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はじまったばかり

「やあなゆ、彦丸くんおかえりなさい」

「え?」


 家につくと、なんとリビングにさっきのサラリーマン鈴木太郎(=魔王タロス)がお茶をすすっていた。


「あらおかえりなさい彦丸。そちらがなゆらちゃん?これからお隣同士よろしくね!とくにこのバカヒコをよろしくお願いします」

「うにゅ。頼まれたにゃ!」

「ナニコレ?」

「ああ、一緒に帰ってきたから、てっきり話を聞いているのかと思ったわ。こちらは隣に引っ越してきた鈴木さん。二年ほどの予定らしいけど隣に住むことになったのよ。だから、今日はそのご挨拶に」

「え?あ?う?」


 窓を開けて外を見てみた。うちとよく似た建売住宅の屋根にスモール・マジデスラ城が乗っかっていた。


「ま、そーいうことなので。よろしく頼むよ彦丸くん」

「な、なにがそーいうことだよ!」

「何を大きな声を出してるの彦丸」

「ん、いいいや、もう鈴木さん帰りたいみたいだよ」

「いや、私はまだかまいませんよ?」

「オイ!」

「仕方ありませんなあ」


 そう言って、鈴木太郎(魔王タロス)となゆらと外に出た。


「おい、タロス!隣に住んでた佐藤はどうしたんだよ?」

「ん、ああ引っ越してもらったよ」

「立ち退かせたのか!」

「いや、心配するな。一等地で満足していることだろう」

「そうか、それなら……よくねーだろ!てか、ここで何してる?」

「あ~、あれです。帰り方がわからなくてねえ。こっちに来た途端、ほとんど魔力はなくなってしまうのでね。逆にどうしましょ?どうしたらいいですかね?」

「知るか!じゃあ、なんで二年なんだ?」

「二年経ったら彦丸くん、あなたは18歳だ。そしたら……ね?」

「あ、ああ~もう、なんでもいいや。今日はつかれたから部屋へ行くよ」

「ワッチもにゃ~!」


 と言って俺について来ようとするなゆらの首をタロス=魔王がつかんだ。


「なにするにゃ!」

「当たり前だろ。婚前のふたりが一つ屋根の下には住めぬが掟」

「ええええええええ~~~~~!にゃ!嫌なのにゃ!」


  --ヤーマカマーダカラーマヤダー

   ダーマラカーマラマーカマヤー --


「え?ジャンゴも来てるにゃ?」

「そうだ。掟だから仕方がないのだ」

「にゅ~~~~魔法であっという間に二年経つとかなかったきゃ?」


 そう言いながらなゆらも帰っていた。首根っこを引きづられながら。


 その晩は深い眠りについた、一ヶ月くらい寝ていたのではないか?というくらいの眠りから覚めて、ぼ~っとリビングに降りていった。


「あ!」


 するとそこにはなゆらが居た。


「なんで?」


「ほら、鈴木さん引っ越してきたばかりで何もないから朝食をご招待したのよ」


 ソファーを見ると鈴木タロスも居た。しっかり新聞を読んでくつろいでやがる。


「あ、いや、おい!も~~~~!俺学校行ってくら~」

「あら、すみませんね~鈴木さん。なにせ難しい年頃で~」

「いえいえお構いなく。私は気にしていませんので~」


 とか言ってやがった。気にしてるのはこっちだよ!

 俺が外に出るとなゆらもついてきていた。よくみればうちの制服を着ている。


「そ、その格好って……」

「にゃ!今日からワッチも江戸川高校の生徒にゃ!」


 なゆらがとびついてきた。


「おい、やめろよ恥ずかしいだろ」

「恥ずかしくはないにゃ、婚約したにゃ」

「そ、それわ……」

「嘘だというにゃ?」

「い、いやあ……」


 こうして俺となゆらの婚約生活がスタートした。

 俺ってまだ16歳なのに、人生終わり…………



 いや……はじまったばかりだろ?



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