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本当の「まじか☆らんど」


「まあ、わかりましたよ先生。信じてもらえるかどうか分からないので戸惑ってましたけど、こんな状況じゃ同じコトですからね。俺の分かってる範囲で説明します」


 俺は本当の「まじか☆らんど」があること。それを模したゲームが「まじか☆らんど」で、現実世界とのゲートでもあるらしいこと。なゆら、ダモン、それにミュウミュウは「まじか☆らんど」の住民で地球にやってきた異界人であることを説明した。ついでにこんな状況になった理由は俺にも分からない、ということも付け加えた。


「なるほど、なるほど、しかし、しかし……」


 ノジコがブツブツ独り言をはじめた。これはまあ、いつもの癖のようなものだが。


「どうした?ノジコ。なにかわかったか?」

「手は……あると思いますよ。再設定すればいいかと」

「ああ、なるほど」

「おい!俺にも教えろよ!自慢じゃないがぜっんぜん分からん!」


 ガモには分かったらしいが、俺には検討がつかなかった。


「ノジコの言うのは、イベントを再設定すればいいんじゃないか?ってことだよ。データを操作してクリア条件を作ればいいんだ」

「なるほどにゃ!」

「なゆら分かったのか?」

「わからんにゃ」

「…………」

「でもそれには端末が必要よね。使えるのかしら」


 沙耶華さんにも分かったらしい。


「とりあえずは行くしかないでしょうね」


 ダモンにも……


「ど、ドコにですか?」


 お、さすが先生!同士がいたぜ。


「先生。愚か者ですか?部室に決まってるでしょ!」


 カガリ先輩ががキレた……よかった聞かなくて。


「よし!じゃあまずは部室へ戻ろう!」


 ニョコ


 先頭をきって歩き出した時、中央廊下とクロスして教室に伸びている廊下から得体のしれない猫のような何かが顔を出した。


「おい、あれはなんだ?ノジコあんなもの作ったのか?」

「い、いえ……あんなヘンテコなもの知りませんよ!」


 バカにされてると思ったのか、ノジコはすこし不機嫌そうに答えた。


「はにゃ?あ、あれは!!!!にゃんま大使じゃないのきゃ?」


 なゆらの顔がみるみるニヤついていく。


「え?それってゲームのイベントって言ってたヤツじゃないの?」

「おかしいですね。独立サーバだから外部のイベントなんて読み込めない筈ですけど」

「おい、なんかあっちからも来るぞ!」


 にゃんでんかんでん~★でっきるかにゃ~あっ

 にゃんでんかんでん~★やっれるかにゃ~あっ


「うひょひょひょひょひょ!あ、あれはまさに、にゃんにゃか大行進じゃないのきゃ?」


 なゆらが掛け声に合わせて跳ねだした。


「いくいくいく~行こ行こ行こヒコ!」

「ってバカ!オマエ、今がどんな時なのか分かってんのかよ!そんなことしてる場合じゃないだろう!」

「ええと彦丸さん?……」


 怒鳴りながら振り向くと、そこになゆらはおらず沙耶華さんがいた。


「あ、あれ?沙耶華さん?なゆらは?」

「あそこに……」


 沙耶華さんが指差す方を俺は見た。


「あああああああ!!!!すでに行進の中に入ってる!し、しかも、にゃんま大使とか言う奴の真後ろにつけてるぞ!あいつ何考えてるんだ!」


 にゃんでんかんでん~★でっきるかにゃ~あっ

 にゃんでんかんでん~★やっれるかにゃ~あっ

 わっはわっは~で★でっきるんにゃ~あっ

 よっほよっほ~で★やっれるんにゃ~あっ


「なあ、あのパレードの背景、なんだかカラフルに塗られてないか?あれもノジコの趣味?」

「ガモさんまで、そういうこと言いますか。ちがいますよ。どうやら「まじか☆らんど」のキャラがこのイベント内に侵食してきているようですね。そして書き換えられている」

「えっと……それって……」

「ええ。ヤバイっすね。部室書き換えられたらジ・エンド。おしまい」

「そ、それにあのにゃんま大使とかいうヤツが向かってる方向って……」

「部室の有る旧校舎のほうじゃないか!」

「い、急げー!!!!あ、なゆら、そいつをすこし足止めしててくれ!」

「にょ?分かったにゃ!ガッテン承知のスケベにゃ!」


 走りだした一行が廊下を左に曲がったところで、今度は目の前に全身真っ黒のこれぞまさに魔法使い!と言わんばかりの男がいた。


「あ、あれ?枢機卿?なにをなさっているのですか?こんなところで」


 今度はダモンの知り合いのようだった。


