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49.潜入作戦

※20151206 改行位置修正

「はぁい」


 金髪美人のルーに化けたピコはドラジェの館にいた。まだ営業時間のため、ドラジェは二階の執務室の机にかじりついて書類をさばいている。


「なんじゃ、お前か。何かあったのか」

「ええ、トラントンでちょっとね」


 キーファの離脱と『荷物』の紛失を伝えるために、ルーとして乗り込んできたのだ。そして今後の情報を手に入れるために。

 トリエンテに入城する際には馬車のリュウ達とは別に馬で戻ったし、監視の目があったとしても裏はかけてるはずだ。


「トラントンの?」


 眼鏡をずりあげ、ドラジェは顔を上げる。この様子だと、キーファの件はまだ耳に入ってないようだ。


「ええ、依頼された『荷物』の警護、トラントンの指定の場所に行ったらいなくってねぇ。管理人の爺様に聞いたら担当者とかいうキーファが馬車で連れだしたって。十日もすれば食料補給に戻ってくるって話だったんだけど、十日なんて待ってられないじゃない? だから探しに行ったのよね。そしたら……馬車が大破してるのを見つけちゃったのよ」

「何……? で、荷物は」


 眉根を寄せてルーを睨んでくる。


「さぁ、木箱とかも含めてばらばらになってたわよ。そのキーファってのもいないし、『荷物』らしいものも見当たらないし。どうなってんのよ」

「あやつめ……」


 そう言うとドラジェは机に視線を落として苛々と爪を噛み始めた。


「馬がいなかったから、盗賊か何かに襲われたのかもしれないけど。そのキーファっての、信用できる人間なんでしょうねえ。『荷物』を横取りされたとかじゃないわよねぇ」

「この辺りに盗賊はおらん。いるとしたらわしの子飼いぐらいじゃ」

「ふぅん……じゃあ、キーファってのが『荷物』持って逃げたってことかしらね。そんなに価値のあるものなの? その『荷物』って」

「――とある高官に献上する予定だった女じゃ。黒髪黒目の白い肌の女は王都ではなかなか手に入らんのでな」


 ルーはぎりっと拳を握った。やはり――そういうことか。


「それにしても――まさかあやつ、手を出して傷物にしたんじゃあるまいな……今まで捕獲した便利屋は全員男だったが、初の女であったし、妙に執着しておった。女の監視のためにトラントンに行ってしまうし、その後の工作のために人手を他所から借りねばならなくなったのじゃ」

「あらま。そのキーファって結構有能だったの?」

「ああ、他人を意のままに操れる能力の持ち主での。闇ギルドにも属さぬはぐれ者だったのでちょうどよかったんじゃがのう。闇ギルドの人間を使うとギルドへの支払いが途方も無いからの」

「なるほどねぇ」


 闇ギルドの話はルー=ピコも知っている。黒角族ディードのような暗殺などを専門に請け負う裏稼業を生業とする者達のギルドだ。ギルドに依頼を出すことで、適切な人材が派遣されてくる代わりに、その費用は口止め料も含むのでべらぼうに高い。

 キーファは黒角族ディードじゃないと主張していた。おそらく光の羽を持つ種族との混血なのだろう。黒角族からは同胞と見なされず、闇ギルドに所属することもできなかった、というあたりか。

 しかし、他人を意のままに操れる、というよりは肉体を制御するだけの能力だとピコは思う。精神を操れるなら、リュウの右腕だけ動かなくなる、ということはないだろうから。


「さてと、で、結局あたしの仕事はナシになっちゃったし、後金はもらえないわけよね?」

「うむ、そうじゃのう。しかし、キーファの件はこちらの見込み違いでもある。後金は支払おう」

「あら、助かるわ」


 嬉しそうに両手をすり合わせると、ドラジェはコインの入った袋を机に置いた。


「で、次は? 王都に行く際の護衛はまだ先なのよね?」

「ああ、そうじゃな。その前に客が来るからその護衛に回ってもらおうか」

「はいな。いつ?」

「三日後じゃ。詳しくは前日に説明する。夜にでも来てくれ」

「わかったわ。もし何か緊急の連絡が必要なときは、門近くの狼亭の大将に連絡してくれる? あそこの二階があたしの定宿なの」

「わかった」


 机の上から袋を取り上げると、ルーは満足そうに微笑み、踵を返した。

 三日後に備えて、準備しなくちゃね。

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