表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/154

22.商業ギルドへ

※20151206 改行位置修正

 あたしは手を止めて、封筒の宛名を見つめた。


「じゃあ、当ててみて」

「その封蝋の色は珍しいからね。王都の商業連合からだろ。それでもサーヤに託したってことは、急いではいないけど機密性の高いものってことかな」

「便利屋を使う方が気密性が高いの?」


 トリムーンには郵便制度はない。その代わり、都市や村をつなぐ辻馬車に荷物や手紙を預けることはよくある。機密性の高い物や手紙はこういう手段を取れないから、信頼の置ける人物に持たせて、傭兵を雇うのが一般的だ。

 あたしが請け負うのは辻馬車ネットワークを使うといつ届くかわからない遠方への配達が多い。


「本当に大事なもので届ける期日が決まってるものなら腹心の部下に持たせて護衛を付けるのが普通だけど、期日がないものなら、便利屋を使うのも結構アリだよ。教会でもよく利用してるからね。サーヤの場合は召喚者だし、こっちにいない間の荷物は最も安全な状態でしょ?」

「確かにそうね。でも今回みたいに突発事故はあるし、荷物を紛失することだって……あるかもしれないわよ」

「そういう便利屋は淘汰されていくからねえ。サーヤはあるわけ? 荷物をなくしたこと」

「ないわよ。あたしは人の通らないルートを行くことが多いから、山賊に遭うこともなかったし」


 その代わりにリュウに遭遇したわけだけど。


「だから機密性の高い手紙を託されたんだと思うよ。そういう情報は結構共有されてたりするからね。商業連合からってことはトリエンテの商業ギルド長宛、期日を指定しないけど機密性の高い手紙ってことは……結構ダークな手紙かもね」

「ダーク?」


 意味わかんないわよ。


「トリエンテの商業ギルドのトップはねえ、王都に店を出したくて色々手を回してたからねえ。その関係の手紙だと思うけど。ま、運ぶだけの便利屋には関係ない話だけど、時々いるんだよね。その運び手まで始末しようとするのが。気をつけてね、サーヤ」

「わかった。忠告ありがとう。……多分当たりだと思うわ。トリエンテ商業ギルド ハーリ・ドラジェ宛」

「今から行くの?」

「ええ、仕事はとっとと終わらせる主義なの」

「そっか。……イーリン、道案内してくれる?」

「ピコ様?」

「え?」


 あたしとメイドのセリフがかぶる。あわててあたしは手を振った。


「い、いいわよ。場所さえ教えてもらえば。というか、イーリンさんは教会の人間だってわかってるんでしょ? 一緒についてくるといろいろ面倒になると思うわよ。便利屋あたし一人で動いたほうが助かることもあるし」

「でも、それを言うなら教会の裏口から出入りしてる便利屋ってだけでチェックはすでにされてると思うよ。教会の人間がついてったほうが、あちらとしても手を出しにくいだろうし」

「ピコ、それはありがたいけど……大丈夫よ。今までそんなことは一度もなかったし。手を借りるわけにはいかないわ」


 それから、イーリンを見る。相変わらず冷めた目でこちらを見ている。うん、この人に取って大事なのはピコなのね。


「イーリンさん、っておっしゃいましたね。道順だけ、教えていただけますか?」

「サーヤ!」

「分かりました。ではご案内いたします」


 イーリンさんが先を歩いて行く。あたしはピコに手を振って、木戸から出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