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あたしの王子様がいつまで経っても来ない ~夢の中でも働けますか?  作者: と〜や
1月17日(月)

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101.共闘

※20151206 改行位置修正

 ルーは今日も昼のお弁当を配って馬車に戻る。

 今回も銀の馬車のほか、騎馬隊への弁当は特別製だった。配っている時にケインに抱きつかれそうになったけど、弁当を盾にしてやりすごした。

 そういえば休憩時に天幕を張る回数が減った気がする。宿場からの弁当があるときは銀の馬車に配達するだけで済むのは時間の短縮になる。天幕の設営と撤去って結構手間がかかっていたから、もしかしたら予定よりは前倒しで王都に入れるかもしれない。


 ――ともかく、昨日受け取れなかったイーリンの報告と諸々の伝言は今日必ず受け取らなければ。


 少し重い頭を振り、馬車まで戻ると自分の弁当を受け取って近くに腰を下ろした。


「おつかれさん」


 ザジがわざわざ第一の馬車からやってきた。


「なんだ、さっそく行動開始か?」


 すでに隣に陣取っているグリードに揶揄されてザジは口元を歪める。


「悪いか? 恋なんざアプローチしてナンボだ。食い終わったんならとっととどけ」

「冗談」


 反対側の隣はラティーが、後ろにはウェインが座っている。

 ザジはため息をついてルーの正面に座った。


「そういえばさっき、ドラジェからお前を呼べと言われた」

「は?」


 弁当を開けながら言うザジの言葉に、ルーはそれだけ口にした。呼ばれるような覚えはないはずだ。

 いろいろやらかしているような気はするが、どれもドラジェに伝わっているとは思いにくい。とりわけ――賭けと性欲処理係オンナにまつわる話は。


「飯食ってからでいいらしい。馬車を訪ねろってさ」

「――へっ? 馬車ってあの銀の馬車? 誰も寄せ付けないようにしてるのに、来いって?」


 ルーは眉根を寄せた。

 ありえない。

 馬車にはあの『ラフィーネ』がいる。連れているのが誰なのかを知られたくなくてあれほど必死に隠していたくせに、いまさら何の用事だというのだろう。


「わかった、まあ行ってみるよ」

「今日も夜警は騎馬隊の担当だ。眠いならタンゲルに言えってさ」


 その言葉にグリードが身じろぎした。


「おま……その話」


 ザジはラティーとウェインを指差した。


「あんたらはルーと同じ馬車だろう? なら、仲間に引き込んだ方が隠すより楽じゃないか。違うか?」

「えっと……よくわかんないけど、で、何の仲間?」


 ルーはちらりと隣のラティーを見る。面白そうなことに敏感なラティーは楽しそうに目を輝かせていた。


「この馬鹿女を守る仲間、かな。この馬鹿、思いついたことを後先考えずにやり始めるからさ。あんたらもこいつに惚れてる口だろ?」

「ザジっ、人を馬鹿女よばわりするなっ」

「まあ……見てて飽きねえよな」


 振り向くと、ルーの頭に手を置いてグリードは口角を上げる。


「僕は最初っからおねーさん一筋だよ」


 そう言って、ラティーはまだ食事中のルーの右腕に腕を絡ませてきた。


「ルーはいい匂いがする」


 ウェインの声が後ろから降ってきた。ちらりと肩越しに振り返ると、ウェインはほんの少しだけ微笑んでいる。


「他の奴らに比べりゃあんたらと共闘する方が確実だろうと思ってさ。ぶっ倒れる前に無理やり寝させるつもりだから、その時は協力して欲しい」

「ちょっと、あたしの意志、完全無視してるでしょっ! 次は騙されないわよっ」


 ルーの言葉に、ザジはにやっと笑う。


「そりゃ、好いた女が無理してんの、放っとくわけねーだろ?」


 ルーはため息をついた。


 ――なんか、お芝居以上になってない? ていうか、ボク、そんなにか弱そうに見えるのかな。そりゃ戦闘職のザジに比べりゃ柔いけど。三日ぐらいの完徹、どうってことないのに。


「どうってことないって言いたげな顔してるけどさ。おねーさん、仮眠に入ったらなかなか起きないよね。たいてい野営地に入るまでぐっすりだし。やっぱり疲れてるんじゃない?」


 ラティーの言葉にルーは唇を尖らせた。


「目の下のくま、見ていられん」

「ちょっ……ウェインまで」

「夜警してるのは、夜は安心して寝られないからだろう? 護衛の時にそばで見張っててやるから、限界を感じたらちゃんと寝ろ」


 ザジの手が伸びて来て前髪を撫でる。


 ――なんでだろう、結局のところ守られる者になっているのが歯がゆい。


「そーいえばさ、おねーさん、何歳なの?」


 ラティーの言葉に、ルーはザジをちらっと見た。がザジは特に反応していない。

 さすがに十六とは言えない。便利屋としてそれなりに経験あり、ということになっている。


「ラティー、女性に年を聞くなよ。それやったら一発で嫌われる」

「えーっ、だめなの?」


 グリードの言葉にラティーが声を上げた。


「だめ。女ってのはね、何歳になっても永遠の十七歳でいたいものなのよ」


 ルーはそう言うと笑って見せた。


「さてと、じゃあドラジェさんとこ行ってくるわね」


 弁当がらを集めると、ルーは立ち上がった。

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