変わらずのようだけど僕はそこも真弘のいい所だと思う。まぁ、あんな事はもう懲り懲りだけど。



 「そん時は百物語付きな」

 「いいじゃん、やろうよ!」



 皆、僕の反応に驚いた様子だった。それもそのはず、お化け屋敷で逃げ出すくらい臆病だったやつが肝試しにのっているのだから。



 「おう、よくぞ言ったぜ心の友よ!」



 あの一件で僕の臆病もちょっとは改善されたのかもしれない。いつか臆病者と言われない日も来るだろうか。




 この学校には今も女生徒の霊がさまよっている。あの霊もいつか必ず成仏できる日が来ると信じ、霊の安眠を願おうと思う。

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