「ん?オマエさんは誰だったかの~?」

「え?それマジっすか?ワタクシですよ!ダモン!こんな僻地に飛ばしておいてお忘れになるとか!正気ですか!?」


 ダモンが大声を張り上げるのはめずらしい。


「ああ、ああ、怒るな短気なヤツめ。それだからオマエさんはダメだと言うのじゃ。それより今マジかランドは大変な事になっておるぞ」

「どんなことですか?」

「どんどんゲーム内に吸収されておる。人もペットも街も全部じゃ」

「ゲーム内に?」

「そうじゃ。このゲーム内にじゃ」


 ここまで聞くとダモンは少し考え込んだ。


「……では、もしかしたら労せずして地球が手に入るのでわ?」


 そして急に小声で話しだした。


「甘いわ!このボケたんが!あ、ボケたんとえば、アイツはどうしておる?なゆら氏は」

「あっちでにゃんま大使と戯れていますよ」

「おお~さすがなゆら氏。あの気難しいにゃんま大使となごんでいるとはの~」

「それで枢機卿……こんな時になんなのですが、ワタクシの役目は終了ということで宜しいのでしょうか?」

「オマエさんの目的はなんじゃった?」

「彦丸様となゆら様の仲を引き裂くことでございます」

「叶ったのか」

「ほぼ」

「ではダメじゃ」

「……ですか」

「じゃ」

「ですよね」


「ダモン!地球征服がどうとか言ってたことも気になるが、今はそれどころじゃない。まずは部室確保だ。そうすればこの事態も食い止められるかもしれない!」


 なんだか怪しい動きをしているダモンに向かって俺は言った。言ってやった、と思った。これでどうだ!くらいの気持ちで。だが……


「ん?オマエさんの持っているのはなんじゃ?」

「何がだ!じじい……さん」


 沙耶華さんの視線が気になって言い直してしまった。これも教育効果か。


「その人形だ」

「ああ、これかこれは福引でもらったアイテムだ」

「福引?まあいい。オマエさん。それを最近使ったか?」

「なんか呪文を叫んでみたが、ダメだった。これは使えないよ」

「使ったのか……」

「いや、使えなかって言ってるんですけど?……」

「これは、異界のモノを転送するという魔アイテム「デル魔くん」だ。本当に実在したとはな。それも使うとは……」

「枢機卿なんですか?その「デル魔くん」というのは」

「ダモンよ。オマエさんがついていながら、なぜ防げなかったか分かったぞ。オマエさんは知ったふうだが何も知らんのだな。「デル魔くん」といえば伝説の魔アイテムじゃないか!クラスA+級の」

「クラスA+級?いや試験ではクラスAまで覚えればいいことになっていたハズです」

「めでたいやつめ。まあよい。いやよくはないがな。この魔アイテムは異界の者同士を相互に転送する能力を持つ。魔導院では理論的には存在するであろうと考えられていたが、ついに探しだすことができず、ありえない奇跡の魔アイテムと考えられるようになったものだ」

「そ、そんなことはあり得ない!」

「そうじゃ。あり得ないのを可能にするのがA+級なのじゃ」

「えっと……」

「うむ。気づいたようじゃの。この事態は……すなわちオマエさんのせいじゃ!」

「ど、どどうすれば?」

「デスペルせい」

「デスペル?」

「呪文を唱えたのだろう?その逆を言えばいいのじゃ」

「…………」

「忘れたのか?忘れよったのか!このアホウ者が!!!この世界が滅ぶとしたらオマエさんのせいぞ!二つの世界は決して合わさってはいかんのじゃ」

「えええええ!!!!!!うっそ~~~こんな状態になったのは俺のせいなの?俺が呪文をテキトーに唱えたせいで世界が滅ぶっていうの?????」


 俺はショックでうなだれてしまった。なぜだ、なぜこんなことに……


「彦丸さん、行きましょう」


 沙耶華さんが声をかけてくれても足が動こうとしない。


「ヒコ君。さっきキミが言ったように、もう部室の端末にかけるしかないわよ」


 ぶ、部長……だがしかし


「おい!ヒコ!だらしがねーな。仕方がないだろ!行くぞ!」


 ガモ……。みんなに言われてももう動くことができなかった。


「さ、先に、行ってくれよ……」


 やっとのことでそれだけ言うと完全に石のようにまるくうずくまった。


「しょうがないわね、必ず追いかけてきてね」


 そう言いながら、みんなが消えていく後ろ姿をぼんやりと見ていた。

 俺の、俺のせいで……



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